この記事でわかること
- 研修だけでは現場に定着しにくいので、現場の「1業務」で使いながら育てる
- 担当は専任でなくてよい。兼任1人と社長で組み、全員に教える範囲と担当が深める範囲を分ける
- 自社だけで進めるか伴走を受けるかは、担当の時間・試す業務・相談相手の3点で決める
AI人材の育成は、研修より現場の1業務で使うことから。担当の決め方、全員に教える範囲、5ステップ、自社だけか伴走かの判断を社長向けに解説します。

この記事でわかること
結論
AI人材とは、特別な専門家ではなく、自社の仕事でAIを使いこなせる社員のことです。育て方は「研修のあとに現場」ではなく、「現場の1業務で使い、足りない所だけ学ぶ」順にします。
生成AIを使う方針の会社は、すでに多数派です。中小企業で「積極的に活用する」か「領域を限定して使う」方針の会社は58.1%です。大企業では74.0%です。対象は従業員10名以上で、デジタル化に取り組み始めた企業の管理職以上です。中小企業の回答は162でした。[出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026)]
一方で、実際に使っている会社はまだ少数です。中小企業のAI導入率は20.4%です。この設問の回答は1,647社です。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]
育てる前に、まず「何の仕事で使うか」を決めることが近道です。
AI活用全体の始め方は「中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップ」で説明しています。
結論
研修で学んだことと毎日の仕事が結びつかず、使っても評価されないと、AIは使われなくなります。育成の前に「自社がやるメリット」を決めていないことも原因です。
従業員のリスキリング(仕事に必要な新しい力を学び直すこと)に、必要性は感じているのに進んでいない企業は66.1%です。対象は各地の商工会議所の会員企業2,654社です。調査期間は2026年7月21日から8月21日でした。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026)]
1つ目は、座学で理解して終わることです。聞いたときは分かった気になっても、自分の仕事で試す機会がありません。
2つ目は、研修と実務のつなぎ目がないことです。「明日からどの仕事で使うか」が決まっていないと、手が動きません。
3つ目は、AIを使っても評価に出ないことです。手間だけが増えると感じると、続きません。
もう一つあります。「自社がやるメリットがわからない」と感じていることです。DXに取り組んでいない企業のうち、従業員100人以下の企業では、この理由が54.0%と最も高くなっています。調査全体の対象は国内企業1,799社です。[出典:IPA「DX動向2026」(2026)]
| 失敗 | なぜ起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 全員に同じ研修をする | 仕事によって使う場面が違うため、自分ごとになりにくい | 全員に教える範囲と担当が深める範囲を分ける |
| 研修テーマから決める | 現場の困りごとと結びつかない | 毎日・毎週ある業務から1つ選ぶ |
| 担当を決めない | 誰に聞けばよいか分からず、立ち消えになる | 兼任でよいので担当を1人決める |
| ルールを作らない | 入れてはいけない情報が分からず、不安で使えない | 使ってよい情報を先に決める |
| 使っても評価されない | 手間だけが増えて、続ける理由がない | うまくいった使い方を残し、評価に入れる |
費用の面でも悩みがあります。AI導入の阻害要因で「導入にあたっての高コスト」は46.9%と最も高くなっています。この設問の回答は1,636社で、複数回答です。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]
結論
社員全員に同じことを教えません。「全員が触る範囲」「担当が深める範囲」「社長が決める範囲」の3つに分けます。
従業員10〜50名の会社なら、この3つで十分です。初級・中級・上級のような細かい段階分けは、人数が少ない会社には細かすぎます。
メモ
AI人材は、プログラムを書く人ではありません。AIに仕事を頼み、出てきた答えを確かめて使える人のことです。
| 区分 | 教えること | 目安の関わり方 |
|---|---|---|
| 全員 | AIへの頼み方(指示の出し方)、入れてはいけない情報のルール | 自分の仕事で、試しに触ってみる |
| 担当 | 指示文の工夫、うまくいった使い方の記録、ほかの社員の相談への対応 | 最初の1業務で、いちばん多く使う |
| 社長 | 目的の決定、使ってよい情報の線引き、担当に時間を渡す判断 | 週に一度は担当の話を聞き、方針を決める |
10〜50名の会社では、教える範囲を「全員」「担当」「社長」の3つに分ければ足ります。
全員に教えるのは、2つだけです。1つ目はAIへの頼み方、2つ目は入れてはいけない情報のルールです。
