AI-OCRとは|紙の文字をデータにする「OCR+AI」のこと

AI-OCRは紙の文字をデータにするOCRにAIを組み合わせたもの。手書きや書式がバラバラな帳票に対応する製品もありますが、精度は100%ではなく、読み取り後の人の確認が前提です。

この記事でわかること

  1. AI-OCRは「OCR+AI」です。手書きや書式がバラバラな帳票に対応する製品もあります。
  2. 精度は100%ではありません。読み取り後の人の確認が前提です。
  3. 紙の量や社内の体制によって、向き不向きがあります。

AI-OCRとは? 紙の文字をデータにする「OCR+AI」のこと

AI-OCRは、紙の文字をデータにする仕組み(OCR)に、AIを組み合わせたものです。人が紙を見て打ち直していた作業を、機械が肩代わりします。

メモ

OCRは、紙の文字を機械が読み取って、パソコンで使える文字にする技術です。AIは、たくさんの例から覚えて、人に近い判断をする仕組みです。

たとえば、FAXで届く注文書を、事務の方がExcelに打ち込んでいるとします。この打ち直しを、機械が読み取ってデータにします。人は、その結果を確かめる役に回ります。

なぜ今、中小企業で話題になるのか

御社の事務の方にも、紙を打ち直す時間はありませんか。ITを入れても、手作業が残る会社は少なくありません。紙の転記も、その手作業の一つです。

ITを導入済みの中小企業のうち、業務の8割以上が手作業の会社は20.2%です。およそ5社に1社の割合です。対象はITを導入済みの922社です。2025年11〜12月の調査です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]

では、AIを使った会社は何を期待したのでしょうか。省力化投資でAIを活用した事業者のうち、目的に「業務時間の節減」を挙げた割合は84.5%でした。対象はAI活用に取り組んだ1,685事業者で、複数回答です。[出典:中小企業庁(2026)]

この数字は、省力化投資でのAI活用について聞いた結果で、AI-OCRだけを聞いたものではありません。

AI-OCRが文字を読む仕組み

AI-OCRの読み取りは、大きく3つの段階に分けて説明できます。細かな手順は、製品によって違います。

  1. 画像を整える:読み取りやすいように、画像を整えます。
  2. 文字の場所を見つける:紙のどこに文字や枠があるかを探します。
  3. 文字を当てて、前後で直す:文字を読み取り、前後の言葉から読み違いを直します。

AIの部分では、文字の例をたくさん覚えさせる方法を使います。機械学習と呼ばれる方法で、深層学習(ディープラーニング)もその一つです。

読み取りを重ねるほど、精度が上がるサービスもあります。どこまで上がるかは、サービスと帳票によって違います。

AI-OCRのメリット

AI-OCRのメリットは、主に4つです。どれも、紙の打ち直しが減ることから生まれます。

メリット 中身
打ち込みの時間が減る 人は打つ役から、確かめる役に回る
人が打ち込む量が減る 人の打ち込みが減る。読み違いは確認で見つける
紙を探す手間が減る データとして保存すれば、紙の束から探すより見つけやすくなる場合がある
後の作業につなげやすい 会計ソフトや、決まったパソコン操作を自動で行う仕組み(RPA)に渡せるものもある

ただし、確認の時間は残ります。効果の大きさは、紙の枚数、打ち込みと確認の時間、料金で変わります。計算のしかたは月に何枚から検討する?で説明します。

従来のOCRと何が違うのか?

違いは主に3つです。手書き文字、書式がバラバラな帳票、曲がったりぼやけたりした文字への対応です。

従来のOCRは、読み取る位置を先に指定する方式が中心でした。「ここに金額が書いてある」と教えておく方式です。この方式では、書式が変わると設定の見直しが必要になることがあります。

AI-OCRは、前後の文字や並びから、何が書いてあるかを判断します。取引先ごとに請求書の形が違っても、読める場合があります。

従来のOCRとAI-OCRの読み取りの違い左は位置を指定して読む従来型、右は前後の文字から判断して読むAI-OCRの比較図従来のOCR読む位置を先に指定同じ書式なら読める書式が変わると弱いAI-OCR位置指定なしの型も前後の文字から判断書式違いも対応しやすいAI-OCRは、書式が違う帳票も読める場合があります。

