マニュアルは最初の1本から。5ステップの作り方

マニュアルは最初の1本に絞って作ります。社長が決める4項目と5ステップの作り方、Excelの型、写真と探しやすさの工夫、生成AIの下書きで人が確認する5点を解説。

この記事でわかること

  • 作り方は5ステップです(目的と読み手→手順の書き出し→骨子→5W1Hで執筆→現場で試して直す)。
  • 社長が決めるのは、目的・読み手・最初の1本・見直す人の4つです。最初に作るのは1本だけです。
  • 文章を自動で作るAI(生成AI)の下書きは、人が確認する前提で使います。

マニュアルは「全部」ではなく「最初の1本」から作る

全部を一度に作るより、使われる1本を先に作るほうが現実的です。作り方は5ステップで、その1本を形にします。(マニュアルの作り方は5ステップ)

マニュアルを作る目的は、主に3つです。

  • 誰がやっても、同じ質で仕事が進む
  • 新人に同じことを何度も教える手間が減る
  • 1人しか分からない仕事(属人化)を防げる

ITを入れた会社でも、手作業は残っています。手作業が多い会社ほど、まず1本の手順を書いて残す意味があります。うちの会社も同じではないでしょうか。

業務の8割以上が手作業の会社は20.2%、約5社に1社です。

手作業が多い現場では、検品がベテランの勘頼みになっていませんか。

対象は、2025年11月17日〜12月12日に調べた、ITを導入済みの中小企業922社です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]

マニュアルがあっても、読まれるとは限りません。マニュアル作成代行のフィンテックス社が調査しました。「人に聞いた方が早い」と思うことがある人は79.9%で、10人中およそ8人です。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

対象は、勤務先にマニュアルがある全国の20〜69歳の会社員・経営者・役員800人です。調査期間は2026年7月29日〜8月2日です。

ポイント

だから最初は、現場がいちばん困っている1本に絞ります。

社長は何を決め、誰に任せればいいのか?

社長が決めるのは、目的・読み手・最初の1本・見直す人の4つです。書く作業は担当者に任せます。

社長が決める4項目は、次のとおりです。

社長が決める4つ

  • 目的:何のために作るのか(例:新人が1人で作業できるようにする)
  • 読み手:誰が読むのか(例:入社1か月の社員)
  • 最初の1本:どの業務から始めるのか
  • 見直す人:誰が、どの時期に直すのか

決めた4つは、短い言葉にして担当者に伝えます。

たとえば、こう伝えます。「入社1か月の社員が1人で検品できるように、検品の手順を1本作ってください。見直しは○○さんが決算の前後にお願いします。」

最初の1本はどの業務から選ぶ?

次の3つのどれかに当てはまる作業を選びます。製造業向けの手順書の解説サイト「サクっと手順書」が紹介している選び方から、3つを挙げます。

  • ベテランしかできない作業
  • 不良やクレームが多い作業
  • 新人教育に時間がかかる作業

たとえば、ベテランだけが知っている検品の手順です。1人が休むと止まる作業ほど、先に書く価値があります。

作成にどれくらい時間がかかる?

1本の作成に、5時間以上かかる人もいます。まず、その時間を業務として確保します。

フィンテックス社の調査(2026年7月29日〜8月2日)です。作成経験者の22.6%が、1件あたり5時間以上かかると答えました。対象は、直近1年以内に作成・改訂した522人です。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

作成経験のない人の36.3%は、所要時間が「わからない」と答えました。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

自社の時間は、次の式で見積もります。「手順の数×1つの手順を書く時間」に、現場で試す時間と直す時間を足します。

見積もったら、完成の締切も決めます。締切がないと、ほかの仕事に押されて後回しになりがちです。

ポイント

作成経験者の約2割が、1本に5時間以上かけています。空いた時間に任せず、担当者の予定に入れます。

マニュアルの作り方は5ステップ

作り方は5ステップです。紙やExcelでも回せます。

マニュアル作成5ステップ 社長が決める 担当者が行う ① 目的と読み手 最初の1本も ここで決める ② 手順の書き出し 順番どおりに 現場で聞く ③ 骨子を作る 見出しと流れを 先に決める ④ 5W1Hで執筆 基準は数値で 書く ⑤ 現場で試す 使いながら 直す ②〜⑤は担当者が進める
最初の目的決めは社長、書き出しから現場確認までは担当者が進めます。

作り方の5ステップ

  1. 目的と読み手を決める(社長)。最初の1本もここで決めます。
  2. 現場の手順を、順番どおりに書き出す(担当者)。実際にやっている人に聞きながら書きます。
  3. 見出しと全体の流れ(骨子)を先に作る。本文を書く前に、全体の形を決めます。
  4. いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやるかを書く。この6つを、5W1Hと呼びます。
  5. 現場で試して、直す。使いながら直す前提です。

