人事評価にAIは使える?任せる所と社長が決める所

人事評価にAIは使えます。任せてよいのは下書きと整理までで、評価の決定と伝え方は社長が決めます。社員1人・1項目で試す手順と、個人情報の扱いを説明します。

この記事でわかること

  • 人事評価にAIは使えます。ただし任せてよいのは下書きと整理までです。評価の最終判断、昇給や処遇の決定、本人への伝え方は社長が決めます。
  • 最初は社員1人・評価1項目で試します。AIに下書きを作らせ、社長が事実と合うか確かめて自分の言葉に直します。
  • 氏名・給与・健康情報などは消してから入れます。使う前に、サービスのデータの取り扱い設定を確かめます。

中小企業基盤整備機構の調査で、AIを導入している中小企業は20.4%です。「一部の業務で導入」と「全社的に導入」の合計で、対象はこの設問に答えた1,647社です。 [出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(令和8年3月)全体版」(2026)]

AIを活用した事業者に目的を聞くと、「業務時間の節減」が84.5%です。対象はAI活用に「取り組んだ」1,685の事業者で、複数回答です。 [出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]

人事評価でAIを使う会社の割合は、公的な統計が見つかりませんでした。この記事では、社長が評価者の会社でも試せる範囲に絞って説明します。

人事評価にAIは使える?任せる所と社長が決める所

人事評価にAIは使えます。ただしAIは整理と下書きの係で、決めるのは社長です。人事部がなく、社長が自分で評価する会社でも同じです。

AIは整理と下書きの係 決めるのは社長 AIに任せる作業 社長が決める作業 評価シート・面談メモ・ 日報の整理 評価コメントの下書き 表現のそろえ直し 評価ランクの決定 昇給・賞与・処遇の決定 面談での本人への伝え方 下書きを 社長が確認する 役割分担の早見表 作業ごとの分担の目安

AIが作るのは下書きで、評価の結論と伝え方は社長が持ちます。

ポイント

AIが作るのは下書きです。評価の結論と、その伝え方は社長が持ちます。

AIに任せてよい作業

AIに向いているのは、散らばった記録の整理と文章の下書きです。評価シート、面談メモ、日報から、評価に使える材料を拾い出せます。

評価コメントの下書きや、表現のそろえ直しにも使えます。マネーフォワードの記事は、評価コメント作成の時間を短縮できることと、表現をそろえやすいことをメリットに挙げています。[出典:株式会社マネーフォワード「ChatGPTを人事評価に使える?プロンプト例・作り方・注意点を解説」(2026)]

AIのバイアス(偏り)を見つけて減らす使い方もありますが、偏りが出ることもあります。偏りはAIの偏りをそのまま渡してしまうで説明します。

社長が決める作業

評価ランクの決定は、社長が行います。昇給・賞与・処遇の決定も同じです。

マネーフォワードの記事は、評価ランクの決定や昇給・昇格などの処遇判断をAIに任せるべきではないとしています。[出典:株式会社マネーフォワード「ChatGPTを人事評価に使える?プロンプト例・作り方・注意点を解説」(2026)]

面談で本人にどう伝えるかも、社長が決めます。AIが決めたと思われないために、評価の理由は社長自身の言葉で話します。

カオナビの記事も、定性的な評価、個別事情の考慮、フィードバック、最終判断は人間が担うとしています。[出典:株式会社カオナビ「人事評価でAIは活用できるのか? メリット・デメリット、事例を解説」(2026年11月閲覧)]

役割分担の早見表

次の表は、作業ごとの分担の目安です。上の発行者の考え方を、小さな会社の作業に当てはめたものです。

作業AI社長
評価シート・面談メモ・日報の整理材料を拾い出して並べる拾い漏れがないか見る
評価コメントの下書き基準と実績から案を作る事実と合うか確かめて直す
表現のそろえ直し言い回しをそろえる自分の言葉か確かめる
評価ランクの決定任せない決める
昇給・賞与・処遇の決定任せない決める
面談での本人への伝え方話す内容の整理まで決めて、自分の言葉で話す

最初の1回は社員1人・1項目で試す手順

最初の1回は、社員1人・評価1項目だけで試します。小さく始めると、失敗しても傷が浅く済みます。

社員1人・評価1項目で試す ステップ1 範囲と目的を 決める ステップ2 評価基準と 記録を集める ステップ3 個人情報を消して 渡す ステップ4 下書きを 作らせる ステップ5 社長が確認して 言葉に直す

個人情報を消して渡すことと、社長が確認して言葉に直すことが、特に大事なステップです。

一創の記事は、最初の検証を1〜2部署に限る進め方を挙げています。人事評価は年に1〜2回しか回らないため、設計の誤りに気づくのが遅れるからです。[出典:株式会社一創「AIによる人事評価とは?できること・バイアス低減と受託開発での実装判断【2026年版】」(2026)]