従来のOCRは読む位置を先に決め、AI-OCRは前後の文字から判断して読みます。

違いを一枚で見る

項目 従来のOCR AI-OCR
書式の違いへの強さ 書式が変わると弱い 書式がバラバラでも対応しやすい
事前準備 読み取る位置の指定が必要 書式がバラバラ向きのタイプは、位置の指定なしで読める

曲がった文字やぼやけた文字も、AI-OCRは認識しやすくなっています。ただし、一度も学んでいない形式では精度が下がることがあります。

種類は3タイプ(定型/非定型/業種特化)

AI-OCRは、大きく3タイプに分かれます。「定型」は毎回同じ書式、「非定型」は書式がバラバラという意味です。自社の紙に近いものを選びます。

  • 定型タイプ:毎回同じ書式の帳票を読むタイプです。自社の決まった様式が中心の会社向きです。
  • 非定型タイプ:書式がバラバラな帳票を読むタイプです。取引先ごとに請求書の形が違う会社向きです。
  • 業種特化タイプ:特定の業種や業務の書類に合わせて作られたタイプです。自社の業務に合う製品があるかを確かめます。

ポイント

迷ったら、まず自社の紙を並べます。毎回同じ形か、バラバラかを見ます。

提供形態は2つ(クラウド型/社内設置型)

使う形は、大きく2つに分かれます。違いは、読み取る処理とデータをどこに置くかです。

形 どんなものか 気をつける点
クラウド型 インターネット経由で、提供会社の設備を使う 自社にサーバーを置かずに始められる。書類のデータは社外で処理される
社内設置型 自社のサーバーなどに入れて使う データを社内にとどめやすい。設置や保守を自社で行う必要があるかは、提供会社に確かめる

社内設置型は、オンプレミス型とも呼ばれます。選べる形は、提供会社によって違います。

データの扱いは、サービスごとに違います。契約前に、次の3点を確認してください。

  • 読み取った書類のデータの保存場所と、保存期間
  • 読み取った書類が、AIを賢くする材料(学習)に使われるか
  • 不要になったデータを、自社で消せるか

取引先の名前や金額が載った書類を読ませるため、特に確認してください。答えは、それぞれの規約や窓口で確かめます。

「認識率99%」は安心していい数字なのか?

ポイント

99%でも、安心とは言えません。読み取り後の確認を、誰がどう行うか。それを先に決めておきます。

認識率は、正しく読めた割合のことです。何を単位に数えた数字か(文字か、項目か)は、サービスに確かめます。

たとえば、文字単位の認識率を99%と仮定します。平均では、100文字あたり1文字の誤りに当たります。実際の誤りの数は、帳票によって変わります。

その1文字が数量や金額なら、請求の間違いにつながります。

読み取り後の確認は誰がやるのか

確認と修正は、取引先の書類を知っている事務の担当者が行います。確認のしかたは、サービスによって違います。

たとえば、元の画像と読み取り結果を並べて見比べ、違っていたら直す方法があります。購入前に、確認の方法を確かめましょう。

流れの一例は次のとおりです。

確認と修正の流れ

  1. 読み取りが終わると、結果が出ます。
  2. 担当者が、元の画像と読み取り結果を見比べます。
  3. 違う文字を直します。
  4. 確認が済んだものを、ファイルとして書き出します。連携に対応していれば、ソフトへ直接送れるものもあります。

IT担当がいない会社でも、この確認はできます。パソコンに詳しいかどうかより、書類の中身を知っているかが大切です。

帳票の登録や設定を誰が行うかは、サービスによって違います。購入前に、サポートの範囲を確かめましょう。

読み取り結果が会計ソフト・Excelに入るまでの流れ

ツール名ではなく、業務の流れで見ます。

  1. 紙をスキャン(機械で画像データにすること)します。対応しているサービスなら、スマートフォンで撮影する方法もあります。
  2. AI-OCRが文字を読み取ります。
  3. 担当者が確認し、修正します。
  4. 確認済みのデータを、ファイルとして書き出します。
  5. そのファイルを、会計ソフトやExcelに読み込ませます。連携に対応していれば、ソフトへ直接送れるものもあります。

読み込ませられるファイルの形は、使っているソフトによって変わります。自動で入るかどうかは、条件によります。購入前に確認が必要です。

紙から会計ソフト・Excelに入るまでの流れスキャン、AI-OCR読み取り、担当者が確認・修正、ファイル書き出し、会計ソフトやExcelへ読み込み、の5段階①紙をスキャン②AI-OCRが読み取る③担当者が確認・修正④ファイルに書き出す⑤会計ソフトExcelへ事務の方機械事務の担当者事務の方事務の方読み取りのあとに、人が確認する工程が入ります。

