営業資料のAI活用|任せる範囲と最初の1本

営業資料づくりでAIに任せるのは骨子と下書きまで。約束ごとと最終確認は人が持ちます。最初は会社紹介から試す理由と、5つの手順、提出前の確認表を解説します。

この記事でわかること

  • AIに任せるのは、資料の骨子と下書きまでです。
  • 金額・納期・保証などの約束ごとと最終確認は、社長(人)が持ちます。
  • 最初の1本は、中身が毎回近い会社紹介から。顧客ごとに変わる提案書は次に回します。

営業資料づくり、AIにどこまで任せてよいのか

前半の叩き台(たたきだい)はAIに任せ、約束ごとと最終判断は人が持つ。 この線引きなら、少人数の会社でも安全に試せます。

AI活用に取り組んだ中小企業の事業者に、活用の目的を聞いた調査があります。「業務時間の節減」を挙げた事業者は84.5%でした。対象はAI活用に取り組んだ1,685の事業者です。時間を取られる悩みは、自社だけではありません。 [出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]

焦る必要もありません。中小企業のAI導入率は20.4%です。「一部の業務で導入」と「全社的に導入」の合計で、対象は1,647社です。まだ多数派ではないので、1本ずつ試せば間に合います。 [出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]

担当:AI 担当:人 担当:社長 下書きを作る 骨子と文章 事実を確かめる 数字と約束ごと 最終承認する 出してよいか決める AIは下書きまで。約束ごとと最終判断は人が持つ
AIは下書きまで、事実と約束ごとの確認は人、最後の承認は社長が行います。

AIが得意なこと、人が持つこと

AIは構成と文章の下書きが得意です。事実の確認や、相手に合わせた調整は人の仕事です。

研修やAI活用の情報を発信するUravation社の解説では、AIに任せるのは「前半の叩き台づくり」とされています。人が行うのは、取捨選択、自社らしい言葉づかいへの調整、事実確認、約束ごとの責任判断、最終承認です。 [出典:株式会社Uravation「AIで営業資料・提案書を作る実践ガイド」(2026)]

分け方 中身
AIに任せる 資料の構成(骨子)、文章の下書き、言い回しの別案
人が持つ 事実の確認、顧客に合わせた調整、約束ごとの判断、最終承認

営業資料づくりで時間が取られる理由

理由は大きく3つあります。作成に時間がかかること、出来にばらつきが出ること、特定の人しか作れないことです。

AI研修を行うSHIFT AI社も、営業資料づくりの課題として、この3つを挙げています。社長本人が作っている会社では、社長の時間がそのまま資料づくりに消えます。 [出典:株式会社SHIFT AI「営業資料をAIで自動化!提案力を高める最新の活用法と効率化の実践まで」(2026)]

最初の1本は何から試すか

最初は会社紹介から。次に提案書、最後に見積に添える説明資料の順で試します。 中身が毎回近い資料ほど、AIの下書きが使いやすいからです。

社長本人か営業1〜2名で作っている会社を想定します。会社紹介は、相手が変わっても中身は大きく変わりません。提案書は、顧客ごとに中身が変わります。見積に添える説明資料は、金額や納期など約束ごとが多く、最後です。

1つの資料で慣れてから、次へ広げます。NTT東日本、GiftX社、Uravation社の記事も、一部の業務から始めて広げる進め方を挙げています。

最初の一歩の考え方は、中小企業のAI活用は20.4%、社長一人から始める4ステップにもまとめています。

3種類の資料を比べる

3種類の資料は、AIへの任せやすさと、人が必ず決める所が違います。

資料の種類 AIに任せやすさ 人が必ず決める所
会社紹介 高い。中身が毎回近い 会社の実績、最新の数字
提案書 中くらい。顧客ごとに変わる 相手の課題、なぜ自社なのか
見積に添える説明資料 低い。約束ごとが多い 金額、納期、保証

試す前に今の作成時間を測る

試す前に、今の資料1本にかかる時間を自社で測っておきます。試したあとの時間と比べれば、効果が自社の数字で分かります。

測るのは、着手から先方に出せる状態になるまでの時間です。ストップウォッチは要りません。メモに開始と終了の時刻を書くだけで足ります。

AIで営業資料の叩き台を作る5つの手順

手元の過去資料を材料に、骨子、下書き、スライドの順で進めます。 各ステップで「AIに頼むこと」と「人が見ること」を分けます。

目的と相手をメモに書く

AIに頼む前に、誰に何のための資料かを書きます。相手の課題も1行で書きます。

  • AIに頼むこと:メモをもとにした構成の提案
  • 人が見ること:相手の課題が正しく書けているか

ここが弱いと、どの会社にも当てはまる資料になります。

手元の過去資料を材料にそろえる

過去の提案書や会社案内を、AIの材料にします。ただし、入れてよい情報だけにします。

入れる前に、入れてよい情報・いけない情報を決めるで決めたルールを確かめます。

  • AIに頼むこと:過去資料からの要点の整理
  • 人が見ること:顧客名や金額が混ざっていないか

AIに骨子を作らせる

骨子とは、資料の章立てと各章の要点のことです。AIには、役割・目的・条件・出力形式を伝えます。

SHIFT AI社の解説でも、プロンプト(AIへの指示文)には、この4つを指定するとされています。次の文を、かっこ内を書き換えて使えます。 [出典:株式会社SHIFT AI「営業資料はAIに任せる時代へ」(2026)]