マネーフォワードの記事も、小規模なトライアルから始めることを勧めています。[出典:株式会社マネーフォワード「人事評価にAIは活用!プロンプト集・メリット・デメリット、企業のツール導入事例など」(2026)]

10〜50名の会社なら、部署ではなく社員1人・1項目で始めるのが現実的です。これは、この記事からの提案です。

準備するもの

  • 評価シート(なければ、ステップ2で項目案を作ります)
  • 面談メモや日報など、その社員の記録
  • 普段使っているAIの画面

試す範囲と目的を決める

試す相手は社員1人、評価は1項目だけにします。たとえば「顧客対応」の1項目です。

目的は1つに絞ります。「評価コメントの下書きを早く作る」などです。昇給やランクの決定は、目的に入れません。

評価基準と記録を集める

評価の基準と、その社員の記録を集めます。基準は、評価シートの項目の説明文です。記録は、面談メモや日報です。

評価シートがまだない会社は、AIに評価項目の案を作らせてかまいません。ただし、どの項目を採用するかは社長が選びます。

基準を決めて社員に伝えておくことが、後で「AIが決めたのか」と思われない土台になります。

個人情報を消してAIに渡す

AIに渡す前に、名前などを置き換えます。氏名は「Aさん」にします。社員番号や給与は消します。

どの情報を消すかは入れてよい情報と消してから入れる情報で説明します。

評価コメントの下書きを作らせる

AIには、評価基準、実績、出力の形を渡します。マネーフォワードの記事も、評価基準を明示することと、出力形式を指定することをコツに挙げています。[出典:株式会社マネーフォワード「ChatGPTを人事評価に使える?プロンプト例・作り方・注意点を解説」(2026)]

次の指示文は、コピーして使えます。[ ]の中を自社の内容に置き換えてください。

あなたは中小企業の人事評価コメントの下書きを手伝う相談相手です。
次の評価基準と実績をもとに、評価コメントの下書きを書いてください。

【評価の項目と基準】[項目名と、その説明]
【Aさんの実績】[面談メモや日報から、具体的な出来事を箇条書きで]

【お願い】
・300字程度で、よかった点と伸ばしたい点を書く
・実績に書かれていない事実は足さず、[要確認]と書く
・具体的な出来事を入れて書く

「実績にない事実は足さない」という一行が大事です。この一行を入れると、AIが事実を作ってしまうのを減らしやすくなります。それでも足されることがあるので、次のステップ5で確かめます。

事実と合うか確かめ、社長の言葉に直す

出てきた下書きは、そのまま本人に渡しません。社長が確かめ、自分の言葉に直します。

マネーフォワードの記事は、出力には偏った表現や、入力していない事実の補完が含まれる可能性があるとしています。AIの出力は「あくまで下書き」と位置づけています。[出典:株式会社マネーフォワード「ChatGPTを人事評価に使える?プロンプト例・作り方・注意点を解説」(2026)]

次のチェックリストで、本人に渡す前に確かめてください。

  • 入力していない事実が足されていないか
  • 実績の内容は、記録と合っているか
  • 偏った表現や、性別・年齢で決めつけた表現はないか
  • 具体的な出来事が入っているか
  • 自分の言葉で、本人に口頭でも説明できるか

入れてよい情報と消してから入れる情報

人事評価の情報には個人情報が含まれます。入れる前に、利用目的の範囲か、学習に使われないかを確かめます。

公的機関の注意点 入れる前に確かめること 利用目的の範囲か / 入力が学習に使われないか 消してから入れる情報の一覧 そのまま入れない 氏名・社員番号 給与・健康情報 置き換えれば入れられる 氏名は「Aさん」 日報や面談メモの出来事

入れる前に目的と学習の扱いを確かめ、氏名などは消すか置き換えてから入れます。

注意

「法律違反になる」と言い切れる場面ばかりではありません。ただし、本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われると、違反の可能性があるとされています。入力前の確認を習慣にしてください。

公的機関が示している注意点

個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に、生成AIサービスの利用についての注意喚起を出しています。個人情報を扱う事業者向けの注意点は、次の2つです。

公的機関の注意点(令和5年6月2日)

  • 個人情報を含む入力は、利用目的を達成するために必要な範囲かを十分に確認する
  • 本人の同意なしに個人データを入力し、応答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性がある。そのため、提供事業者が個人データを機械学習に使わないことなどを確かめる

[出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)]

