この記事でわかること
- DX人材の育成は、専任チームを作らず、社長と兼務の1〜2人で、業務の困りごと1つから始められます
- 最初の1〜3か月は「困りごとを決める→今の力を書き出す→一人を選ぶ→学び方を組む→小さく試す」の5ステップです
- 研修の教材づくりや進め方の型は外に任せ、「何を直すか」の判断は社内に残します。助成金は要件を満たせば受給できる可能性がありますが、時期に注意が必要です
DX人材の育成は、専任を置かず社長と兼務の1〜2人で、業務の困りごと1つから始められます。最初の1〜3か月の5ステップと、外部に任せる範囲を解説。

この記事でわかること
詳しい人がいないのは、ふつうのことです。 最初から人材をそろえようとせず、業務の困りごと1つから始めれば十分です。
従業員100人以下の企業で、何らかの形でDXに取り組んでいる割合は41.6%です。調査は国内企業の経営層やDX推進部門などが答えたもので、期間は2026年4月17日〜6月12日です。[出典:IPA「DX動向2026」(2026)]
DXに取り組んでいない100人以下の企業では、理由で最も高いのが「自社がDXに取組むメリットがわからない」です。その割合は54.0%です。[出典:IPA「DX動向2026」(2026)]
中小企業基盤整備機構の調査では、DXに取り組んでいる(検討中を含む)中小企業は39.1%でした。前回調査の42.0%とほぼ横ばいです。対象は全国の中小企業の経営者・経営幹部1,000社で、2025年12月に行われました。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」(2026)]
人の育成も同じ状況です。日本商工会議所と東京商工会議所の調査では、従業員のリスキリング(仕事で必要な新しい力を学び直すこと)に「必要性を感じるが、取り組みが十分に進んでいない」企業が66.1%でした。対象は各地の商工会議所の会員企業2,654社で、2026年7〜8月の調査です。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026)]
つまり、必要だと思いながら手が回らない会社が多いのです。入口として、生成AIを使った学びも選べます。全規模の調査で、生成AIを「導入している」企業は2025年度に44.0%でした。2024年度は22.6%でした。[出典:IPA「DX動向2026」(2026)]
メモ
ここでいう「DX人材」は、ITの専門家ではありません。自社の業務をよく知り、その業務とデジタルをつなげられる人のことです。
会社全体で何から始めるかは、中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップで整理しています。
専任を置けない会社では、社長が最初の一人になります。 そのうえで、本業の合間に動ける1〜2人を選びます。
外部から採用するより、業務を知る今の社員を育てるほうが向く場面があります。StartLinkの記事は、既存社員が持つ「業務理解」が強みだと紹介しています。[出典:StartLink「DX人材の育成と研修設計」(2026)]
エクサウィザーズの記事も、自社スタッフを育てる利点として、自社の現状を把握できていることを挙げています。[出典:エクサウィザーズ「DX人材育成の方法を大公開」(2026)]
人材を社内で育てる難しさを示す調査もあります。人材サービスのパーソルホールディングスが2021年に行った調査では、DX推進の障壁の1位が「推進のためのスキルを持った人材を社内で育成できない」で、21.1%でした。対象は従業員30人以上の企業の経営者・IT担当者・人事担当者1,570人で、2021年4月の調査です。古い調査なので、参考としてご覧ください。[出典:パーソルホールディングス(日本の人事部掲載)(2021)]
全員に同じことを求める必要はありません。役割ごとに、学ぶ内容を変えます。次の表は考え方の整理であり、調査結果ではありません。
| 役割 | 担う役目 | 学ぶ内容 | 学ぶ深さ |
|---|---|---|---|
| 社長 | 何を直すか決める | デジタルで何ができるかの全体像 | 判断できる程度 |
| 推進役の1〜2人 | 現場で試し、周りをまとめる | 自社の業務でのツールの使い方 | 自分で試して説明できる程度 |
| 全社員 | 新しいやり方に慣れる | 基本的な使い方と注意点 | 日々の仕事で困らない程度 |
社長が学ぶ目的は、自分で操作できるようになることではありません。「何を直すか」と「どこまで投資するか」を判断できるようになることです。
GMOインターネットのビジネスコンシェルジュの記事は、小規模事業者は経営者自身の学びから始める進め方を紹介しています。[出典:GMOインターネット「DX人材育成とは」(2026)]
社長が学ばないまま任せると、担当者が出した提案を判断しにくくなります。まず社長が全体像を知ることで、担当者も動きやすくなります。
推進役は、次の3点を見て選びます。ここでの時間は、本業と兼ねる前提で考えます。
役職や年齢で決めないでください。関心がある人のほうが、学びが続きます。
AI活用に絞った育て方は、AI人材育成は1業務から|中小企業の進め方5ステップで説明しています。
研修を選ぶ前に、1つの業務を題材に決めます。専任がいなくても回るように、小さな動作で進めます。
ポイント
最初から大きく広げません。例えば「見積書づくりに毎回手間がかかる」のように、困りごとを1つに絞って始めます。
最初に社長が困りごとを決め、次に兼務の一人を選び、最後に小さく試して振り返ります。
まず、日々の業務で一番手間がかかっていることを1つ選びます。すぐに効果が見えそうなものから始めます。
「DXのメリットがわからない」と感じる会社は多いです。メリットを頭で考えるより、自社の困りごとが軽くなるのを見るほうが早く分かります。