ポイント

④では、判断の基準を数値で書きます。「早めに確認する」ではなく、「温度が××度以内か確認する」のように書きます。

通常の手順に加え、よくある間違いと、そのときの対応を書きます。困ったときに誰へ聞くかも載せます。

ITが苦手でも、紙・Excelから始めていい

専用ツールは、1本使ってみてから考えれば十分です。最初は紙かExcelで始めます。

Excelなら、表の列を「手順No.」「作業内容」「注意点」「写真」にします。これだけで、現場で読める1本になります。

もう少し整えるなら、次の型を写して使えます。表紙に管理の情報を、本文に手順の表を置きます。

項目置く場所書くこと
題名表紙作業の名前(例:出荷前の検品)
目的と読み手表紙社長が決めた目的と、読む人
版と更新日表紙第何版か、いつ直したか
更新担当と見直しの時期表紙担当の名前と、見直す時期
手順No.本文1から順に振る。1行に1つの動作
作業内容本文何をするかを、動作で短く書く
判断の基準本文数値で書く(例:××度以内)
注意点本文よくある間違いと、そのときの対応
写真本文その動作が分かる写真
困ったときの連絡先本文誰に聞くか(名前)

同じ型は、WordやPowerPointでも使えます。文章が多いならWord、写真を大きく見せたいならPowerPoint、という選び方もあります。

「確認して送る」は、「金額と日付を確認する」「送信する」に分けます。動作ごとに項目を分けると、どこまで終わったか確かめやすくなります。

写真と見やすさの工夫

写真と見やすさで、読まれるかどうかが変わります。どちらも、スマホと今ある道具でできます。

写真・動画の使い方

写真は、作業する人の目線で撮ります。手元が見えると、動作が伝わりやすくなります。見てほしい所には、丸や矢印を付けます。

動画は、言葉で伝えにくい作業に使うと便利です。たとえば、力の加減や手の動かし方です。どの手順の動画かを書いておきます。

撮る前に、顧客名や図面が写っていないかを確かめます。

探しやすくする工夫

マニュアルは、探しやすさも大切です。フィンテックス社の調査で、運用の問題として「探せない」を挙げた人は19.5%でした。項目の中で最も多い結果です。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

対象は、勤務先にマニュアルがある全国の20〜69歳の会社員・経営者・役員800人です。調査期間は2026年7月29日〜8月2日です。

探しやすく、見やすくするには、次の工夫が使えます。

  • 最初に目次を付け、作業名で探せるようにする
  • 1ページ(Excelなら1シート)に、1つの作業だけを書く
  • 見出しとファイル名に、作業名と更新日を入れる
  • 文字の大きさ・書体・色の使い方を、全ページでそろえる
  • 1つの手順は短く、「〜する」と言い切る

「誰が読んでも同じ作業ができるか」で完成を判断する

完成の目安は、読んだ人が同じ作業をできるかどうかです。書いた本人の確認だけでは足りません。

新人や別の担当者に、マニュアルだけを見て作業してもらいます。つまずいた箇所が、直す箇所です。

生成AIで下書きを作るとき、人はどこを確認するのか?

下書きは、文章を自動で作るAI(生成AI)に任せられます。AIが書くのは、手順の文章案です。現場の事実や数値は、必ず人が確認します。

AIを使う目的では、業務時間の節減が多く選ばれています。省力化投資でAIを活用する目的として「業務時間の節減」を選んだ事業者は84.5%でした。対象はAI活用に取り組んだ事業者1,685社で、複数の答えを選べる質問です。[出典:中小企業庁(2026)]

一方、AIの原稿は手直しが前提です。フィンテックス社の調査で、生成AIの原稿を「そのまま使える」は10.1%でした。「半分くらいは手直しが必要」は39.8%でした。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

生成AIでマニュアルを作った人の91.0%が、AIだけでは解決できない場面を経験しています。調査期間は2026年7月29日〜8月2日です。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

AIは使えない、という意味ではありません。下書きはAI、確認は人と分けて使います。

生成AIの下書きから公開までの流れ AIが下書き 手順の文章案 人が確認 5つの点を見る 現場で試す 新人に使わせる 公開 決めた場所へ 人が確認する5つのポイント 手順の抜け 数値 現場との差 専門用語 社外秘の 扱い
AIが書いた下書きは、5つの点を人が確認してから現場で試し、公開します。

AIに任せる範囲と、人が決める範囲

AIに任せるのは、構成案の作成と文章の整えです。人が決めるのは、現場の事実・数値・安全に関わる判断です。

たとえば、こう頼みます。「検品の手順を、入社1か月の社員向けに順番に書いてください。数値は空欄にしてください。」空欄は、人が実際の基準を見て埋めます。

AIは、現場のやり方を知りません。もっともらしい文章でも、事実とずれていることがあります。

書くのが苦手な人には、作業の説明を話してもらいます。録音した声を文字にし、AIで手順の順番に整える方法もあります。録音やAIに渡してよい情報は、先に社内で確認します。

人が確認する5つのポイント

AIの下書きは、次の5つを確認してから現場に出します。

  • 手順の抜け:準備から後片付けまで、順番どおりにそろっているか
  • 数値:温度・時間・重さなどが、実際の基準と合っているか
  • 現場の実態との差:いまのやり方と同じか
  • 専門用語:新人が読んで分かる言葉か
  • 社外に出せない情報:顧客名や図面など、AIに入れてよい情報の線引きを、社内で決めてあるか

社員の研修費用は助成金の対象になるか?