この文書には「今後、追加の注意喚起等を実施する可能性もある」とも書かれています。使う前に、最新の案内を見てください。

EUには、人事評価に使うAIを「ハイリスク」に分ける法律があります。一創の記事の説明です。EUの中の規制で、日本の中小企業にそのままかかるとは書かれていません。[出典:株式会社一創「AIによる人事評価とは?できること・バイアス低減と受託開発での実装判断【2026年版】」(2026)]

消してから入れる情報の一覧

マネーフォワードの記事は、氏名、社員番号、給与、健康情報などは原則入力しないとしています。入力する場合は匿名化し、学習に使われるかなどの条件も確かめます。[出典:株式会社マネーフォワード「ChatGPTを人事評価に使える?プロンプト例・作り方・注意点を解説」(2026)]

氏名・社員番号・給与・健康情報は、消してから入れます。氏名は「Aさん」のように置き換えます。

次のチェックリストで、AIに渡す前に確かめてください。

  • 氏名を「Aさん」などに置き換えたか
  • 社員番号や給与の数字を消したか
  • 健康に関する情報を消したか
  • 使うAIの設定で、入力が学習に使われないか確かめたか
  • 評価に使う目的の範囲に収まっているか

やりがちな失敗と防ぎ方

人事評価でのAIの失敗は、偏り、社員の不安、費用と選び方の3つに分けられます。どれも、先に知っておけば防ぎやすくなります。

失敗は3つ。先に知れば防げる 落とし穴 防ぎ方 AIの偏りを そのまま渡す 人が確認する AIが決めたと 社員に思われる 基準を先に伝える 下書きだけに使うと 説明する 費用と選び方で迷う 今使っているAIで試し 観点で選ぶ

偏り、社員の不安、費用と選び方の3つは、先に知っておけば防げます。

AIの偏りをそのまま渡してしまう

AIの文章には、偏りが入ることがあります。米国のTextio社は、2023年1月に、ChatGPTで評価フィードバックを書かせる検証をしました。代名詞だけを変えた150のプロンプトを使っています。[出典:Textio, Inc.「ChatGPT writes performance feedback」(2023)]

結果は、女性向けのフィードバックが約15%長く、増えた部分は批判的な内容が多めでした。役割から性別を推測する例もありました。2023年1月時点の検証なので、今のAIで同じ結果が出るとは限りません。[出典:Textio, Inc.「ChatGPT writes performance feedback」(2023)]

防ぎ方は、人が確認することです。手順はステップ5:事実と合うか確かめ、社長の言葉に直すの通りです。

AIが決めたと社員に思われる

評価の仕組みが見えないと、社員は不安になります。マネーフォワードの記事は、社員の不安や反発を招く可能性をデメリットに挙げています。[出典:株式会社マネーフォワード「人事評価にAIは活用!プロンプト集・メリット・デメリット、企業のツール導入事例など」(2026)]

防ぎ方は、評価基準を先に社員へ伝えることです。AIは下書きだけに使うと説明します。評価の理由は、社長の言葉で話します。

費用と選び方で迷う

専用ツールを探す前に、今使っているAIで試します。費用は大事な観点です。AI導入の阻害要因で、「導入にあたっての高コスト」は46.9%で、最も高い項目です。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(令和8年3月)全体版」(2026)]

この設問に答えたのは1,636社で、複数回答です。選ぶときは、製品名ではなく、次の観点で比べます。

比べる観点見ること
評価制度に合うか自社の評価項目や基準を入れて使えるか
データの取り扱い入力が学習に使われないか
費用続けやすい費用か

よくある質問

人事部がなく、社長1人で評価していても使えますか?

使えます。社員1人・1項目から始めてください。進め方は最初の1回は社員1人・1項目で試す手順にまとめました。

評価シートがない場合、AIで評価項目の案を作ってよいですか?

作ってかまいません。ただし、どの項目を採用するかは社長が決めます。詳しくはステップ2:評価基準と記録を集めるにあります。

AIに評価ランクまで決めさせてもよいですか?

決めさせないでください。ランクの決定や昇給などの処遇は、社長が決めます。理由は社長が決める作業で説明しました。

社員の名前や給与を入れても大丈夫ですか?

そのまま入れないでください。氏名は「Aさん」に置き換え、給与は消します。詳しくは消してから入れる情報の一覧です。

AIに使う指示文や社内ルールは、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?

マネーフォワードの記事は、プロンプトとガイドラインを半年から1年に1回は見直すとしています。[出典:株式会社マネーフォワード「ChatGPTを人事評価に使える?プロンプト例・作り方・注意点を解説」(2026)]

章のまとめ

  • AIに任せるのは、整理と下書きまでです
  • 評価ランク、昇給・処遇の決定、伝え方は、社長が決めます
  • 最初は社員1人・1項目で試します
  • 氏名・社員番号・給与・健康情報は、消してから入れます
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