看護記録のAIで任せる所と人が行う所|5ステップ

看護記録のAIは、文字起こし・下書き・形の整えに使えます。事実の確認と記名は看護師が行います。情報の決まりを作り、1種類で試す5ステップを解説。

この記事でわかること

  • AIに任せやすいのは、文字起こし・下書き・形の整えです。観察した事実の確認、アセスメント、判断、最後の確認と記名は看護師が行います。
  • 患者さん・利用者さんの名前や生年月日は、外部の無料AIに入れません。
  • まず今の電子カルテ・記録ソフトにAI機能があるか販売元に聞き、1種類の記録だけで小さく試します。

看護記録のAIで、何が楽になるのか

AIが楽にするのは「書く手間」です。診断や判断を代わりにするものではありません。効果は、導入の前後で自分の施設の記録時間を計って確かめます。

AI活用に取り組んだ事業者に、目的を聞いた調査があります。「業務時間の節減」を挙げた事業者は84.5%でした。対象は取り組んだ事業者1,685社で、複数回答です。全業種の数字で、医療・介護に限りません。[出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]

ポイント

看護記録のAIは、書く作業を助ける道具です。観察した内容が正しいかを決めるのは、現場にいた看護師です。

AIにできること

AIは、話した内容や箇条書きのメモから、記録の下書きを作れます。記録の形に合わせて整えたり、長い内容の要点をまとめたりもできます。

声を文字にする(文字起こし)、電子カルテの記録から看護サマリの下書きを作る、といった使い方があります。

効果は自分で計って確かめる

他社の「何%短くなった」という数字は、自社に当てはまるとは限りません。そこで、導入の前と後で、1件あたりの記録時間を自分たちで計ります。

計り方はステップ5:1件あたりの記録時間を前後で計るで説明します。浮いた時間を、患者さんと向き合う時間や残業の削減に回せたかも、あわせて見ます。

AIに任せる部分と、人が行う部分はどこで分かれるか

線引きは、シンプルです。文字にする・下書きを作る・形を整える作業はAIに任せます。事実の確認、アセスメント(患者さんの状態を見立てること)、判断、最後の確認と記名は人が行います。

たとえば、夜勤明けの申し送りを考えます。口頭で話した内容を、AIが箇条書きに整えます。そこに抜けがないかを見て、重要な点を足すのは看護師です。

記録の作業AIに任せる人が行う
声の文字起こし任せられる誤変換がないか確かめる
記録の下書き事実のメモから案を作る観察した事実と合うか確認する
記録の書き方の型への整え(SOAP・FDARなど)形式に合わせて整える内容が形式の中で正しい場所にあるか見る
申し送りの要点まとめ要点を拾って並べる抜け漏れがないか確かめ、足す
アセスメント・判断任せない看護師が行う
最後の確認と記名任せない看護師が行う

AIが作った記録には、誤変換や抜けが出ることがあります。そのため、記録に残す前に、看護師が必ず目を通します。

注意

急変時の判断や、臨床の判断はAIに任せられません。AIの文章をそのまま記録にしないでください。

書く手間をAIで減らす考え方は、日報AIで減らせる手間は2つ|2週間で試す5ステップもご覧ください。

電子カルテ・記録ソフトのAI機能、汎用の生成AI、専用サービス。何を比べて選ぶか

新しいものを入れる前に、まず今使っている電子カルテや記録ソフトにAI機能があるかを、販売元に聞きます。そのうえで、観点を決めて比べます。

4つのやり方の違い

やり方は大きく4つあります。

  • 今の電子カルテ・記録ソフトのAI機能を使う
  • 汎用の生成AIで下書きを作る
  • 専用の音声入力サービスを使う
  • 文例を選んで記録を作る方式を使う

1つ目は、今の記録欄にそのまま入れられる場合があるのが強みです。入るかどうかは販売元に確かめます。2つ目は、手軽に始められますが、入れる情報に気をつけます。3つ目は、話した内容を記録にしやすい一方、今のソフトとのつながりを確かめます。4つ目は、声ではなく選んで作るやり方です。

比べるときの観点

製品名では比べません。自社で困りそうな点を、観点にして並べます。

観点確かめること
専門用語の辞書登録薬の名前や病名を、正しく文字にできるか
騒がしい場所での聞き取り処置室やナースステーションで聞き取れるか
記録の形への整えSOAPやFDARなど、自社で使う記録の型に整うか
今のソフトとのつながり記録欄に直接入るか、貼り付けが必要か
電波がない場所での動き訪問先などで使えるか
直しやすさ間違いを、すぐ直せるか

費用の不安もあるはずです。AIの導入の阻害要因で最も高かったのは、「導入にあたっての高コスト」の46.9%でした。中小機構の調査で、全業種の数字です。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]

