この記事でわかること
- 報告書の下書きはAIに任せられます。何を載せるかの判断と、数字の確認は人が持ちます。
- 最初の1本は、材料がそろい型が決まった月次・案件報告から。今ある汎用の生成AIで1か月試して決めます。
- 機密・個人情報は入れない、数字は元データと照合する。この2点を社内ルールにしておきます。
報告書作成のAI活用は、整理・要約・文章化を任せ、判断と数字の確認は人が持ちます。月次報告から1か月試す6ステップと社内ルールを解説。

この記事でわかること
文章にまとめる・要約する・体裁を整える時間は減らせます。ただし全部が自動になるわけではなく、結論・理由・次の打ち手は人が決めます。
省力化投資でAIを使う目的で最も多いのは、時間の節約です。「業務時間の節減」を挙げた事業者は84.5%でした。対象は、AIの活用に「取り組んだ」事業者1,685社で、複数回答です。[出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]
ただし、取り組んだ事業者はまだ多くありません。2019年以降の省力化投資でAIを活用した割合は、約3割です。対象は5,645社です。[出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]
どれくらい時間が減るのか、数字も見ておきます。パーソル総合研究所の調査では、生成AIを使った作業の時間は平均16.7%減りました。1週間あたり26.4分にあたります。[出典:パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026)]
この数字は、報告書づくりに限ったものではありません。同じパーソル総合研究所の調査では、実際に業務時間が減ったのは利用者の約4人に1人でした。対象は全国の就業者で、2025年10月のオンライン調査です。[出典:パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026)]
自社の報告書でどうなるかは、試して確かめます。
見込める効果は2つです。作成時間が短くなること。書き方のばらつきが減ることです。
ポイント
報告書は、記録ではなく「判断のための成果物」です。日報や議事録とは違い、結論・理由・次の打ち手を人が決める必要があります。
整理・要約・文章化はAIに任せます。何を入れるかの判断と、事実の確認は人が持ちます。
たとえば月次報告なら、売上の数字を並べて文章にする所はAIが得意です。数字がなぜ動いたかを書き、来月の打ち手を決める所は人の仕事です。
分担は次の表のとおりです。
| 作業 | AI | 人 |
|---|---|---|
| 材料の整理・要約 | 得意 | 抜けがないか見る |
| 箇条書きメモの文章化 | 得意 | 言い回しを整える |
| 載せる内容の取捨選択 | 案を出す | 決める |
| 数字・固有名詞の確認 | 間違えることがある | 元データと照合する |
| 結論・次の打ち手 | 案を出す | 決める |
AIには、もっともらしい誤りが出ることがあります。数字の間違い、事実と違う内容、話のつじつまが合わない文章です。照合のやり方はステップ5:数字と固有名詞を元データと照合するで説明します。
社長が報告書を受け取る側のときは、次の点を見ます。
数字の出どころが分かれば、確認が早くなります。所感が本人の言葉でなければ、判断の責任がどこにあるか分からなくなります。
最初は1つの報告書だけを、1か月かけて試します。材料づくりから始め、AIに渡した後は人が照合し、最後に元のやり方と比べます。
注意
ステップ5の照合は省かないでください。AIの文章は読みやすいので、誤りに気づきにくくなります。
毎月同じ形で出る月次報告や案件報告から始めます。材料がそろい、型が決まっているものが向いています。
| 報告書 | 向き・不向き |
|---|---|
| 月次報告 | 向いている。毎月同じ形で、材料もそろう |
| 案件報告 | 向いている。項目が決まっていれば試しやすい |
| 日報・週報 | 回数が多いので、型が決まれば試せる |
| 営業報告 | 数字と所感が混ざる。所感は本人が書く |
| 調査報告 | 毎回内容が違う。慣れてから試す |
AIに渡す材料の質で、下書きの質が決まります。現場のメモと数字を、誰がいつ集めるかを先に決めます。
Excelの数字は、表や箇条書きにしてから渡します。データを整えてから渡すと、使いやすい下書きになります。
目的・読者・出力形式・文字数・文体を、依頼文に書きます。
依頼文の例です。
次の材料から、社長向けの月次報告書を書いてください。
目的は、今月の状況を3分で把握してもらうことです。
形式は「結論」「理由」「来月の対応」の3つの見出しにしてください。
全体で800字程度、です・ます調でお願いします。
数字は渡した材料のものだけを使い、推測は書かないでください。
箇条書きのメモを、文章にしてもらいます。一度で整うことは少ないので、ある程度整えてから、直してほしい点を頼みます。
長い報告書は、章ごとに分けて頼みます。一度に全部を頼むより、確認もしやすくなります。
下書きの数字・人名・会社名を、元のデータと1つずつ見比べます。
確認は2段階に分けます。まず担当者が元データと照合します。次に社長が、数字の出どころと所感を見ます。
1か月たったら、自社で記録した結果で比べます。見る点は次の3つです。
AIを使った回と、これまでのやり方の回を並べて、続けるかどうかを決めます。
まず今ある汎用の生成AIで試します。足りない所が見えてから、有料のツールを考えます。
AIを入れるときの壁は、費用です。AI導入の阻害要因で最も多かったのは「導入にあたっての高コスト」で、46.9%でした。対象は中小企業で、有効回答は1,668社、複数回答です。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]
報告書の自動作成の方法を、ITトレンドは次の3つに整理しています。
| 道具 | 向いている作業 | 注意点 |
|---|---|---|
| Excelマクロ | 定型の集計・転記 | 担当者に依存しやすい |
| 汎用の生成AI | 要約・構成案・下書き | 正確性の確認と、機密情報の扱いに注意 |
| 報告書の専用ツール | 入力から帳票出力までをまとめて効率化 | 製品で対応範囲・料金が違う |
これとは別に、Office付属のAIもあります。箇条書きを文章に整えるときに使えます。
選ぶときに見る5項目
使い始める前に、入れてはいけない情報と、確認する人を1枚に決めます。
守ることは3つです。1つ目は、機密情報と個人情報を入れないことです。取引先の名前や、社員の個人情報が当てはまります。
2つ目は、入力した内容が学習に使われない設定かを確認することです。3つ目は、提出先によってはAIを使ったことの開示を求められる点です。提出前に、先方の決まりを調べます。
間違いが見つかったときの対応も、決めておきます。誰に知らせ、誰が直し、いつまでに出し直すかです。
次のチェックリストで、社内ルールが決まっているか確かめてください。
整理・要約・文章化は任せられます。載せる内容の判断と事実の確認は、人が持ちます。くわしくはAIに任せる所と、人が見る所はどこかをご覧ください。
まずは、今ある汎用の生成AIで1か月試すのがおすすめです。足りない所が見えてから考えます。くわしくは道具は何を選ぶか、有料ツールを買う前に決めることをご覧ください。
機密・個人情報は入れません。数字は、元データと1つずつ照合します。くわしくはステップ5:数字と固有名詞を元データと照合すると機密情報の扱いと社内ルールを先に決めるをご覧ください。
報告書は、判断のための成果物です。記録だけでなく、結論・理由・次の打ち手を人が決める必要があります。