この記事でわかること
- 右腕が育たない原因の多くは、人ではなく「何を頼むかが決まっていないこと」にあります。
- 先に仕事を書き出して、人・AI・外部・社長本人の4つに分けます。
- 一人に集中させず、仕事を分けて持たせると、離脱したときの痛手も小さくなります。
右腕が育たない原因は、頼む仕事が決まっていないこと。仕事を人・AI・外部・社長本人の4つに分ける手順を紙1枚で説明します。

この記事でわかること
結論から言うと、社員の資質より、頼み方と仕事の整理が原因のことが多いです。やり方を変えれば、いまの社員でも動き出す余地があります。
AIをどこから使うか迷うときは、中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップも参考になります。
社長の時間が、経営の仕事に回っていない会社は多いです。ラクスル社の調査では、戦略立案に理想どおりの時間を割けていない経営者・幹部は52.3%でした。対象は従業員2〜100名の中小企業の経営者・幹部300名です。調査期間は2026年2月19日〜24日です。[出典:ラクスル株式会社「中小企業経営者の52.3%が、「戦略立案に時間を割けていない」」(2026)]
事務・管理業務に週10時間以上かけている人は39.6%です。同じ調査の数字です。週10時間は、1日8時間で考えると、1日以上の仕事量です。[出典:ラクスル株式会社「中小企業経営者の52.3%が、「戦略立案に時間を割けていない」」(2026)]
人手が足りない会社も多いです。日本商工会議所・東京商工会議所の調査で、人手不足と答えた企業は60.0%でした。対象は会員企業2,654社です。調査期間は2026年7月21日〜8月21日です。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026)]
「右腕が育たない」と嘆く社長に、厳しい指摘をする記事もあります。J-CAST会社ウォッチの記事は、部下が指示待ちになるのは、トップが期待値を示さず細かい指示ばかり出すためだと述べています。右腕が育つかどうかは社長次第、という立場です。[出典:J-CAST会社ウォッチ「「右腕」が育たないと嘆く経営者 それはトップ自身のせいですよ」(2015)]
@DIME(小学館)の記事も、社長があらゆる業務に口を出すと、役員や管理職が萎縮して自分で判断しなくなると書いています。マネー現代(講談社)の記事は、日常業務は現場に任せる形が望ましいと述べています。[出典:@DIME「社長がすべてを取り仕切る会社が危ない理由」(2016)][出典:マネー現代「「小物」化する上司が招く“日本企業の悲劇”…」(2022)]
人を増やしても、会社が自分で動く力が上がるとは限りません。ネオキャリア社の調査では、その実感が「よくある」「たまにある」の合計は74.8%でした。対象は採用業務を内製化している従業員100〜300名未満の企業の経営者107名で、この記事の読者より大きな会社です。[出典:株式会社ネオキャリア「【中小企業経営者の時間の使い方に関する実態調査】約75%の経営者が「人を採用しても現場の自走力は向上していない」と回答」(2026)]
ポイント
社長を責める話ではありません。「何を、どこまで頼むか」を決めれば、動かせる余地があります。
結論は、人探しの前に仕事を分けることです。右腕1人に頼り切る形をやめると、会社が安定します。
右腕とは、社長を補佐し、社長と社員をつなぐ人です。社長と周りの人の間を取り持つ役目もあります。
労働新聞社の記事によると、2023年版中小企業白書は、右腕人材が業績向上に大きく貢献すると述べています。右腕がいて成長した会社の例が多いことは、ゴールドオンライン(幻冬舎)の記事も認めています。[出典:労働新聞社「中小企業白書 「右腕人材」育成に権限委譲を 営業先の選定など」(2023)][出典:ゴールドオンライン「『三国志』に学ぶ…「社長の右腕」には要注意といえるワケ」(2023)]
右腕は、転職、家族の事情、病気などで離れることがあります。ゴールドオンラインの記事は、離れると社長が元の業務を担うことになり、依存は会社の不安定要素になると述べています。[出典:ゴールドオンライン「『三国志』に学ぶ…「社長の右腕」には要注意といえるワケ」(2023)]
たとえば、経理も営業の段取りも1人の右腕に任せていた会社を考えます。その人が急に休むと、全部の仕事が一度に社長へ戻ります。仕事を分けて持たせておけば、戻る量は一部で済みます。持たせ方はステップ5:期待値を伝えて分けて持たせるで説明します。
進め方は、紙1枚に仕事を書き出し、人・AI・外部・社長本人の4つに分けるだけです。手書きか表計算で始められるので、ITが苦手でも続きます。
右腕に頼みたい仕事を、1週間の単位で書き出します。1つの仕事ごとに「何を」「どのくらいの時間で」を書きます。
準備するもの
きれいに書く必要はありません。思いつく順に、細かい仕事まで並べてください。
書き出した仕事を、次の4つに分けます。
J-Net21(中小企業基盤整備機構)のQ&Aでは、社長が忙しい対策として、必要な責任者の洗い出しから始める順を示しています。次に責任者が足りない部門を考え、最後に責任者を育てます。まず洗い出す、という順番は、この4分割と同じ考え方です。[出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)ビジネスQ&A「社長の忙しさを解消するためにはどうしたらよいですか?」]
AIに向くのは、下書き、整理、調べもの、日程調整のような仕事です。たたき台を作る作業は、AIに任せやすい仕事です。仕上げは人が確かめます。
向かないのは、最終判断、社員との信頼関係、対外交渉です。これは社長か、人に残します。
AIに任せる前に、手作業の多さも確かめます。中小企業基盤整備機構の調査では、手作業が業務の80%以上の企業は20.2%でした。対象はITを導入済みの中小企業922社です。調査期間は2025年11月17日〜12月12日です。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(令和8年3月)」(2026)]