メモ

上の観点は、AIの記録サービスを紹介する記事で多く挙がる論点を拾ったものです。自社の現場で試して、何を重くみるかを決めます。

記録の型とルールの決め方は、介護記録は型とルールで揃える、個人任せでない仕組みづくりもご覧ください。

患者さんの情報を守りながら、小さく試す手順

先に院内のルールを決め、そのあと1種類の記録だけで試します。5つのステップで進めます。

注意

患者さんの名前や生年月日を、外部の無料AIに入れてはいけません。院内の個人情報のルールや国のガイドラインに合うかは、販売元や情報管理の担当に確かめてください。

まず今のソフトにAI機能があるか聞く

電子カルテや記録ソフトの販売元に、AI機能があるかを聞きます。ある場合は、使える範囲と費用、情報の扱いも確かめます。

新しいものを入れる前に聞くのは、無駄な二重投資を防ぐためです。

入れてよい情報の決まりを作る

試す前に、入れてよい情報と入れない情報を決めます。紙1枚にして、全員で共有します。

決めておくこと

  • 名前・生年月日は入れない
  • 仮名やイニシャルに置き換える
  • 観察した事実だけを箇条書きにして、下書きを頼む
  • 使ってよいAIの種類を決める

1種類の記録だけで試す

いきなり全部の記録で使いません。まずは申し送りのように、書く量が多く、形が決まっている記録を1種類選びます。

社長の目線では、効果が見えやすく、失敗しても影響が小さい記録から始めるのが安全です。

看護師が必ず確かめて直す

AIの下書きは、看護師が1行ずつ見て直します。誤変換と抜けがないか、観察した事実と合っているかを確かめます。

確認と記名は、人が行います。この工程を、試す条件に入れておきます。

1件あたりの記録時間を前後で計る

AIを使う前と後で、1件あたりの記録時間を計ります。同じ種類の記録で、同じ人が比べると、違いが分かります。

時間のほかに、直した量や、看護師の負担感も聞きます。そのうえで、続けるか、やめるか、広げるかを決めます。

試すときにつまずきやすい点と対策

つまずきは、確認の抜け、無料AIへの入力、聞き取りの3つに集まります。どれも、試す前に条件へ入れておけば防げます。

たとえば、誤変換のまま記録に残ると、後から読む人が誤解します。看護師の確認を手順に入れておけば、防げます。

つまずき対策
誤変換や抜けをそのまま記録に残す看護師が確かめて直す工程を手順に入れる
無料のAIに利用者の情報を入れてしまう入れてよい情報を紙1枚にして共有する
場所によって声が聞き取れない、周りに漏れる静かな場所で試し、聞き取りの確認を試す条件に入れる

AI活用を何から始めるか全体を見たい方は、中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップもご覧ください。

よくある質問

看護記録をAIに書かせて大丈夫ですか

下書きは任せられますが、事実の確認と記名は看護師が行います。アセスメントや判断も人の仕事です。くわしくはAIに任せる部分と、人が行う部分はどこで分かれるかをご覧ください。

患者さんの名前や病状をAIに入れてもよいですか

名前や生年月日は、外部の無料AIには入れません。仮名やイニシャルにして、観察した事実だけを入れます。院内のルールに合うかは、販売元や情報管理の担当に確かめます。くわしくはステップ2:入れてよい情報の決まりを作るをご覧ください。

高い専用システムを入れずに試せますか

まず、今使っているソフトにAI機能がないかを、販売元に聞きます。そのうえで、汎用の生成AIで下書きを作る方法もあります。ただし、入れる情報には気をつけます。くわしくはステップ1:まず今のソフトにAI機能があるか聞くをご覧ください。

介護事業所なら補助を受けられますか

要件を満たせば、補助を受けられる可能性があります。国が制度を作り、申請先は都道府県です。国の資料では、介護記録ソフトも集中的に支援する機器の一つに挙げられています。対象になる製品かどうかは、都道府県に確認してください。受付期間や申請の方法は、事業所のある都道府県に確認してください。

病院・診療所は、この補助の対象ではありません。[出典:厚生労働省老健局高齢者支援課「テクノロジー等を活用した介護現場における生産性向上の重要性とその施策について」(2026)]

令和8年度の介護テクノロジーの導入支援は、概算要求(予算が決まる前の要求の段階)で示されたものです。決まった予算とは受け取らないでください。[出典:厚生労働省老健局「令和8年度概算要求の概要(老健局)の参考資料」(2025)]

AIの導入は、中小企業ではどれくらい進んでいますか

AIを「既に導入している」中小企業は20.4%です。対象は回答した中小企業1,647社です。全業種の数字で、医療・介護の数字ではありません。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]

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