この記事でわかること
- 満足度アンケートだけでは、研修の効果は分かりません。
- 研修の前に「何がどう変われば成功か」を1つ決めます。
- 社内にある数字と、数か月後の行動の変化を見比べます。
研修の効果測定は、小さな会社なら反応・学習・行動の3段階まで見れば十分です。社長1人で回す6ステップと、AIの使いどころ、助成金の注意点を解説します。

この記事でわかること
研修の効果測定とは、研修の目的がどこまで達成されたかを確かめることです。やらないと、続けるかやり方を変えるかを決める材料がなくなります。
リスキリング(仕事に必要な新しい知識や技能を学び直すこと)の必要性を感じる企業は多くあります。ところが「必要性を感じるが、取り組みが十分に進んでいない」企業は66.1%です。対象は各地の商工会議所の会員企業2,654社です。調査期間は2026年7月21日から8月21日です。研修をしても、測る段階まで手が回らない会社は少なくありません。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所(2026)]
測る習慣がない会社は、以前から多くありました。人事責任者・育成担当者に聞いたHR総研(ProFuture株式会社)の調査では、中堅社員研修の効果測定について、中小企業の89%が「KPIは特に設定していない」と答えました。KPIとは、成果を測る目印となる数字のことです。調査全体の有効回答は246件です。2020年の調査なので、今とは状況が違う可能性があります。[出典:HR総研(ProFuture株式会社)「人材育成『中堅社員研修・管理職研修』に関するアンケート調査 結果報告」(2020)]
メモ
「やりっぱなし」とは、研修を受けさせただけで、その後の変化を確かめないことです。
測ると、次の研修を良くできます。マネーフォワード クラウド給与の解説は、メリットに改善や受講者の意欲を挙げています。
社長にとっていちばん大きいのは、お金をかけ続けるか決める材料になることです。続ける、変える、やめるを、感覚ではなく事実で選べます。
満足度アンケートは、研修を受けた直後の気持ちを聞くものです。「楽しかった」「分かりやすかった」は大事ですが、仕事が変わったかは分かりません。
HRプロの連載は、満足度だけでは効果の測定には不十分だと述べています。Uravationの解説も、満足度だけのアンケートは最初の段階で止まると指摘しています。
効果は「反応・学習・行動・結果」の4段階で見ます。小さな会社は、まず「行動」までを目安にすれば十分です。「結果」は無理に追わなくてかまいません。
この4段階は、カークパトリックのモデルとして多くの解説が紹介しています。たとえば社員向けのマナー研修なら、受講者の感想が反応です。テストの点が学習です。お客様への電話対応が変わったかが行動です。クレームが減ったかが結果です。
| 段階 | 何を見るか | 小さな会社での見方 |
|---|---|---|
| 反応 | 受講者の満足度、感想 | 研修の直後に短いアンケートで聞く |
| 学習 | 内容を理解できたか | 直後に、理解できたかを本人に聞く |
| 行動 | 現場でやり方が変わったか | 数か月後に、本人と上司に聞く |
| 結果 | 業績や費用対効果への影響 | 無理に追わない |
ポイント
小さな会社は「行動」まで見れば十分です。結果は、ほかの要因も混ざるので、研修だけの成果とは言い切れません。
反応は、受講者が研修をどう感じたかです。学習は、内容を理解できたかです。どちらも研修の直後に、アンケートで聞けます。
大がかりなテストは、小さな会社では不要です。まず「理解できたか」「まだ分からない点はどこか」を聞くだけで始められます。
行動は、学んだことが現場で使われているかです。HRプロの連載は、この段階まで測らなければ効果を測ったとはいえないと述べています。
Schoo for Businessの解説も、学んだことが現場で実践できているかを測る指標にしています。上司から定期的に声をかけてもらうと、学びっぱなしを防げるとも書いています。
結果は、研修が業績にどう響いたかです。カオナビの解説は、業績との因果関係が見えにくいと述べています。研修を受けた人と受けない人を比べる方法も紹介しています。
費用対効果は、ROI(投資に対する利益の割合)で表します。式は「利益÷投下資本×100」です。ただし、受講者が数人だと、人を比べる方法もROI計算も成り立ちにくくなります。使わなくてよい場面です。
必要なのは「研修の前に決める1つ、直後に1回、数か月後に1回」の3点だけです。人事担当がいなくても回せます。数か月後に何を見るかは、行動:現場でやり方が変わったかで説明した考え方と同じです。
たとえば「見積書の手戻りが減る」を成功の姿に決めた会社を考えます。研修後は、その手戻りの件数だけを見ればよくなります。決めていない会社は、何を見ればよいか分からず、感想だけで終わります。
準備するもの
研修の前に「何がどう変われば成功か」を、一文で書きます。例は「見積書の手戻りが減る」「問い合わせへの返事が早くなる」です。
数字の目標値は、無理に決めなくてかまいません。まず変わってほしい姿を、言葉で決めます。カオナビの解説も、測定の前に期待する効果を決めるよう述べています。
新しい指標は作りません。日報、見積の件数、手戻り、問い合わせ対応の時間など、すでに記録している数字から1つ選びます。
数字(定量)と、本人や上司の声(定性)を1つずつ組み合わせると、確かさが増します。マネーフォワード クラウド給与の解説も、両方を組み合わせることを勧めています。
直後のアンケートは、数問の短いもので足ります。長いと、答える側も集める側も続きません。
設問の例
