この記事でわかること
- 社長が先に決めるのは、任せる業務・試す期間と見る点・確かめる人の3つです。
- 進め方は5ステップです。最初の業務は、機密性が低く繰り返しの多い文書作成などが向きます。
- 任せる業務が決まり、確かめる人がいれば自社だけで足ります。決まっていなければ伴走を受ける手もあります。
AI導入で社長が最初に決めるのは、任せる業務・試す期間と見る点・確かめる人の3つです。小さく始める5ステップと、自社だけで足りるかの見分け方を解説します。

この記事でわかること
結論
AIは「何でもできる道具」ではありません。まず1つの業務に使う道具として入れるのが、いちばん失敗しにくい進め方です。
社長が今週決めるのは、次の3つです。
最初に決める3つ
目的のないまま入れるのは避けます。「流行っているから」で始めると、何を見て成功とするかが決まりません。先に「いま何が一番負担か」を言葉にします。くわしくはステップ1:導入の目的を一言で決めるで説明します。
関連記事:中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップ
公的調査では、AIを導入している中小企業は約2割です。AI導入の壁で最も多いのは高コストで、DXに取り組んでいない小さな会社では「メリットが分からない」という声が最も多くあります。どちらも、小さく始めて確かめる進め方と相性がよいと言えます。
中小企業基盤整備機構の調査では、AIを導入している中小企業は20.4%です。「一部の業務で導入している」と「全社的に導入している」の合計です。対象は1,647社で、調査期間は2025年11月17日〜12月12日です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]
中小企業白書には、別の見方の数字があります。2019年以降の省力化投資のうち、AI活用に「取り組んだ」と答えた割合は30.3%です(全体5,645社)。元の調査は、帝国データバンクが2025年11〜12月に行ったWeb調査です。[出典:中小企業庁(2026)]
この2つは、母数も調査も違います。並べて比べず、それぞれ別の数字として見てください。
同じ中小機構の調査で、AI導入の壁として最も高いのは「導入にあたっての高コスト」です。割合は46.9%で、複数回答です。この設問の回答は1,636社です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]
もう1つ、DXの調査があります。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」では、DXに取り組んでいない従業員100人以下の企業の54.0%が、「自社がDXに取組むメリットがわからない」と答えています。[出典:IPA(2026)]
これはDXに取り組まない理由の数字で、AI導入そのものの数字ではありません。調査全体の回答は国内企業1,799社(この54.0%の母数ではありません)で、期間は2026年4月17日〜6月12日です。
では、AIに取り組んだ会社は何を目的にしたのでしょうか。中小企業白書では、取り組んだ事業者(1,685社)の84.5%が「業務時間の節減」を挙げています。複数回答です。「人手不足の解消」は40.5%です。[出典:中小企業庁(2026)]
ポイント
費用が心配で、効果も見えにくい。この2つの不安には、最初から大きく投資せず、見る点を決めて小さく試す進め方で答えられます。
AI導入は、目的を決める、業務を選ぶ、小さく試す、ルールを決める、結果を見て判断する、の5ステップで進めます。各ステップで、社長が決めることと担当が確かめることを分けると迷いません。
最初に、「いま何が一番負担か」を一言で書きます。たとえば「見積書の文面づくりに時間がかかる」のような形です。
ツール探しは、そのあとです。先に道具を探すと、使うこと自体が目的になります。マイナビの解説では、目的と自社の課題をはっきりさせることが最初に挙がっています。start-linkも「目的なき導入」を失敗の型として挙げています。[出典:マイナビ、start-linkの導入解説記事(発行年は未確認)]
日々の業務を紙に書き出し、その中から1つだけ選びます。選ぶ基準は2つです。機密性が低いこと。繰り返しが多いことです。
向く例は、社内通知文やメールの下書きです。Money Forwardの解説は、こうした文書作成が最初の業務に向くと整理しています。[出典:Money Forward「AI基礎」記事(発行年は未確認)]
「1部門・1業務」で始めます。aipicksの90日ロードマップは、失敗の多くは範囲を広げすぎたことだと整理しています。[出典:aipicks「中小企業の生成AI 90日ロードマップ」(発行年は未確認)]
試す前に、「何を見て続けるか、止めるか」を決めておきます。たとえば「下書きにかかる時間が減ったか」「直す手間が増えていないか」です。期間は、担当が無理なく記録できる長さにします。
形も小さくします。ソフトを月額で借りて使う形(SaaS)は、初期費用を抑えやすいと、start-linkやAI総研が整理しています。[出典:start-link、AI総研の導入解説記事(発行年は未確認)]
費用のかかり方は、導入の形で変わります。SaaS、試しの導入、開発では、費用の出方が違います。WEELの解説でも、工程ごとに費用が変わるとされています。[出典:WEEL「中小企業のAI導入支援」(発行年は未確認)]
選ぶときは、次の3つの観点で比べます。
| 比べる観点 | 見ること |
|---|---|
