この記事でわかること
- 介護DXは大きなシステムを入れることではありません。「いちばん困っている業務」を1つ選び、小さく見直すことから始められます。
- 小さな事業所の最初の1つは、記録・申し送りなど職員の伝達業務が選びやすい候補です。ツールの前に、紙・様式の段階で「口頭で残すこと/書いて残すこと」を分けます。
- AIやタブレットは下書き・整形などの作業を担い、利用者の状態の判断と記録の最終確認は人が行います。補助は要件を満たせば受けられる可能性があり、最初の連絡先は都道府県です。
介護DXは機器を入れることではありません。小さな事業所は記録・申し送りの見直しから始められます。決め方5ステップと人が確認する点を解説。

この記事でわかること
介護DXは、機器を入れることではなく、業務の流れを見直すことです。高いシステムを最初から入れる必要はなく、困りごとを1つ選んで小さく始められます。
介護DXは機器を入れることではなく業務の流れを見直すことで、記録・申し送りなどの領域から困りごとを1つ選んで小さく始められます。
ポイント
最初から全部を変えようとせず、「いちばん困っている業務」を1つだけ選びます。
介護DXは、タブレットや見守り機器を買うことと同じではありません。機器は道具です。道具を入れたあとに、仕事の進め方が変わって初めて介護DXになります。
LINE WORKS株式会社の記事は、「機器の導入は出発点で、データをケアや働き方の見直しに使うところまでが介護DXです」と述べています。 株式会社SHIFT AIの記事も、「ツールを導入するだけで業務が自動的に変わるわけではありません」と書いています。 [出典:LINE WORKS株式会社「介護DXとは|国の施策・メリット・進め方と補助金を解説」(2026)] [出典:株式会社SHIFT AI「介護DXツールおすすめ比較【2025年版】」(2025)]
理由は、介護の担い手が減り、高齢者が増える状況が長く続くとみられるからです。厚生労働省のWebマガジンによると、この状況は団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年ごろまで続くとみられます。紙の書類のやりとりが多いことも、課題として挙げられています。 [出典:厚生労働省 Webマガジン「介護DXの新たな取り組み」(2026)]
DXに取り組む中小企業の数字もあります。IPA(情報処理推進機構)の調査では、従業員100人以下の企業で何らかのDXに取り組む割合は41.6%です。 取り組まない理由で最も高いのは、「自社がDXに取組むメリットがわからない」の54.0%です。 対象は国内企業1,799社で、調査期間は2026年4月17日〜6月12日です。介護業界に限った数字ではありません。 [出典:IPA「DX動向2026」(2026)]
介護DXで見直せる領域は、記録、申し送り、見守り、シフト、請求、ケアプランなどです。下の表は、職員が何で楽になるかと、小さな事業所の最初の1つに向くかを整理したものです。製品名は載せていません。
| 領域 | 職員の何が楽になるか | 最初の1つに向くか |
|---|---|---|
| 記録 | 手書きと転記の手間が減る | 向きやすい |
| 申し送り・情報共有 | 伝え漏れや聞き直しが減る | 向きやすい |
| 見守り | 巡回の負担が軽くなる | 機器の準備が要るため、困りごとを見てから |
| シフト・勤怠 | 作成と集計の手間が減る | 困りごとが大きければ候補 |
| 請求 | 入力の重なりが減る | 記録がそろってから |
| ケアプラン | 書類のやりとりが減る | 他事業所との連携が前提 |
最初の1つは、記録・申し送りが選びやすい候補です。申し送りは毎日あり、紙・口頭・転記が重なりやすいからです。ただし、最初に効く業務は事業所の類型で違うので、決めつけないでください。
記録・申し送りは最初の1つに選びやすい候補ですが、効く業務は事業所の類型で違い、紙を残したまま端末を配ると二重入力が残ります。
あわせて読みたい:日報AIで減らせる手間は2つ|2週間で試す5ステップ
株式会社一創の記事は、特養・老健・訪問・通所など類型ごとに、最初に効く業務が違うと述べています。 [出典:株式会社一創「介護DXの事例を施設類型別に分解」(2026)]
