この記事の要点
- 作業手順書は、全工程を一度に作りません。最初の1本に絞ります。
- 工程の流れを1枚の図にして、「ここだけ先に作る」範囲を決めます。
- 新人が手順書だけで作業してみて、止まった所を直せば合格です。
なぜ、全部の作業を手順書にしようとすると止まるのか
全部を手順書にしようとすると、洗い出しだけで手が止まります。最初は1本だけ作れば十分です。
ベテランの頭の中にある作業を、誰でもできる形にしておく。これは人が減る時代の備えになります。ただ、全工程を並べてから始めると、日々の仕事に追われて進みません。
手順書の役割は、品質と教育です。作業のばらつきをなくし、新人教育の道具にもなります。[出典:一般財団法人食品産業センター「HACCP基盤強化のための衛生・品質管理実践マニュアル」(2014)]
安全の面でも欠かせません。手順の誤りは、労働災害の大きな原因の一つです。[出典:労働新聞社「【現場ゼロ災のための安全文化考】第11回 参加型の作業手順書」(2012)]
手作業が多い現場ほど、作業が人についてしまう
手作業が多いと、作業のコツは人の経験の中に残りやすくなります。
中小企業基盤整備機構の調査があります。対象はITを導入済みの中小企業922社です。業務全体のうち手作業が80%以上と答えた会社は20.2%でした。約5社に1社です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]
人が減る前に、1本だけでも形にしておく
働く人の数は、これから減っていく見込みです。
中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」には、中小企業の雇用者数の将来推計があります。2018年と比べた数字です。中位推計では、2040年に約8%低下します。[出典:中小企業庁(2026)]
低位推計では、2040年に約16%低下します。[出典:中小企業庁(2026)]
ポイント
人が減ってからでは、ベテランに聞く時間も取れません。1本だけでも、いまのうちに形にしておきます。
最初に作る作業は、どう選べばいいのか
選ぶ基準は3つです。当てはまる数が多い作業を、1本目にします。
たとえば、溶接の仕上げ確認がベテラン1人しかできず、手直しも多く、新人が最初に任される作業だとします。3つとも当てはまるので、これが1本目の候補です。
愛知県の資料にも、まずモデル工程を1つ決めて作る取り組みがあります。ベテランの作業を観察して聞き取り、手順を言葉にしています。[出典:愛知県「伴走型支援取組状況」(2024)]
1本目を選ぶ3つの基準
次の3つを、作業ごとに自己チェックします。
自己チェック項目
- □ ベテラン1人しかできない
- □ 不良やクレームが出やすい
- □ 新人が最初に担当する
チェックが多い作業から、1本目にします。同点なら、その作業が止まったときの困り方が大きい方を選びます。
迷ったら「新人が最初に担当する作業」から
3つの基準で迷ったら、新人が最初に担当する作業を選びます。
新人が最初に触る作業は、手順書の効果が一番早く見えます。使う人がすぐそばにいるので、確かめやすいからです。
工程の流れを1枚の図にして、先に作る範囲を決める
工程の流れを1枚の図にして、1本目の範囲だけを囲みます。前後の工程は、つなぎ目の条件だけ書きます。
たとえば、受入、加工、組立、検査、出荷の流れがあるとします。1本目が「検査」なら、検査の部分だけを囲みます。受入や出荷の中身は、後回しです。
前後の工程とのつなぎ目だけ先に決める
前の工程から何を受け取るかを、先に決めます。次の工程へ何を渡すかも同じです。
検査なら、受け取る条件は「組立が終わった製品」です。渡す条件は「合格の印をつけた製品」です。こうしておけば、前後の工程の手順書が未完成でも、1本目は作れます。
最初の1本の決め方は、マニュアルは最初の1本から。5ステップの作り方でも扱っています。
