中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップ

AIで減らしやすいのは、メールや議事録など繰り返す文章の作業です。AI導入済みの中小企業は20.4%。無料や少額で1つの作業から試し、時間が減ったかを見て広げる手順と、先に決めるルールを解説します。

この記事でわかること

  • AI活用の目的として「業務時間の節減」を挙げた事業者は84.5%です。対象はAI活用に取り組んだ事業者です。[出典:中小企業庁(2026)]
  • 中小企業でAIを既に導入している会社は20.4%で、まだ少数派です。DX(デジタル技術で仕事のやり方を変えること)でAIの活用を挙げる会社は、前回調査より増えています。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]
  • 最初は無料や少額で使える範囲を確かめ、社長のメール・議事録・書類の下書きから試すのが一案です。

AIで減らせるのは、どんな時間なのか?

ポイント

AIを試しやすいのは、毎回似た形で繰り返す作業(定型作業)です。メール文案・議事録・書類の下書きが代表的です。

AI活用に取り組んだ事業者の84.5%が、目的に「業務時間の節減」を挙げています。出典:中小企業庁(2026)

対象は、AI活用に取り組んだ事業者1,685社です。複数回答(いくつでも選べる質問)の調査で、時期は2025年11〜12月です。同じ調査で「人手不足の解消」は40.5%でした。出典:中小企業庁(2026)

業務に使うAIの種類と違い

業務に使うAIには、いくつかの種類があります。種類ごとに得意な作業が違います。

種類 できること 向いている作業の例
生成AI 指示に合わせて文章を作り、まとめる メールや提案書の下書き、議事録の要約
AI-OCR(文字の読み取り) 紙や画像の文字を読み取り、データにする 請求書や注文書の入力
音声の文字起こし 話した言葉を文字にする 会議や打ち合わせの記録
チャットボット(自動で答える窓口) 決めた範囲の質問に自動で答える よくある問い合わせ、社内規程の案内
予測AI 過去のデータから先の動きを見込む 仕入れの量や来客数の見込み
(参考)RPA(決まった手順の自動化)※AIではないが一緒に使われる仕組み パソコン上の決まった手順を繰り返す 毎月の転記、決まった形の書類づくり

AIは、文章のように毎回中身が少し違う作業も手伝えます。RPAは、決めた手順をそのとおりに繰り返す仕組みです。考えて書く作業はAI、手順が決まった作業はRPA、と分けて考えると分かりやすくなります。

この記事では、始めやすい生成AIを中心に説明します。

部署・業種別の使い方の例

社長の業務だけでなく、部署や業種ごとにも使い道が考えられます。次の表は、例えばこのような使い方がある、という例です。

部署・業種 AIで手伝える作業の例 合う種類
営業 見積書の案内文や提案書の下書き 生成AI
事務・経理 請求書や領収書の読み取りと入力 AI-OCR
問い合わせ対応 よくある質問への返信案づくり 生成AI、チャットボット
総務 社内規程を探して質問に答える チャットボット
製造業 作業手順書や日報の文章のまとめ 生成AI
小売・飲食 仕入れ量の見込み、店頭の案内文 予測AI、生成AI
建設・工事 打ち合わせの記録、現場報告の文章化 音声の文字起こし、生成AI

どの作業も、AIが作ったものを人が確かめてから使います。最初の1つは、社長自身の業務から選ぶのが手軽です(まず1つだけ選ぶ(メール・議事録・書類の下書き))。

社長業務の「Before→After」イメージ

表は作業内容の変化だけを示しています。

作業 Before After
取引先へのメール 文面を一から考えて打つ 要点を伝えて下書きを作らせ、社長が直して送る
会議の議事録 メモを見返して文章に起こす メモを渡して要約の下書きを作らせ、社長が確認する
提案書・案内文 白紙から書き始める 箇条書きを渡して下書きを作らせ、社長が手直しする

どの作業も、最後に確認して送るのは社長です。

中小企業のAI活用は、いまどこまで進んでいるのか?