読み取り後に担当者が確認と修正を行い、そのあとデータを会計ソフトやExcelに入れます。

これまでとの違いを表にまとめます。

作業 これまで AI-OCR導入後
紙の文字の打ち込み 人がすべて打つ 機械が読み取る
間違いの発見 入力した人が見直す 読み取り後に担当者が確認する
担当者の仕事 打ち込みが中心 確認と修正が中心

こんな場合はうまく読めない(失敗と対策)

次の場合は、精度が下がりやすくなります。手書きの癖、FAXのかすれ、毎回違う書式、学んでいない形式などです。対策は、記入ルールの統一、原本の品質、まず試すことの3つです。

たとえば、かすれたFAXの注文書は、文字の一部が欠けて読めません。機械でも人でも、読み違いが起きやすくなります。

FAXと手書きが混ざっている会社は、その両方を試す対象にします。どこまで読めるかは、帳票の状態で変わります。

つまずき 起きること 対策
手書きの癖が強い 似た文字を読み違える 枠内に書く、数字の書き方をそろえるなど、記入ルールを決める
FAXのかすれ 文字が欠けて読めない 原本や、パソコンで開ける書類ファイル(PDF)で送ってもらえないか、取引先に相談する
書式が毎回違う 項目の位置がずれる 書式がバラバラな帳票向きのタイプを選ぶ
学んでいない形式 精度が下がる 実際の帳票で、先に試す

注意

まず試すときは、自社の実際の帳票を使います。きれいな見本では、本当の精度が分かりません。

試す紙は、普段届くものから選びます。読みやすいもの、かすれたFAX、手書きが多いものを混ぜます。

試せる範囲や費用は、サービスによって違います。申し込む前に、次の3点を聞きましょう。

申し込む前に聞く3点

  • 自社の帳票で試せるか
  • 試すのは無料か、有料か
  • 試したあと、契約しなくてもよいか

自社の紙が向いているか、次のリストで確かめます。

向いている条件

  • [ ] 毎回、同じ形の帳票が多い
  • [ ] 文字が読みやすい状態で、紙やデータが手に入る
  • [ ] 読み取り後の確認を、担当者が決まっている

要注意の条件

  • [ ] 手書きの癖が強い帳票が多い
  • [ ] かすれたFAXが多い
  • [ ] 書式が毎回違い、見たことのない形式も届く

要注意に当てはまっても、すぐにあきらめる必要はありません。先に試して、確かめます。

打ち込みに使っている時間は、無料の診断でも目安を確かめられます。業種・人数と、業務ごとの月の件数・1件の分数を答えます。減らせる時間の目安が出ます。

自社に必要? 導入を考える前の判断の目安

導入の前に、「そもそも紙を減らせないか」を考えます。そのうえで、紙の種類・枚数・作業時間を書き出して数え、判断します。

AI導入の壁として「導入にあたっての高コスト」を挙げた中小企業は、46.9%でした。複数回答です。対象は回答のあった1,668社で、2025年11〜12月の調査です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]

DX(デジタルの力で仕事のやり方を変えること)に取り組んでいない企業に、理由を聞いた調査があります。「自社がDXに取組むメリットがわからない」は54.0%で、最も高い割合でした。対象は従業員100人以下の未着手企業で、調査は2026年4〜6月です。[出典:IPA(2026)]

自社にとってのメリットは、自社の紙を数えると見えてきます。

まず「紙をなくせないか」を考える

AI-OCRを入れる前に、紙そのものを減らす方法があります。

紙を減らす方法

  • 取引先に、メールやPDFでデータを送ってもらう
  • 注文を、ホームページ上の入力欄(受付フォーム)で受ける
  • FAXで届く書類を、データで届くように頼む

ポイント

取引先の事情もあるため、すべては減らせません。減らせない紙だけが、AI-OCRの対象になります。

生成AIに画像を読ませる方法とは何が違うのか

文章や画像を理解して答えるAIを、生成AIと呼びます。代表例にChatGPTがあります。紙の写真を読ませて、文字を取り出すこともできます。

どちらも役に立ちます。違いは、毎日の仕事での使い方の組み立てにあります。

観点 AI-OCR 生成AIに画像を読ませる方法
目的 帳票の読み取りに向けて作られている 文章づくりなど、幅広い用途に使える
毎日の業務で使うとき 他のシステムと連携できるものもある 確認や書き出しの流れは、自社で決める
確認の仕組み 確認のしかたはサービスによって違う 自社で確認のルールを作る
向く場面 毎月、決まった帳票が届く 紙が少なく、ときどき読ませる

生成AIの仕組みを組み込んだAI-OCRもあります。どちらが合うかは、紙の量と、日々の使い方で決まります。

取引先の情報を入れてよいかは、社内のルールで確かめます。確認する点は提供形態は2つ(クラウド型/社内設置型)にまとめています。

月に何枚から検討する?

