この記事でわかること
- 物流DXは、大きなシステムを入れることではなく、電話・FAX・紙の伝票のうち「毎月必ず起きる1つ」から小さく試すことです
- 最初の1つは「記録の量」「ミスの重さ」「担当者の数」の3つの問いで社長が決め、受注内容の確認や配車の最終決定など「人が確認する所」は残します
- 社内に担当を置けない、最初の1つが決まらない場合は、外部の伴走支援を使う手があります。使う場面と自社で進めてよい場面は章の中で整理します
物流DXは大きなシステム導入ではなく、電話・FAX・紙の「毎月必ず起きる1つ」から小さく試す取り組みです。3つの問いで決める手順と、人が確認する所の残し方を解説します。

この記事でわかること
この記事でわかること
結論
物流DXは、大きなシステムを一度に入れることではありません。電話・FAX・紙の仕事のうち、1つから変えれば始められます。
国土交通省は、物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と説明しています。ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)の記事での紹介です。[出典:ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)「物流DXとは?2024年問題から考える進め方・事例・単なる効率化との違い」(2026)]
運送業の解説をしている一創は、紙を画面に置き換えるだけのものを「デジタル化」と呼んでいます。仕事のやり方まで見直すものを「DX」と呼び、分けています。[出典:株式会社一創「運送業のDXとは?2024年問題後の課題とデジタル化の進め方・システム導入の判断を解説」(2026)]
背景には、ドライバーの時間外労働に上限が設けられた「2024年問題」があります。人手不足も続いています。
荷物が小口になり、届ける回数が増えている流れもあります。少ない人数で回すために、電話や紙に頼った仕事を見直す会社が増えています。[出典:ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)「物流DXとは?2024年問題から考える進め方・事例・単なる効率化との違い」(2026)]
取り組む領域は、大きく「受注」「配車」「運行」「点呼」「請求」の5つに分かれます。一創がこの五つを対象の業務として挙げています。[出典:株式会社一創「運送業のDXとは?2024年問題後の課題とデジタル化の進め方・システム導入の判断を解説」(2026)]
受発注の管理、配車の管理、車の位置をつかむ動態管理、倉庫の管理など、仕組みの種類は多くあります。しかし全部は要りません。自社で困っている所だけで足ります。
在庫のやりとりから見直したい方は、在庫管理はエクセルのままで大丈夫?見直しの6つのサインもあわせてお読みください。
物流DXで期待されるメリットは、次の3つです。
結論
公的な調査を見ると、DXに取り組んでいる中小企業は半数に届きません。「うちだけ遅れている」わけではありません。
IPA(情報処理推進機構)の調査では、従業員100人以下の企業でDXに取り組む割合は41.6%でした。[出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか」(2026)]
調査の条件
DXに取り組んでいない100人以下の企業が挙げた理由は、「自社がDXに取組むメリットがわからない」が最も高く、54.0%でした。[出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか」(2026)]
中小機構の調査では、DXに取り組んでいる企業(「既に取組んでいる」「取組みを検討している」)は39.1%でした。前回調査の42.0%とほぼ横ばいです。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)アンケート調査報告書」(2026)]
ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)は、中堅・中小の運送会社がつまずく課題を挙げています。[出典:ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)「物流DXとは?2024年問題から考える進め方・事例・単なる効率化との違い」(2026)]
| 進まない理由 | 小さく試すと軽くなる点 |
|---|---|
| 配車担当者の高齢化と属人化 | ベテランの確認を残したまま、一部の業務だけ変えられる |
| 兼務で改善に使える時間がない | 1つの業務に絞るので、手間が小さい |
| 投資対効果が見えにくい | 1か月試して、続けるかを決められる |
結論
最初の1つは、3つの問いで社長が決められます。電話の受注、FAXの配送指示、紙の伝票、在庫のやりとりが候補です。
一創は、判断の分岐点を台数ではなく「記録の量と担当者の数」だとしています。一創は着手の順序も、受注、配車、運行、点呼、請求の順で整理しています。[出典:株式会社一創「運送業のDXとは?2024年問題後の課題とデジタル化の進め方・システム導入の判断を解説」(2026)]
次のチェックリストで、候補の業務が3つの問いに当てはまるか確かめてください。
GMOインターネット運営の記事も、毎月必ず発生する業務からデジタル化することを進め方の一つに挙げています。[出典:ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)「物流DXとは?2024年問題から考える進め方・事例・単なる効率化との違い」(2026)]
まず、電話・FAX・紙で行っている仕事を全部書き出します。受注の電話、配送指示のFAX、紙の伝票、在庫のやりとり、請求書などです。
きれいにまとめなくて構いません。社長と配車担当者で、思いつくものを紙に並べてください。
書き出した仕事に、先ほどのチェックリストを当てはめます。3つの問いに多く当てはまる仕事が、最初の1つです。
AIを使った進め方は、物流AIは何から?最初の1業務を選ぶ5ステップで説明しています。
迷ったときは、毎月必ず起きる仕事を選んでください。試す回数が多く、結果が早く出ます。