これは自社で作る例です。上位の解説では、Uravationが直後7問、フォロー3問という設問例を紹介しています。まずは小さく始めてください。
直後だけでは、現場が変わったかは分かりません。Schoo for Businessの解説は、行動変容には時間がかかるため、複数のタイミングで測るよう述べています。
数か月後に、ステップ2で選んだ数字を見ます。あわせて、本人と上司に「前と何が変わったか」を短く聞きます。行動チェックリストを作る方法もあります。いつ確かめるかは、自社の仕事に合わせて研修の前に決めてください。
自由記述が増えたら、生成AIに分類や要約をさせると、読む手間を減らせます。「同じ意見ごとにグループ分けして」と頼む使い方です。フォローの問いかけ文づくりにも使えます。
注意
個人名や評価に関わる内容は、そのままAIに入れないでください。社内のルールに沿って使います。
結果を見て、社長が「続ける」「やり方を変える」「やめる」のどれかを決めます。測っても次に活かせないのが、よくある失敗です。
ツールで効率化する方法もありますが、社長1人で回す段階では、まず不要です。決めるのは、数か月後の確認の日です。
マネーフォワード クラウド給与の解説は、よくある失敗として、測定が目的になること、結果を次に活かせないこと、協力が得られないことを挙げています。小さな会社には、人数が少ないことの落とし穴もあります。
次のチェックリストで、研修の効果を測れる状態かを確かめてください。
測ること自体が目的になると、手間ばかり増えます。Schoo for Businessの解説は、測定コストと効果の見極めを注意点に挙げています。短期の結果に一喜一憂しないことも大切です。
見る数字を絞れば、手間は増えません。ステップ2で選んだ1つから始めてください。
株式会社課題解決プラットフォームの解説は、AI研修ではAIの活用率を最優先に見るよう述べています。使われなければ、時間削減などの効果も出ないためです。
ただしUravationは、アンケート(主観)と利用の記録(客観)を分けて併用するよう指摘しています。アンケートでは使っていると答えても、実際は使っていないことがあるからです。
受講者が数人だと、個人差の影響が大きくなります。1人の数字の上下で、研修の良し悪しは決められません。
数字より、本人と上司の具体的なエピソードを重く見てください。たとえば「先月は見積の手戻りを自分で見つけて直した」のような話です。
注意
数人のデータでROIを計算して、研修の価値を決めないでください。
頼む場所は、研修そのものよりも、研修後のフォローに向いています。数か月後の確認、声かけ、まとめを外に頼む選択肢があります。
Schoo for Businessの解説は、人事のリソースが足りないときは、インプットを外部に任せ、社内のリソースを前後の施策に充てる考え方を示しています。社長の目線に直すと、学ぶ部分は外に頼み、自分は事前の目標づくりと事後の判断に時間を使う、ということです。
特定の会社を選ぶ前に、次の観点で比べてください。
| 比べる観点 | 確かめること |
|---|---|
| 事前の目標づくり | 成功の姿を決めるのを、誰が手伝うか |
| 研修後のフォロー | 数か月後の確認や声かけは含まれるか |
| 結果の報告 | どんな形で報告してもらえるか |
| 費用 | 研修とフォローで、いくらかかるか |
注意
研修費用に使える可能性がある助成金に、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)があります。対象になる研修かどうかも要件で決まります。要件を満たせば受給できる可能性がありますが、訓練計画の提出などの手続きが別にあり、審査次第です。中小企業の経費助成は75%です。受講者1人あたりの限度額は、10時間以上100時間未満の訓練で30万円です。訓練の時間で限度額は変わり、eラーニング・通信制は15万円です。eラーニングは令和8年8月3日以降、1人につき1年度1回までです。効果測定そのものへの助成ではありません。令和8年度末(2027年3月31日)までの制度で、延長の有無は確認できていません。[出典:厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」(2026)][出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)令和8年度版」(2026)]
助成金の全体像は、助成金と補助金の違い|AI導入で最初に調べる制度で確認できます。
あわせて読みたい:リスキリング助成金とは?中小企業の助成率75%と確認順/AI研修の選び方|数十人の会社が見る3点と助成金
研修のあとのフォローや、効果の見方を一緒に整えたい場合は、カクヤクAIXの伴走支援をご案内しています。まずは無料相談で、いまの悩みをお聞かせください。
すでに社内にある数字を1つ選んで見ます。新しい仕組みは要りません。詳しくはステップ2:すでにある数字を1つ選ぶをご覧ください。
そうとは限りません。満足度は、4段階のうち最初の「反応」を見ているだけです。現場で行動が変わったかも、あわせて確かめてください。
あります。ただし数字の比較は成り立ちにくいので、変化の具体例を見てください。本人と上司に聞く短い声かけが役立ちます。
減る量は一概には言えません。自由記述や面談メモの分類・要約、フォローの問いかけ文づくりなどに使えます。個人名や評価に関わる内容は入れないでください。
要件を満たせば受給できる可能性がある制度があります。手続きや終了予定は、外部の研修会社や伴走支援は、どこで頼ればよいかで説明しています。
自社の研修で何を見ればよいかを整理したいときは、カクヤクAIXにご相談ください。研修の目的に合わせて、見る数字と測る時期を一緒に決めます。