要件を満たせば、受給できる可能性があります。対象かどうかは、事前に確認が必要です。

制度の概要

社員の学び直し(リスキリング)の研修費を、国が助ける制度があります。厚生労働省の人材開発支援助成金で、その中の「事業展開等リスキリング支援コース」です。マニュアル作成や生成AI活用の研修が対象になるかは、要件しだいです。令和8年度末(2027年3月末)で終了する予定の制度です。[出典:厚生労働省(2026)]

経費助成の上限額は、訓練の時間や研修の形態で変わります。パソコンなどで受ける研修(eラーニング)と、通信制の研修は、上限が低くなります。上限は1人1訓練あたり15万円です(eラーニング・通信制の場合)。[出典:厚生労働省(2026)]

受給できる額は、要件を満たすかどうかや、訓練の時間・形態によって変わります。そのため、ここでは総額を示せません。

注意

eラーニングには、利用回数の決まりもあります。令和8年8月3日以降は、1労働者につき1年度1回までです。申請の前に、公式の案内で自社が対象か、最新の条件を確認してください。[出典:厚生労働省(2026)]

なお、補助金には審査があります。要件を満たして申請しても、採択されない場合があります。[出典:中小企業庁(2026)]

時間をどれだけ減らせそうかは、下の自動診断で目安が分かります。業種・従業員数と、業務の件数・1件の時間を入れて試算します。助成金を受けられるかを判定するものではありません。

作っても読まれない、更新が止まる。どう防ぐか?

更新が止まる背景には、担当者の負担と評価されにくさがあります。最初に、更新の決まりを作ります。

更新が止まったマニュアルは、トラブルにつながります。トヨクモ社の調査では、トラブルを経験した人は88.2%でした。[出典:トヨクモ株式会社「マニュアルの作成・更新に携わる担当者の88.2%が更新が止まったマニュアルによる手戻り・誤案内などのトラブルを経験」(2026)]

対象は、従業員20〜99名の会社でマニュアルを作成・更新する責任者・担当者です。集計できた回答は102人と、人数の少ない調査です。調査期間は2026年9月5日〜8日です。

運用の面でも、課題があります。フィンテックス社の調査で、運用の問題を抱える人は71.1%でした。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

見直す人と時期を、最初に決める

マニュアルを作る時に、次の4つを一緒に決めます。

作る時に決める4つ

  • 更新担当者:名前で決めます。「みんなで」にすると、止まりやすくなります。
  • 見直しの時期:決算の前後など、会社の動きに合わせます。
  • 公開場所:完成したマニュアルを置く場所です。現場の人がすぐ開ける場所にします。紙なら、作業場の決まった棚です。
  • 版管理:どれが最新かが分かるようにすることです。日付と更新者を表紙に書きます。

作業のやり方が変わった時も、見直しの合図にします。

負担を減らし、評価される形にする

担当者の負担と評価は、社長が整える部分です。作成の時間を、業務として認めます。

フィンテックス社の調査で、作成を負担と感じる人は59.4%でした。評価されていると実感する人は32.0%でした。[出典:株式会社フィンテックス「マニュアル作成実態調査2026|生成AI原稿を「そのまま使える」は1割、8割は「マニュアルより人に聞いた方が早い」」(2026)]

社長ができることは2つです。作成の時間を、予定に入れます。完成したら、会議などで担当者の貢献を伝えます。

よくある質問

Q1. うちは皆忙しい。誰が、どれくらい時間をかければいいですか?

A. 書くのは、その作業をよく知る担当者です。社長は目的・読み手・最初の1本・見直す人を決めます。作成時間は、1本分を担当者の業務として確保します。

Q2. 作っても、読まれず更新も止まりませんか?

A. 防ぐ方法はあります。更新担当者・見直しの時期・公開場所・版管理を、作る時に決めます。(見直す人と時期を、最初に決める)担当者の作成時間を認めることも大切です。

Q3. ITが苦手でも、生成AIを使えますか?

A. 使えます。最初は紙やExcelで1本作り、手順の文章の下書きだけをAIに頼む使い方から始められます。

Q4. AIに任せて、間違いが混ざりませんか?

A. 混ざることがあります。だから、手順の抜け・数値・現場との差・専門用語・社外に出せない情報の5つを、人が確認します。(人が確認する5つのポイント)

Q5. 社員の研修費は助成の対象になりますか?

A. 要件を満たせば、受給できる可能性があります。令和8年度末(2027年3月末)で終了する予定の制度で、対象かどうかは事前の確認が必要です。補助金は審査があり、採択されない場合があります。

Q6. マニュアルと手順書は、何が違いますか?

A. 一般には、次のように分けて説明されることが多いです。マニュアルは、業務全体の進め方や注意点をまとめたもの。手順書は、1つの作業のやり方を細かく書いたものです。最初の1本は、手順書に近い形から始めても構いません。

手順書の作り方は、作業手順書は最初の1本から|製造業の作り方と確認法で詳しく説明しています。

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