頼み方は、プログラミングの知識がなくても身に付きます。たとえば「お客様への返信文の下書きを作って」と、相手や目的を添えて頼むだけです。
担当は、そこからさらに深めます。どう頼むと答えが良くなるかを試し、見つけたコツをほかの社員に伝えます。
専任は置かなくて構いません。兼任の担当を1人決めます。
選ぶ目安は、役職や年齢ではありません。新しい道具を試すのが苦にならないこと、その業務をよく知っていることの2点です。
社長は、担当に任せきりにしません。目的を決めること、使ってよい情報を決めること、担当が動く時間を空けることは、社長の役目です。
結論
研修のテーマからではなく、現場で毎日・毎週出る業務を1つ選び、使いながら覚えます。5つのステップで進めます。
5つのステップを左から順に進め、ステップ4でうまくいかなければ、ステップ2に戻って別の業務で試します。
最初に、「何の時間を減らしたいか」を1文で書きます。たとえば「毎週の見積書づくりにかかる時間を減らしたい」です。
AI活用に取り組んだ事業者の目的は、「業務時間の節減」が84.5%でした。対象は取り組んだ事業者1,685社で、複数回答です。[出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]
「メリットがわからない」で止まっている会社も、ここを書くと動き出します。
選ぶ業務は、1つだけです。次のチェックリストで、候補の業務を確かめてください。
3つとも当てはまる業務から選びます。メール文の下書き、議事録の整理、社内文書のたたき台などが候補です。
担当を兼任で1人決めます。決め方は専任を置けない会社の担当の決め方を見てください。
次に、使ってよい情報のルールを作ります。お客様の個人情報や取引先との契約内容など、入れない情報を紙1枚に書き出し、全員に伝えます。
選んだ1業務だけで、担当が使います。期間は長く取らず、短く区切ります。
区切りの日に、時間が減ったか、結果の質に問題がなかったかを担当と社長で見ます。うまくいかなければ、ステップ2に戻って別の業務で試します。
うまくいった指示文と手順を、誰でも見られる場所に保存します。次に使う人が、ゼロから考えずに済みます。
使って成果が出た人が、評価される仕組みも作ります。ほめる、評価の項目に入れる、といった形で構いません。
ポイント
1業務で成果が見えてから、2つ目の業務に広げます。最初から広げると、どれも中途半端に終わります。
結論
決め手は、担当の時間が取れるか、試す業務が決まっているか、相談できる相手がいるかの3点です。足りない点があれば、外の力を借ります。
| 観点 | 自社だけ | 外部研修 | 伴走 |
|---|---|---|---|
| 向く状況 | 担当に時間があり、試す業務も決まっている | 全員に基本を学ばせたい | 業務の選び方から相談したい |
| 負担 | 教材づくりと進行を自社で持つ | 研修の日程を空ける | 相談の時間を取る |
| つまずきやすい点 | 行き詰まっても相談相手がいない | 学んだあと、現場で使われずに終わる | 任せきりにして、社内に残らない |
外部研修には、自分で学ぶ形と、講師から学ぶ形などがあります。どちらが合うかは、担当が学ぶ時間をどれだけ取れるかで決まります。価格だけで選ばず、自社の業務で使う練習ができるかを見てください。
研修の選び方は「AI研修の選び方|数十人の会社が見る3点と助成金」も参考になります。
次のチェックリストで、自社の状況を確かめてください。
3つとも当てはまれば、自社だけで始められます。1つでも欠けていれば、欠けている所に外部研修か伴走を足します。
研修の費用には、国の助成金を使える可能性があります。要件を満たせば、受給できる可能性があります。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
[出典:厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」(2026)]
注意
支給には訓練計画の提出など要件があり、受給は審査次第です。手続きの時期も含めて、申し込む前に管轄の労働局へ確認してください。
助成金の確認順は「リスキリング助成金とは?中小企業の助成率75%と確認順」で説明しています。
結論
担当は兼任で足り、全員にプログラミングは教えません。まず現場の1業務で試すのが近道です。
育てられます。兼任の担当を1人決め、社長と組んで進めます。詳しくは専任を置けない会社の担当の決め方で説明しました。
研修のテーマではなく、現場の業務から選び直します。毎日・毎週ある業務を1つ選び、そこで使います。選び方はステップ2:最初の1業務を選ぶを見てください。
必要ありません。全員に教えるのは、AIへの頼み方と、入れてはいけない情報のルールです。
担当の時間、試す業務、相談相手の3点で決めます。欠けている点があれば、伴走を足します。チェックは自社の状況で決めるチェックにあります。
要件を満たせば、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)を使える可能性があります。訓練計画の提出などの要件と審査があります。手続きの時期も含めて、管轄の労働局へ確認してください。2027年3月31日までの制度の予定です。