株式会社Fyveの記事によると、同社が支援したデイサービスでは、記録業務のタブレット化で1日あたり約45分の時間短縮がありました。 これは発行者自身の支援事例で、第三者の検証はありません。施設名・規模・換算の前提も記載されていません。参考として見てください。 [出典:株式会社Fyve「デイサービスのDX、何から始める?現場で見えた優先順位」(2026)]
申し送りの見直しで変わる点を、伝え方・書き方・確認の仕方に分けて整理します。数字ではなく、やり方の違いで見ます。
| 項目 | 今 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 伝え方 | 口頭で全部を伝える | 特記事項だけを伝える |
| 書き方 | 紙に書き、あとで別の様式へ転記する | 1回書けば、そのまま共有される |
| 確認の仕方 | 聞き直す、探す | 決めた場所を見ればわかる |
この見直しで期待できるのは、職員の負担が軽くなること、情報共有が早くなること、ケアの伝わり方がそろうことです。
あわせて読みたい:介護のAI活用|記録・申し送りを小さく試す6ステップ
失敗しやすいのは、紙の様式を残したまま端末だけを配ることです。株式会社一創の記事は、これを失敗の型として挙げています。LINE WORKS株式会社の記事も、紙とデジタルの二重入力をつまずきの一つとしています。 紙に書いて、さらに端末にも入れる形では、仕事は減らず増えます。 [出典:株式会社一創「介護DXとは?着手順序と投資回収を制度対応から逆算する進め方【2026年度版】」(2026)] [出典:LINE WORKS株式会社「介護DXとは|国の施策・メリット・進め方と補助金を解説」(2026)]
注意
紙の様式をやめる日を決めないと、二重入力は残ります。やめる様式を先に決めてから、端末を使い始めます。進め方はステップ4:1つだけ、小さく試すで説明します。
最初の1つは、社長が現場を見て、職員の声を聞き、1つだけ小さく試して決めます。全部を一度に変えず、結果を見て広げるか見直すかを決めます。
現場を回ることから数字で判断することまで、5段階を順に進めて最初の1つを決めます。
社長自身が現場を回ります。時間がかかっている所や、同じ内容を何度も書き写している所に印をつけます。 見るのは、人ではなく仕事の流れです。気づいたことは、その場でメモに残します。
次に、職員へ「何が一番面倒か」を聞きます。社長が見えない困りごとは、現場にあります。 LINE WORKS株式会社の記事は、現場の声を聞かないことをつまずきの一つに挙げています。 [出典:LINE WORKS株式会社「介護DXとは|国の施策・メリット・進め方と補助金を解説」(2026)]
ツールを選ぶ前に、申し送りの中身を整理します。ここは紙とペンでできます。
線引きができると、端末に何を入れるかも決めやすくなります。
試すのは1つの業務だけです。複数の領域を同時に変えると、何が効いたのかがわからなくなります。 株式会社一創の記事は、導入前2週間の実測を比較対象にして、1フロア1か月で小さく試すことを勧めています。 [出典:株式会社一創「介護DXの事例を施設類型別に分解」(2026)]
選ぶときは、次の3つの観点で見ます。
大がかりな指標は要りません。測る項目は2〜3つに絞ります。
株式会社一創の記事は、導入3か月で間接業務の時間が減っていなければ、設定・運用・製品を見直すとしています。 [出典:株式会社一創「介護DXとは?着手順序と投資回収を制度対応から逆算する進め方【2026年度版】」(2026)]
次のチェックリストで、最初の1つを選ぶ前に確かめてください。
メモ
試した結果を見て、ほかの業務に広げるか、やり方を見直すかを決めます。うまくいかなくても、1つだけの試しなら現場の混乱は小さく済みます。
自社の最初の1つを一緒に選びたい方は、カクヤクAIXの無料相談をご利用ください。
AIに任せてよいのは、下書きや整形などの作業です。利用者の状態の判断と、記録の最終確認は人が行います。
AIは下書きと整形を担い、書いた本人の事実確認と責任者の最終確認は人が行います。