中小企業でAIを既に導入している会社は2割ほどで、まだ少数派です。出典:中小企業基盤整備機構(2026)AIを試しやすいのは、メールや議事録の下書きなど繰り返す文章の作業です。

2019年以降の省力化投資で、AI活用に取り組んだと答えた会社は約3割です。出典:中小企業庁(2026)省力化投資とは、少ない人手で仕事を回すための機械やシステムへの投資です。

AI活用の3つの数字 調査ごとに対象が違う AIを導入済み 20.4% 省力化投資でAI活用 約3割 生成AIを使う方針 58.1%
3つの数字は質問も対象も別の調査で、段階や推移ではありません。棒の長さは数字の大きさの目安です(「約3割」は30%として描いています)。

導入済みは約2割、取り組んだ会社は約3割

AIを「既に導入している」中小企業は20.4%です。100社なら約20社の割合です。出典:中小企業基盤整備機構(2026)

これは「一部の業務で導入」と「全社的に導入」の合計です。集計対象は1,647社です。調査期間は2025年11月17日〜12月12日です。

別の調査もあります。2019年以降の省力化投資のうち、AI活用に取り組んだ割合は約3割です。出典:中小企業庁(2026)

集計対象は5,645社です。調査は帝国データバンクが2025年11〜12月に、インターネット上のアンケートで行いました。

メモ

20.4%は「AIを導入しているか」を聞いた数字です。約3割は「省力化投資でAIに取り組んだか」を聞いた数字です。質問が違う、別々の調査です。

生成AIを使う方針の中小企業は58.1%

生成AI(文章や画像をAIが作る仕組み)を使う方針の中小企業は58.1%です。出典:総務省(2026)

「導入済み」ではありません。「積極的に活用する」と「領域を限定して使う」という方針の合計です。

対象は、従業員10名以上で2025年までにデジタル化を始めた企業の管理職以上です。中小企業の回答数は162で、調査は2026年1〜2月に行われました。

DXの動きもあります。取組みや検討内容として「AIの活用」を挙げた中小企業は28.4%です。出典:中小企業基盤整備機構(2026)

前回調査では14.3%でした。対象は全国の中小企業1,000社で、2025年12月5日〜18日の調査です。

IT導入済みでも、手作業が「ほとんど」の会社は2割

パソコンやソフトを入れた会社でも、手作業が多く残っている会社があります。ITを導入済みの中小企業のうち、手作業が80%以上の会社は20.2%です。出典:中小企業基盤整備機構(2026)

手作業が80%以上とは、仕事の8割以上が手作業という意味です。対象はIT導入済みの922社です。

手作業が60〜79%の会社が最も多く、31.5%でした。出典:中小企業基盤整備機構(2026)調査は2025年11〜12月です。

社長一人の業務から始めるには、何をすればいいのか?

部署がない規模なら、社長自身の業務で試すのが現実的です。「書き出す→1つ選ぶ→無料や少額で試す→効果を見る」の順で進めます。

目的は「時間を減らすこと」に絞ります。AI活用に取り組んだ事業者のうち、目的に「業務時間の節減」を挙げた割合は84.5%でした。出典:中小企業庁(2026)

社長一人の業務から始める ① 書き出す ② 1つ選ぶ ③ 無料や少額で試す ④ 時間を見る 広げる (手順の外)
まず1つの作業で試し、時間が減ったかを確かめます。効果が見えたら、4段の先でほかの作業や社員へ広げます。

手順は次のとおりです

  1. 毎週繰り返す作業を、紙に書き出す
  2. その中から1つだけ選ぶ
  3. 無料や少額で使える範囲があれば、その範囲で試す
  4. 時間が減ったかを見る

効果が見えたら、ほかの作業や社員に広げます。これは4つの手順のあとの話なので、手順には数えません。

まず1つだけ選ぶ(メール・議事録・書類の下書き)

選ぶ基準は3つです。毎週やる作業であること。文章が中心であること。社外に出す前に、自分の目で確認できることです。

例は、毎週送る取引先へのお礼メールです。要点だけ伝えて下書きを作らせ、社長が直して送ります。

ほかの例は、見積書を送るときの案内メールや、日報の文章のまとめです。

期間を決めて試し、「時間が減ったか」だけを見る

試す期間は、始める前に自社で決めておきます。

ポイント

見るのは「時間が減ったか」だけです。作業前と作業後に、かかった時間を手帳にメモします。

次の表の項目を、作業のたびに記録します。

記録する項目 書く内容
作業名 例:取引先へのお礼メール
使う前の時間 いつものやり方でかかった時間
使った後の時間 AIに頼んで下書きができるまでの時間
直しの時間 下書きを読んで直し、送れる形にした時間

比べるときは、確認や直しの時間も含めます。下書きが早くできても、直しが長ければ時間は減っていません。

効果の大きさは、会社や作業によって変わります。減らなければ、別の作業に切り替えます。

費用は大丈夫?元が取れるのか?