絞った仕事は、全員で一度に切り替えません。LINE WORKSの記事は、一部の車両・人から紙と並行して試すことを勧めています。[出典:LINE WORKS「物流DXとは|動態管理・配車管理システムの違いと進め方、補助金を解説」(2026)]
紙を残しておけば、うまくいかないときに元へ戻せます。慣れた人から始めるのも一つの方法です。
試して1か月たったら、続けるか、広げるか、やめるかを決めます。見るのは、入力の手間、ミスの数、現場の声です。
ここは社長の判断で決めてください。やめる判断も、小さく試したからこそできます。
結論
デジタルにしても、ベテランの確認は捨てません。受注内容、配車の最終決定、取引先への回答の3か所は、人が確認する所として残します。
電話の聞き間違いや配車のミスを止めてきたのは、ベテランの確認です。画面に入力できても、その確認が消えると、ミスはそのまま先へ進みます。
そこで、次の表のように「人が確認する所」を先に決めます。
| 業務 | 現在のやり方 | デジタル化後 | 人が確認する所 |
|---|---|---|---|
| 受注 | 電話で聞いてメモする | 受注内容を入力して共有する | 受注内容の最終確認 |
| 配車 | 担当者が紙や頭の中で組む | 配車表を画面で共有する | 配車の最終決定 |
| 回答 | 電話で取引先に伝える | 決まった内容を共有して伝える | 取引先への回答 |
つまずきやすいのは次の2つです。
福岡県の運送会社、柳川合同は「DX」という言葉を使わない方針です。紙で行う仕事は、無理にデジタル化しない方針でもあります。従業員が自分で改善を続けられる仕組みを目指しています。[出典:Seizo Trend(ビジネス+IT/SBクリエイティブ)「【単独】DXは禁句、紙も残す…福岡の運送会社が見つけた、中小企業DXの「意外な正解」」(2026)]
紙のほうが早くて確実な仕事は、残してよいのです。デジタルにする仕事を選ぶのも、社長の仕事です。
注意
受発注をメールやPDFでやりとりするようになると、その電子データの保存ルールを確認する必要があります。電子帳簿保存法(国税庁の電子取引データのルール)が関わります。
国税庁のパンフレットによると、基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の方などは、「日付・金額・取引先」で検索できる要件を満たさなくてよいとされています。データのダウンロードの求めに応じられることが条件です。[出典:国税庁「電子取引データを適切に保存できていますか?」(2024)]
改ざんを防ぐ措置と、画面やプリンタの備え付けは、引き続き必要です。
要件どおりに保存できなかった場合の扱いも、国税庁が示しています。所轄税務署長が相当の理由があると認めることと、税務調査でダウンロードや書面の提示の求めに応じられることの、両方が必要です。[出典:国税庁「【国税庁の取組紹介】電子帳簿保存」(2025)]
PDFで受け取った請求書を紙に印刷しても、データそのものの保存は必要です。自社が対象かどうかは、税理士か所轄の税務署に確認してください。
結論
担当者を置けて、最初の1つも決まっているなら、自社だけで進められます。置けない、決まらないなら、外部の伴走支援が役に立ちます。
| 見る点 | 自社だけで進める | 伴走支援を使う |
|---|---|---|
| 社内の担当 | 担当を置ける | 置けない |
| 改善に使える時間 | 兼務でも確保できる | 兼務で時間が取れない |
| 最初の1つ | 決まっている | 決まらない |
社内に担当を置けて、最初の1つも決まっている場合は、自社で進められます。これまでの章の3つの問いとステップで足ります。
ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)は、兼務で改善に使える時間が足りないことを、つまずきやすい課題に挙げています。[出典:ビジネスコンシェルジュ(GMOインターネット運営)「物流DXとは?2024年問題から考える進め方・事例・単なる効率化との違い」(2026)]
一創は、社内にDXの担当を置けない運送会社は、外部への委託で実務を補えるとしています。[出典:株式会社一創「運送業のDXとは?2024年問題後の課題とデジタル化の進め方・システム導入の判断を解説」(2026)]
外部に任せるのは、最初の1つの選び方と、試す準備までです。確認の判断と、取引先との約束は、自社に残します。
外部の支援の種類は、AIコンサルと伴走支援の違い|選び方と契約前の質問で比べています。
元請から電子データでの対応を求められる場合があることも、一創は挙げています。取引先の求めも、最初の1つを選ぶ材料になります。[出典:株式会社一創「運送業のDXとは?2024年問題後の課題とデジタル化の進め方・システム導入の判断を解説」(2026)]
補助金は、受給できる可能性がある、という位置づけで考えてください。LINE WORKSの記事は、補助率や上限額が公募回ごとに変わるため、公式サイトでの確認が必要だとしています。[出典:LINE WORKS「物流DXとは|動態管理・配車管理システムの違いと進め方、補助金を解説」(2026)]
補助金が使えるかどうかで、最初の1つを決めないでください。
自社で見る項目
Q. 電話とFAXしかない会社でも、DXは始められますか
始められます。大きなシステムは要りません。物流DXとは?大きなシステムを入れる話ではありませんで説明したとおり、1つの業務から変えれば足ります。書き出しはステップ1:電話・FAX・紙の業務を書き出すから始めてください。
Q. 紙の伝票は全部なくさないといけませんか
なくさなくてかまいません。紙のほうが合う仕事は残せます。考え方は紙は全部なくさなくてよいにまとめました。
Q. 聞き間違いや配車ミスは、デジタルにすると誰が止めますか
人が止めます。受注内容、配車の最終決定、取引先への回答の3か所は、人が確認する所として残します。確認を残す3か所:受注・配車・回答をご覧ください。
Q. 社内に詳しい人がいなくても進められますか
担当を置けない場合は、外部の伴走支援を使う手があります。任せる範囲と自社に残す範囲は、伴走支援を使うと楽になるのはこの場合で整理しています。
Q. 受発注をメールやPDFに変えたら、何に気をつけますか
電子データの保存ルールを確認してください。自社が対象かどうかは、税理士か所轄の税務署に聞くのが確実です。条件は受発注をメール・PDFにしたときの保存ルールに書きました。