| 入力データの扱い | 入力した内容が学習に使われるか、どこに保存されるか |
| 費用の出方 | 月額か、試しの導入か、開発か。あとから増える費用はないか |
| サポート | 困ったときに聞ける窓口があるか |
ルールは、重くしすぎません。まず1枚で足りる範囲から始めます。決めるのは、入力してよい情報と、使うサービスの利用規約の確認です。
大江橋法律事務所のニュースレターは、使うサービスの特性を調べることを挙げています。入力データを学習に使うか、保存はどうか、利用規約はどうか、という点です。社内の利用ニーズ調査と並行して進めます。[出典:大江橋法律事務所ニュースレター(2024)]
お客様の個人情報や取引先との契約書など、外に出せない情報は入れないと最初に決めておきます。
ステップ3で決めた点だけで判断します。決めた点で良ければ続けます。うまくいけば、次の業務へ1つずつ広げます。良くなければ、止めるか、業務を変えます。
ここまでが、目的から判断までの一巡です。1つの業務で一巡させてから、次へ進みます。 一巡させる前に広げないことが、小さく始める意味です。
注意
うまくいった直後でも、いきなり全社に広げません。1業務ずつ、ステップ3〜5を繰り返します。
うまくいかない会社には型があります。いきなり大きく入れる、目的がない、範囲を広げすぎる、全部を任せる、の4つです。専任担当がいなくても、社長と兼務の担当1人で回せます。
start-link、aipicks、マイナビは、失敗の型を次のように整理しています。AI総研は、デメリットとして情報漏えい、判断根拠の不透明さ、初期費用と人材の確保を挙げています。[出典:start-link、aipicks、マイナビ、AI総研の解説記事(発行年は未確認)]
| 失敗・リスク | 防ぎ方 |
|---|---|
| いきなり大規模に入れる | 1部門・1業務から始める |
| 目的がないまま入れる | ステップ1で、一番の負担を一言で決める |
| 範囲を広げすぎる | 1つの業務で一巡させてから広げる |
| すべてをAIに任せる | 人が出力を確認する。AIは「ツール」として使う |
| 情報漏えい | 入力してよい情報を決め、利用規約を確認する |
| 判断根拠が分からない | 結果をそのまま使わず、人が理由を確かめる |
| 初期費用と人材の負担 | 月額で借りる形など、小さい形で始める |
マイナビの解説は、AIの得意・不得意を知ったうえで、すべてを任せずツールとして使うことを勧めています。
専任の担当がいなくても進められます。社長が「決める」役、兼務の担当1人が「見る」役、と分けます。
| 場面 | 社長が決めること | 担当が見ること |
|---|---|---|
| 始める前 | 目的、任せる業務、試す期間と見る点 | 使うサービスの利用規約 |
| 試している間 | 続けるための時間の確保 | 試した結果の記録、出力の確認、ルールの守られ方 |
| 試したあと | 続ける・広げる・止める | 見る点に沿った結果の報告 |
担当は、記録と確認に絞ります。判断は社長がします。これなら、ITに詳しくない人でも務まります。
任せる業務が決まっていて、確かめる人がいるなら、自社だけで進めて足ります。決まっていなければ、外の伴走を受ける選択肢があります。
次のチェックリストで、自社の状態を確かめてください。
当てはまる項目が多いほど、自社だけで進めやすい状態です。当てはまらない項目があれば、そこが相談したい点です。
伴走を受ける場合は、支援会社の型を知っておくと選びやすくなります。aipicks、uravation、SHIFT AIは、支援会社をコンサル型・開発型・ツール提供型に分けて整理しています。[出典:aipicks、uravation、SHIFT AIの支援会社ガイド(発行年は未確認)]
見比べる軸は、次のとおりです。
丸投げは避けます。丸投げすると、社内にノウハウが残りにくいと、各社が整理しています。実績、契約の内容、成果物を質問して見極めます。
関連記事:AIコンサルと伴走支援の違い|選び方と契約前の質問
補助金を使える場合があります。要件を満たせば、受給できる可能性があります。使えるかどうかは、公式の公募要領で確かめます。
関連記事:AI導入の補助金|国の入口2つと申請前に決める3つ
注意
補助金を使うかどうかは、導入の前に公式の公募要領で要件と手続きを確かめてください。
Q1. うちの会社では何の業務から始めればよいですか。
機密性が低く、繰り返しの多い業務から1つ選びます。社内通知文やメールの下書きが例です。選び方はステップ2:任せる業務を1つだけ選ぶで説明しています。
Q2. 費用はどれくらいかかりますか。試してダメだったとき、損をしませんか。
費用は、SaaS、試しの導入、開発など、導入の形で変わります。小さい形で試し、続けるか止めるかの見る点を先に決めておけば、広げる前に止められます。ステップ3:小さく試す期間と見る点を決めるをご覧ください。
Q3. ITに詳しい人がいなくても進められますか。
進められます。社長が決め、兼務の担当1人が記録と確認をする形で回せます。専任担当がいなくても回る、社内の役割分担と自社だけで足りるかを確かめるで確かめてください。
Q4. 情報漏えいが心配です。
入力してよい情報を線引きし、使うサービスの利用規約を確認します。ルールは1枚で足ります。ステップ4:社内のルールを最低限決めるをご覧ください。
Q5. 助成金や補助金は使えますか。
使える場合があります。ただし、要件を満たす必要があります。使えるかどうかは、公式の公募要領で確かめてください。
社長が決める3つの整理から、一緒に進めたい場合は、カクヤクAIXにご相談ください。