問い合わせ対応をAIで減らす|まず1週間のメモから

問い合わせ対応は、決まった質問をAIに任せ、値引きや納期は人が受けます。1週間の件数と内容をメモし、定型文とよくある質問を整えて、今ある道具で小さく始める手順を解説します。

この記事でわかること

  1. 決まった形の質問はAIに任せ、値引きや納期の約束など判断がいるものは人が受けます。
  2. まず1週間、問い合わせの件数と内容をメモして、社長の時間を測ります。
  3. AIに答えさせない項目を先に決め、今ある道具で小さく始めます。

問い合わせ対応に時間を取られているのは、うちだけではない

電話・メール・LINEの対応に追われる悩みは、よくあるものです。ただし問い合わせ対応は受注やクレーム予防の入口でもあり、ただ減らせばいい仕事ではありません。

対応に追われると、何が止まるのか

見積もりを作ろうとした時に電話が鳴ります。電話を終えると、メールとLINEが数件たまっています。

こうして本業の時間が細切れになります。夜や休日の返信も遅れがちです。

対応がつらくなる3つの原因

対応が重くなる原因は、件数だけではありません。次の3つが重なると、社長に仕事が集まります。

  • 同じ質問に、何度も答えている
  • 人によって答え方が違い、対応の質にばらつきがある
  • 答えを知っているのが社長だけで、ほかの人に任せられない

お客様からだけでなく、社員からの社内の問い合わせも同じです。一方で、問い合わせにはお客様の困りごとが表れます。商品やサービスを直す手がかりにもなります。

数字で見る「問い合わせ対応の悩み」

カスタマーサポートの悩みを聞いた調査があります。調査したのは株式会社PRIZMAです。

対象は計501人です。企業のカスタマーサポート担当者、AIチャットボットのオペレーター、経営層です。方法はインターネット調査で、時期は2025年4月です。[出典:株式会社PRIZMA「AIチャットボットの導入実態と顧客満足度に関する調査」(2025)]

一番多かった悩みは「対応件数の増加による人手不足」で、45.7%でした。[出典:株式会社PRIZMA「AIチャットボットの導入実態と顧客満足度に関する調査」(2025)]

「対応に時間を取られ、重要な業務に集中できない」は36.1%でした。[出典:株式会社PRIZMA「AIチャットボットの導入実態と顧客満足度に関する調査」(2025)]

電話・メール・LINE、AIに任せやすいのはどれか

ポイント

任せやすいのは、文章で残るメールとLINEです。電話は仕組みを入れるハードルが高いので、後回しにします。

メール LINE 電話 来店 AIに任せやすい 人と分ける 人が受ける 返信案をAIが作る 返信案をAIが作る 後回しにする 人が受ける
メールとLINEはAIの返信案から始め、電話は後回しにし、来店は人が受けます。

メールとLINEは、お客様の文面がそのまま残ります。AIに返信案を作らせ、人が確認して送る形と相性がよいです。

電話は、話を聞きながらその場で答える必要があります。専用の仕組みも必要なので、最初の一歩には向きません。来店は人が受けるのが基本です。

AIに任せやすい問い合わせ

営業時間、料金、サービス内容のような、答えが決まった質問です。答えが決まっているので、AIに任せやすい質問です。

PRIZMAの調査によると、AIチャットボットを導入済みの回答者が「一番多い対応」に挙げたのは「よくある質問」でした。割合は53.2%です。[出典:株式会社PRIZMA「AIチャットボットの導入実態と顧客満足度に関する調査」(2025)]

チャットボットとは、質問に自動で答える仕組みです。

人が受けたほうがよい問い合わせ

値引きの相談、納期の約束、クレーム、初めての相談は人が受けます。会社の判断や気持ちへの配慮がいるからです。

たとえば「来週までに間に合いますか」という質問です。現場の状況を知る人でなければ、約束できません。

夜間・休日の一次対応を決める

夜間や休日は、まず「受け付けました」と自動で返す方法があります。「翌営業日に担当者から連絡します」と添えます。お客様は、いつ返事が来るかが分かります。メールやLINEで自動の返信を設定できるかは、使っている道具で確かめてください。

AIに答えさせる範囲は、昼と同じに決めます。営業時間や料金はAIが答え、値引きや納期は翌営業日に人が受けます。

電話は、留守番電話で用件を残してもらいます。折り返す前に、用件をメモしておくと話が早く進みます。

まず1週間、問い合わせの件数と内容をメモする

専用ツールの前に、自分の会社の問い合わせを測ります。紙やスマホのメモで十分です。測ったら、AIの前に定型文とよくある質問を整えます。

ステップ1ステップ2ステップ3ステップ4ステップ5 1週間メモを取る 多い用件3つAIか人か決める よく使う答えを定型文に よくある質問を公開する 今ある道具で試す
1週間メモで多い用件を選び、定型文とよくある質問を整えてから、今ある道具で試します。