ソウゾウ合同会社の記事は、AIは「判断」ではなく「作業」を肩代わりすると述べています。事実確認、専門的な判断、最終確認と責任は人が担います。 IPAの調査では、生成AIを導入している企業は2025年度に44.0%です。2024年度は22.6%でした。全規模の数字で、中小企業に限りません。 [出典:ソウゾウ合同会社「介護のAI活用完全ガイド|できること・事例・導入と補助金【2026】」(2026)] [出典:IPA「DX動向2026」(2026)]
人の確認は、誰がいつ行うかまで決めておきます。下の表は例です。職種の指定ではなく、事業所に合わせて決めてください。
あわせて読みたい:看護記録のAIで任せる所と人が行う所|5ステップ
| 確認すること | 誰が | いつ |
|---|---|---|
| 利用者の状態の判断 | 看護・介護職員 | 記録を書く前 |
| AIが整えた文の事実確認 | 書いた本人 | 下書きを受け取った直後 |
| 記録の最終確認 | 責任者 | 申し送りに出す前 |
年配の職員には、増える仕事より先に、減る仕事を伝えます。
注意
外部のAIに入れる情報は、使う前に範囲と管理ルールを決めます。利用者の氏名など個人情報を入れてよいかは、ルールができてから判断します。
費用の補助は、要件を満たせば受けられる可能性があります。最初の連絡先は都道府県です。受けられるかどうかは、条件と時期を確認してから決まります。
補助は要件を満たせば受けられる可能性があり、最初の連絡先は事業所のある都道府県で、国の施策は名前を知っておく程度で足ります。
厚生労働省の資料によると、介護テクノロジーの導入補助は、国が制度を創設し、都道府県が実施しています。 令和7年度補正予算の事業では、見守り機器・介護記録ソフト・インカムを集中的に支援しています。 負担割合は、介護テクノロジー等の導入で、国と都道府県が合わせて5分の4です。事業者は5分の1です。 [出典:厚生労働省 老健局高齢者支援課「テクノロジー等を活用した介護現場における生産性向上の重要性とその施策について」(2026)]
令和8年度の概算要求の資料にも、介護テクノロジー導入支援事業があります。これは予算が成立する前の資料です。成立した予算額は、確認できていません。 [出典:厚生労働省 老健局「令和8年度概算要求の概要(老健局)の参考資料」(2025)]
補助を調べる前に
国の施策は、名前を知っておく程度で足ります。最初の1つを決めるうえで、先に深く調べる必要はありません。
介護情報基盤は、2026年4月から順次始まっています。準備が完了した自治体から始まるため、開始時期は自治体ごとに違います。 このほか、LIFEとケアプランデータ連携システムという仕組みがあります。 [出典:厚生労働省 Webマガジン「介護DXの新たな取り組み」(2026)]
注意
補助率・上限額・受付期間は、都道府県ごとに違います。この記事では確認できていないため、最新の公式情報で確かめてください。
Q1:小さな事業所でも介護DXは必要ですか? A:必要かどうかは、困りごとがあるかで決まります。困りごとのある業務から、小さく見直せば足ります。背景はなぜ今、必要と言われるのかに書きました。
Q2:高いシステムを入れないと始められませんか? A:始められます。最初は紙の様式や申し送りの中身を整理するだけでもできます。考え方は「機器を入れること」ではない、手順はステップ1:現場を回って困りごとを書き出すをご覧ください。
Q3:パソコンが苦手な年配の職員がついてこられるか心配です。 A:「やめること」を先に決め、最初は1つだけ試すと伝えます。詳しくは年配の職員に「仕事が増える」と思わせない伝え方で説明しています。
Q4:失敗しやすいのはどんなときですか? A:資料に挙がる失敗は、次のとおりです。
Q5:AIが書いた記録が間違っていたら誰の責任ですか? A:最終確認は人が行います。書いた本人が事実を確かめ、責任者が最後に確認します。置き場所は人が確認するのは3か所をご覧ください。
Q6:補助金は使えますか? A:要件を満たせば、受けられる可能性があります。まず都道府県に確認してください。窓口と調べ方は補助の窓口は都道府県に書きました。
Q7:他の事業所の成功事例を知りたい。 A:事例は、出典が確かな数字だけを使います。人員配置や記録の様式で条件が違うため、他所の数字がそのまま当てはまるとは限りません。事業所の類型に合わせて、ステップ4:1つだけ、小さく試すで小さく確かめます。
記録・申し送りの見直しの進め方を相談したい方は、カクヤクAIXにご相談ください。