社長が決めます。この一つが、以降の学びの題材になります。
選んだ困りごとについて、今の業務の流れと、社内で誰がどこまでできるかを書き出します。棚卸しは、立派な表でなくてかまいません。
次のチェックリストで、書き出す項目を確かめてください。
書き出した内容から、動く一人を選びます。選び方は最初に育てるのは誰か? まず社長、次に兼務の1〜2人で説明した3点を使います。
本人には、まず「この困りごとを軽くする役」と伝えます。大きな役職名は付けません。
学び方は1つに決めず、組み合わせます。エクサウィザーズの記事は、プログラム例としてリスキリング、OJT(仕事をしながら学ぶ方法)、外部研修、実践的なプロジェクトを挙げています。[出典:エクサウィザーズ「DX人材育成の方法を大公開」(2026)]
GMOインターネットの記事も、OJT、Off-JT(仕事を離れて学ぶ方法)、eラーニングの組み合わせを紹介しています。[出典:GMOインターネット「DX人材育成とは」(2026)]
練習台には、生成AIが使えます。ステップ1の困りごとを題材に、文章の下書きを作らせるなど、小さな作業から試します。
学んだことを、ステップ1の困りごとで実際に使います。小さく試し、うまくいった点と残った点を振り返ります。
見るのは、研修を受けた回数ではありません。StartLinkの記事は、受講率ではなく業務への適用度を追うことを勧めています。[出典:StartLink「DX人材の育成と研修設計」(2026)]
うまくいけば、次の困りごとに広げます。うまくいかなければ、ステップ2に戻ります。
研修の教材づくりや進め方の型は外に任せやすく、「何を直すか」の判断は社内に残します。 助成金は、育成の計画を立ててから探します。
外部の力を借りる会社は多くあります。パーソルホールディングスの2021年の調査では、外部人材を何らかの形で活用する企業は67.7%でした。対象は従業員30人以上の企業の担当者1,570人です。[出典:パーソルホールディングス(日本の人事部掲載)(2021)]
次の表は、考え方の整理です。調査結果ではありません。
| 項目 | 外に任せやすいか | 社内に残すか | 理由 |
|---|---|---|---|
| 研修の選定・教材づくり | 任せやすい | 目的だけ伝える | 専門の型があり、社内で一から作る手間が省ける |
| 進め方の型 | 任せやすい | 自社用に直す | 他社の型をそのまま使うと合わないことがある |
| 業務の課題の見極め | 一部だけ | 残す | 現場を知る人にしか分からない |
| 実際の業務への適用 | 助言をもらう | 残す | 毎日使うのは社内の人だから |
| 振り返りの判断 | 助言をもらう | 残す | 続けるかやめるかは経営の判断だから |
「何を直すか」の判断は社内に残し、研修の教材づくりや進め方の型は外に任せやすい仕事です。
制度ありきで計画を立てると、目的がぶれます。先にステップ1〜5で育成の計画を立て、そのあとで使える制度を探します。
人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、要件を満たせば受給できる可能性があります。厚生労働省の資料では、このコースは 令和8年度末までの時限措置 とされています。令和8年度末は2027年3月末です。[出典:厚生労働省・都道府県労働局「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」(2026)]
延長されるかどうかは、確認できていません。助成率や上限額は、最新の案内を労働局などで確認してください。
助成金の確認の順番は、リスキリング助成金とは?中小企業の助成率75%と確認順もご覧ください。
注意
申請の手続きや出す時期には決まりがあるため、研修を始める前に、最新の案内を労働局などで確認してください。
自社に合う育て方を、一緒に整理することもできます。
うまくいかない原因の多くは、進め方で防げます。 この記事の手順のどこで防げるかを、次の表にまとめました。
SHIFT AIの記事は、よくある失敗として、経営層の不関与や単発研修で終わることを挙げています。[出典:AI経営総合研究所(SHIFT AI)「DX人材を社内で育成するには?」(2025)]
| 失敗 | 起きる理由 | 防ぐ所 |
|---|---|---|
| 目的が曖昧になる | 何のために学ぶのか決めていない | ステップ1で困りごとを1つ決める |
| 単発の研修で終わる | 学んだあとの使い道がない | ステップ5で業務に使って振り返る |
| 学んでも実務につながらない | 自社の業務と関係ない題材で学ぶ | ステップ2で今の業務を書き出す |
| 社長が関与しない | 判断する人が学んでいない | 社長が最初の一人になる |
よくあるのは、目的が決まらないまま研修を選ぶ形です。まずステップ1:困りごとを1つ決めるに戻ってください。
始められます。詳しい人をそろえる必要はなく、業務をよく知る人と社長がいれば十分です。まずはステップ1:困りごとを1つ決めるから進めます。
進められます。社長が最初の一人になり、本業の合間に動ける1〜2人を選びます。選び方は兼務で任せる人の選び方で説明しています。
研修の教材づくりや進め方の型は任せやすいです。「何を直すか」の判断は社内に残します。表は任せる部分と残す部分にあります。
要件を満たせば受給できる可能性があります。ただし 令和8年度末までの時限措置 で、延長は確認できていません。育成計画を先に立ててから探してください。詳しくは助成金は計画を立ててから探すをご覧ください。
受講した回数ではなく、業務で使えたかどうかを見ます。ステップ1で決めた困りごとが軽くなったかが目安です。進め方はステップ5:小さく試して振り返るで説明しています。
自社に合う進め方を相談したい方は、カクヤクAIXの案内をご覧ください。