1週間メモを取る

次の4つを、問い合わせのたびに書きます。

メモする4つの項目

  • 窓口(電話・メール・LINE・来店)
  • 用件(料金、納期、予約など)
  • かかった時間
  • 社長が受けたかどうか

1週間後に、用件ごとに数えて多い順に並べます。それだけで、社長の時間がどれだけ戻りそうかが見えます。

メモ

電話・メール・LINEのメモは、1か所にまとめて残します。共有の表やノートで構いません。だれが何を答えたかが分かり、引き継ぎがしやすくなります。

多い用件を3つ選び、「AIに答えさせる/人が答える」を決める

多い順の上から3つを選びます。それぞれに、AIに答えさせるか、人が答えるかを決めます。

たとえば「営業時間」はAIに任せます。「値引きの相談」は人が受けます。

よく使う答えを定型文にする

よく使う返信を、ひな形の文章(定型文)にしておきます。たとえば営業時間、見積もりの頼み方、支払い方法の案内です。

定型文があると、だれが返しても同じ答えになります。社長でなくても返信でき、対応の質もそろいます。

よくある質問を先に公開する

多い質問の答えを、先にお客様へ見せておきます。ホームページの「よくある質問」や、お客様に最初に送る案内の文面に載せる方法です。

お客様が自分で答えを見つけられれば、問い合わせ自体が減ります。

ただし、受注につながる相談まで減らさないようにします。初めての相談や見積もりの窓口は、目立つ所に残します。

今ある道具で試す

最初から専用ツールを買う必要はありません。

たとえば、文章を作る生成AIでメールの返信案を作ります。ステップ3の定型文を渡すと、会社の言い回しに近い案を作りやすくなります。LINE公式アカウントに定型の返信を設定できるか確かめ、使う方法もあります。

専用ツールが必要になる分かれ目は2つです。1つ目は、同じ質問が毎日大量に来るかどうかです。2つ目は、社内で運用できるかどうかです。

AIに答えさせない項目を、先に決めておく

誤回答や言い過ぎを防ぐには、答えさせない項目と人に引き継ぐ合図を先に決めます。AIの返信は、送る前に人が目を通す運用から始めます。

よくある失敗3つと対策

1つ目は、AIが値引きや納期を約束してしまう失敗です。対策は、値引き・納期・返金を「答えさせない項目リスト」に入れることです。

2つ目は、人に引き継げず、お客様をがっかりさせる失敗です。対策は、「怒っている」「初めての相談」などの言葉が出たら人に代わる、という合図を決めることです。

3つ目は、よくある質問集を作ったのに使われない失敗です。対策は、1週間のメモで多かった用件から作ることです(ステップ1:1週間メモを取る)。

責任はだれにあるのか

注意

AIが作った返信でも、お客様から見れば会社からの返事です。だから丸投げせず、人が確認する形にします。

法的な判断が必要な場合は、専門家に相談してください。

担当者に任せるときの教え方と、研修の費用

担当者に渡すには、答えさせない項目と言い回しのルールを共有します。社内研修を考えるなら、助成金を使える可能性があります。

1枚にまとめるルール

まず、決めたルールを1枚の紙にまとめます。答えさせない項目、人に引き継ぐ合図、返信の言い回しの3つです。担当者はそれを見ながら、AIの返信案を確認します。

社内で回らないときは外部に任せる

電話の取り次ぎが中心なら、電話代行などの外部サービスに任せる手もあります。AIとは、向いている場面が違います。

比べる点AIに任せる外部の代行に任せる
向いている問い合わせメール・LINEの決まった質問電話の取り次ぎ・伝言
判断がいる問い合わせ人に引き継ぐ人に引き継ぐ
始める前に決めること答えさせない項目伝えてよい範囲と連絡の方法

料金やできることは、会社ごとに違います。複数の会社から見積もりを取って比べてください。

研修費に使える助成金の可能性

AIの使い方を学ぶ研修には、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)が使える可能性があります。対象になる研修かどうかは、事前に都道府県労働局に確認してください。

中小企業の経費助成率は75%です。[出典:厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」(2026)]

受講者1人あたりの経費助成の限度額は、訓練の時間で変わります。中小企業・10時間以上100時間未満の訓練では30万円です。[出典:厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」(2026)]

訓練計画の提出などの要件があり、要件を満たせば受給できる可能性があります。受給は審査次第です。

注意

時限措置なのは、事業展開等リスキリング支援コースです。このコースは令和8年度末(2027年3月31日)までです。延長されるかは確認できていません。[出典:厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金のご案内(詳細版パンフレット)」(2026)]

従業員のリスキリングに「必要性を感じるが、取り組みが十分に進んでいない」企業は66.1%です。対象は各地商工会議所の会員企業2,654社で、2026年7〜8月の調査です。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026)]

よくある質問

社長からよく聞かれる疑問に、短く答えます。

Q1 電話・メール・LINEのうち、AIに任せられるのはどれですか

まずはメールとLINEです。文章で残るので、AIの返信案と相性がよいからです。電話は仕組みを入れるハードルが高いので後回しにし、判断がいる問い合わせは人が受けます。

Q2 AIが間違った返信をしたり、お客様を怒らせたりしませんか

間違える可能性はあります。だから、値引きや納期など答えさせない項目を先に決めます。AIの返信は、送る前に人が確認します。

Q3 うちの規模で、何から始めればよいですか。ITに詳しい社員がいなくても大丈夫ですか

まず1週間、問い合わせの件数と内容をメモします。そのうえで、今ある道具で小さく試します(まず1週間、問い合わせの件数と内容をメモする)。メモと確認は、ITに詳しくなくてもできます。

Q4 AI導入で、問い合わせ対応の工数はどのくらい減りますか

PRIZMAの調査では、導入済みの回答者のうち、業務工数が3割以上減ったと感じた人は合計76.6%でした。これは回答者の実感(自己申告)です。導入済みの人数は確認できていないため、自社の効果はメモで測って確かめてください。[出典:株式会社PRIZMA「AIチャットボットの導入実態と顧客満足度に関する調査」(2025)]

3分でわかる無料AI診断