何枚から得になるかは、会社ごとに違います。料金の決め方もサービスごとに違うため、一律の枚数や金額は示せません。自社の数字で、次の2ステップで確かめます。

ステップ1:今の打ち込み時間を出す

「1か月の枚数×1枚の打ち込み分数÷60」で、1か月の時間が出ます。これに担当者の時給をかけると、今かかっている費用の目安になります。

ステップ1に使う情報は、次のとおりです。

  • [ ] どんな紙があるか(注文書、請求書、伝票など)
  • [ ] 1か月に何枚届くか
  • [ ] 1枚の打ち込みに何分かかるか
  • [ ] 誰が打ち込んでいるか
  • [ ] 毎回同じ書式か、バラバラか
  • [ ] 手書きやFAXは、どのくらい含まれるか
  • [ ] 取引先にデータで送ってもらえるか
  • [ ] 打ち込んだ先は、会計ソフトかExcelか

ステップ2:見積もりと並べる

料金の決め方には、いくつかの型があります。次の型を組み合わせているサービスもあります。

料金の型 中身 合いやすい使い方
初期費用 使い始めるときに一度かかる費用 どの使い方でも、有無を確かめる
月額固定 枚数にかかわらず、毎月決まった額 毎月の枚数がほぼ同じ
従量(使った分だけ) 使った量に応じて料金が変わる。何で数えるか(枚数など)はサービスに確かめる 枚数が少ない、月ごとの差が大きい

月額固定でも、使える量に決まりがあるかを確かめます。決まりを超えた分の料金も、あわせて確かめます。

サービスに見積もりを頼むときは、次の4点を聞きます。

見積もりで聞く4点

  • 初めにかかる費用はあるか
  • 月々の料金は、枚数で変わるか
  • 帳票の登録や設定は、料金に含まれるか
  • 自社の帳票で、試せるか

導入後も、確認と修正の時間は残ります。見積もりの月額に、その時間の費用を足します。その合計がステップ1の費用より小さければ、検討する価値があります。

初めにかかる費用は、別に確かめます。ステップ1の項目が埋まれば、見積もりと比べる準備ができます。

よくある質問

Q1.手書き伝票やFAXの注文書も読めますか? 読み間違いは誰が気づきますか?

手書きに対応する製品もあります。ただし、癖が強い文字や、かすれたFAXは精度が下がることがあります。読めるかどうかは、条件によります。

実際の帳票で試して確かめます。試せる範囲や費用は、サービスによって違います。申し込む前に聞きましょう。

読み間違いに気づくのは、確認する担当者です。確認のしかたは、サービスによって違います。たとえば、元の画像と読み取り結果を見比べて直す方法があります。

Q2.社員10〜50名の規模でも、意味はありますか? 月に何枚なら元が取れますか?

枚数の目安は、断定できません。紙の種類、枚数、担当者の作業時間、サービスの料金によって変わります。

紙の打ち込みに時間がかかっている会社なら、規模が小さくても検討の価値があります。まず1か月の打ち込み時間を出し、見積もりと並べます。(月に何枚から検討する?)紙そのものを減らせないかも、あわせて考えます。

Q3.読み取り後、会計ソフトやExcelに自動で入りますか? パソコンに詳しい社員がいなくても使えますか?

入れ方には、2つの方法があります。1つは、読み取った結果をファイルに書き出して、ソフトに読み込ませる方法です。もう1つは、他のシステムと連携して送る方法です。

どちらが使えるかは、サービスと使っているソフトによって変わります。購入前に確認しましょう。(読み取り結果が会計ソフト・Excelに入るまでの流れ)

IT担当がいなくても、確認と修正は事務の担当者が行えます。帳票の登録や設定のサポート範囲は、サービスによって違います。こちらも購入前に確かめます。

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