最も多かったのは、手作業が60〜79%の企業で31.5%です。手作業が多い仕事ほど、まず書き出して整理する価値があります。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(令和8年3月)」(2026)]
外部の伴走支援は、右腕の代わりではありません。仕組みができて、人が育つまでの「つなぎ」として使います。
J-Net21のQ&Aは、責任者の育成は即効性のある方法ではないと述べています。育つまでの間、外部に支えてもらう選択肢があります。使うときは、期間と目的を先に決めます。[出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)ビジネスQ&A「社長の忙しさを解消するためにはどうしたらよいですか?」]
外部に出す例として、BPOサービスがあります。VOIX編集部の記事(2025年9月)によると、パーソルビジネスプロセスデザイン社は、会議の日程調整や経費精算などを代行するオンラインBPOサービス「社長の右腕 by StepBase」を始めています。[出典:VOIX編集部「パーソルビジネスプロセスデザインが提供する中小企業向けの新サービス「社長の右腕」で経営者の負担軽減」(2025)]
日本商工会議所・東京商工会議所の調査では、人手不足への対策で「デジタル活用等による省力化」は40.2%でした。ただし、企業規模が小さいほど回答数は減っています。対象は会員企業2,654社です。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026)]
人に任せる仕事は、期待値を言葉で伝えます。「誰が」「どこまで決めてよいか」を、1つずつ決めます。
一人に集中させず、仕事を複数の人に分けて持たせます。
ネオキャリア社の調査では、地力不足を感じる場面の一つに、特定の社員に負荷が集中する属人化があります。複数回答で42.5%でした。対象は従業員100〜300名未満の企業で、読者の会社より大きい点に注意してください。[出典:株式会社ネオキャリア「【中小企業経営者の時間の使い方に関する実態調査】約75%の経営者が「人を採用しても現場の自走力は向上していない」と回答」(2026)]
1か月使ったら、社長が持つ仕事が減ったかを見ます。減っていなければ、ステップ2の分け方を直します。
見直しは週1回、短い時間で構いません。紙に印をつけ、「AIに任せた」「人に渡した」を数えるだけです。
育てるか採るかは、「人に任せる」と決めた仕事が残ってから考えます。順番を守ると、採用や研修の無駄を減らしやすくなります。
権限は、小さく渡して段階的に広げます。労働新聞社の記事は、営業先の選定や顧客との交渉の権限を渡したことで、経営者目線が養われた事例を紹介しています。[出典:労働新聞社「中小企業白書 「右腕人材」育成に権限委譲を 営業先の選定など」(2023)]
右腕候補の社員にAI活用の研修を受けさせる場面もあります。日本商工会議所・東京商工会議所の調査で、リスキリングが必要だが進んでいない企業は66.1%でした。対象は会員企業2,654社です。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026)]
注意
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、要件を満たせば受給できる可能性があります。中小企業の経費助成率は75%です。ただし1人1訓練あたりの上限があります。訓練時間10時間以上100時間未満は30万円、100時間以上200時間未満は40万円、200時間以上は50万円です。eラーニング・通信制は15万円で、令和8年8月3日以降は1人につき1年度1回までです。対象は雇用保険被保険者へのOFF-JTで、事業展開やDX・GX化などに伴う訓練が対象です。AI活用の研修が当てはまるかは、要件を確かめてください。令和8年8月3日以降に提出された計画届が対象です(経過措置あり)。令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置で、延長の有無は確認できていません。申請前に、労働局で最新の条件を確かめてください。[出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)令和8年度版」(2026)]
採る場合は、先に求める人材像を決めます。J-Net21のQ&Aは、採用前に求める人材像、人数、待遇、採用コストを検討するよう勧めています。[出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)ビジネスQ&A「初めて人材の採用をするのですが、失敗しない採用のポイントを教えてください。」]
選ぶ観点の目安もあります。労働新聞社の記事によると、候補者選定で業務経験の豊富さを重視する企業は6割超です。調査名と対象数は記事で確認できていません。[出典:労働新聞社「中小企業白書 「右腕人材」育成に権限委譲を 営業先の選定など」(2023)]
次のチェックリストで、求める人材像を確かめてください。
どの質問も、答えは本文の手順にあります。迷ったら、紙1枚から始めてください。
Q:右腕を雇う余裕がなくても、何から始めればよいですか?
A:まず仕事の書き出しから始めます。お金はかかりません。ステップ1:頼みたい仕事を紙に書き出すをご覧ください。
Q:全部AIや外部に任せられますか?
A:全部は任せられません。最終判断、社員との信頼関係、対外交渉は社長か人に残します。ステップ3:AIに向く仕事を選ぶで線引きを説明しています。
Q:外部に任せると、お金と手間がかかって社員が育たないままになりませんか?
A:期間と目的を決めて「つなぎ」として使えば、防ぎやすくなります。ステップ4:外部の伴走支援をつなぎに使うをご覧ください。
Q:右腕が辞めたらどうなりますか?
A:仕事を分けて持たせておけば、戻る仕事は一部で済みます。ステップ5:期待値を伝えて分けて持たせるで説明しています。
Q:ITが苦手でも続けられますか?
A:続けられます。紙1枚と、週1回の見直しだけで足ります。
まとめ