費用が不安なのは、多くの社長に共通する悩みです。まず無料や少額の範囲で試し、効果を見てから広げれば、大きな費用をかけずに試せます。

「高コスト」が最大の壁(46.9%)

AI導入の妨げになっていることとして「導入にあたっての高コスト」を挙げた中小企業は46.9%です。妨げの中で最多でした。出典:中小企業基盤整備機構(2026)

複数回答(いくつでも選べる質問)の調査です。対象は中小企業で、調査全体の有効回答は1,668です。調査期間は2025年11月17日〜12月12日です。

払う前に確かめる3ステップ

払う前の3ステップ

  1. 無料や少額の範囲で試す。 前の章の1つの作業だけで確かめます(まず1つだけ選ぶ(メール・議事録・書類の下書き))。
  2. 効果が見えたら広げる。 時間が減った作業から、ほかの作業へ進めます。
  3. 広げる段階で助成金を調べる。 要件を満たせば、受給できる可能性があります。

注意

助成金は、制度ごとに対象や募集期間が決まっています。終了時期も制度ごとに違うため、公式の案内で最新の内容を確認してください。

費用面が不安な方は、AI活用の相談先であるカクヤクAIXにご相談ください。

ITが苦手でも失敗しないために、先に決めておくことは?

先に「やらないこと」を決めておけば、ITが苦手でも大きな失敗を防ぎやすくなります。これは一般的な注意事項です。

例えば、取引先からもらった見積書を、そのままAIに貼り付けないと決めます。

決めておくことのチェックリスト

やらないことを決める

  • 顧客の個人情報は入力しない
  • 取引先の機密や、契約書の全文は入力しない
  • 使うAIの範囲を決める(最初は1つだけ)
  • AIが作った文章は、必ず社長が読んでから使う
  • 入力した文章の扱いは、サービスや契約によって違うことがある。AIが文章を保存するか、改良に使うかを調べる。サービスの使い方のルールを書いた文書(利用規約)で確かめる
  • 以上のルールを、紙1枚にまとめて社内で共有する

社員に広げるときに決めること

社長の作業で時間が減ったら、社員にも広げます。その前に、次のことを決めておきます。

社員に広げる前に

  • 会社として使ってよいサービスを1つに決める
  • 入力してよい情報と、入力しない情報の一覧を作る
  • 困ったときの相談先を決める(社長や担当の社員)
  • 作った文章は、使う前に人が確かめる

決めたことは、前の紙1枚に書き足して共有します。

メモ

社内の決まりを作るときは、国の指針も参考になります。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」です。AIを仕事で使う会社(AI利用者)向けの項目もあります。出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026)

よくある質問

Q1. 小さい会社でも効果は出ますか?

AI活用に取り組んだ事業者の84.5%が、目的に「業務時間の節減」を挙げています。出典:中小企業庁(2026)これは目的として挙げた割合で、効果が出た割合ではありません。対象は1,685社です。効果の大きさは会社や作業で変わるため、まず1つの作業で確かめます。

Q2. 周りの会社はもう使っていますか?

AIを既に導入している中小企業は20.4%で、まだ少数派です。出典:中小企業基盤整備機構(2026)2019年以降の省力化投資のうち、AI活用に取り組んだ会社は約3割です。出典:中小企業庁(2026)この2つは、調べた対象も、その数も別の数字です。

Q3. 費用はどれくらいかかりますか?

AI導入の壁として「高コスト」を挙げた中小企業は46.9%で、最多でした。出典:中小企業基盤整備機構(2026)金額は、サービスや使い方で変わります。まず無料や少額の範囲で試し、効果を見てから広げます。

Q4. ITに詳しい社員がいなくても大丈夫ですか?

社長一人の業務から始めれば、詳しい社員がいなくても試しやすくなります。毎週の作業を書き出し、1つ選んで、期間を決めて試します。先に「やらないこと」を決めておけば、進めやすくなります(決めておくことのチェックリスト)。

Q5. 助成金は使えますか?

要件を満たせば、受給できる可能性があります。対象や募集期間、終了時期は制度ごとに違います。効果が見えた段階で、公式の案内を確認してください。

自社の社長業務で何から試せるか整理したい方は、AI活用の相談先であるカクヤクAIXにご相談ください。

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