あなたは(業種)の会社の営業資料づくりの担当者です。
(相手の業種)の社長に向けた、(目的)のための提案書の骨子を作ってください。
条件:相手の課題は(課題)。5章以内で、各章の要点を2行で書く。
出力形式:章の見出しと要点の箇条書き。
  • AIに頼むこと:骨子の作成と、別案の提示
  • 人が見ること:話の順番が、相手に伝わる流れか

下書きとスライドの体裁を整える

骨子ができたら、章ごとに文章の下書きを頼みます。そのあと、スライドの形に整えます。

文章は汎用の生成AIで、体裁はスライド生成ツールで、と分ける方法もあります。どちらを使うかは、ツールを選ぶときに比べる観点で決めます。会社の言葉づかいやデザインがそろっているかも、このステップで見ます。

  • AIに頼むこと:文章の下書き、スライドへの割り付け
  • 人が見ること:トーンとデザインが自社の資料と同じか

自社の数字と実績で仕上げる

最後に、人が「なぜ御社なのか」を足します。自社の実績や、相手固有の情報は、AIは知りません。

週刊アスキーの試用記事では、無料版ChatGPTの出力は箇条書き中心で、具体性に欠ける場合があると書かれています。2025年3月時点のモデルでの記者の試用です。具体性は人が足します。 [出典:週刊アスキー(KADOKAWA ASCII Research Laboratories)「営業部門の時間を短縮! 新規顧客開拓に必要な提案書はChatGPTが少ない手間で簡単作成」(2025)]

  • AIに頼むこと:足した情報を入れた文章の整え直し
  • 人が見ること:数字と実績が正しいか、相手に合っているか

先方に出す前に、人が必ず見る所

出す前に「誰が、何を見るか」を決めます。 確認役がいない会社でも、社長か営業担当のどちらかが、次の表で見れば足ります。

見積に添える説明資料では、金額・納期・保証をAIに書かせません。これは社長が決めて、社長が書きます。

注意

AIの文章は自然なので、間違いに気づきにくくなります。出す前の確認を省かないでください。

提出前のチェックリスト

Uravation社の解説にある提出前の確認項目を、社長向けに並べました。次のチェックリストで、先方に出す前に1つずつ確かめてください。 [出典:株式会社Uravation「AIで営業資料・提案書を作る実践ガイド」(2026)]

  • 数字・統計は、元の資料と合っているか
  • 会社名や人名などの固有名詞は、正しいか
  • 金額は、税込か税抜かが書かれているか
  • 日付や期間は、正しいか
  • 金額・納期・保証などの約束ごとを、社長が確認したか
  • 前の取引先の情報や機密が、混ざっていないか
  • 誤解されそうな表現が、ないか
  • 会社のトーンと、同じ言葉づかいか

よくある失敗と防ぎ方

失敗は、確認を飛ばしたときに起きます。NTT東日本の解説も、生成AIの出力を鵜呑みにしないよう注意しています。 [出典:NTT東日本株式会社「営業に生成AIをどう活かす?活用術と導入のポイント」(2025)]

失敗 防ぎ方
そのまま出して、数字や固有名詞が違っていた チェックリストで、元の資料と照らす
前の取引先の情報が残っていた 過去資料を入れる前に、顧客名を消す
会社の言葉づかいと違った 過去の資料の文体を例として渡し、最後に社長が読む

顧客名や見積金額は入れてよいのか、ツールと費用の考え方

顧客名や見積金額は、原則として入れません。 入れてよい情報は、社長が最初に決めます。ツールは名前でなく、比べる観点で選びます。

入れてよい情報・いけない情報を決める

自社の公開情報は、入れてかまいません。顧客名、見積金額、取引先から預かった資料は、原則入れません。

NTT東日本の解説は、顧客名や価格など機微(きび)な情報の入力を避けるなど、社内ルールを整えるよう勧めています。取引先から預かった資料は、契約上の扱いも確かめます。 [出典:NTT東日本株式会社「営業に生成AIをどう活かす?活用術と導入のポイント」(2025)]

入れてよい 自社の公開情報 原則入れない 顧客名 見積金額 預かった資料 入れてよい情報は、社長が最初に決める
自社の公開情報は入れてよく、顧客名・見積金額・預かった資料は原則入れません。

ツールを選ぶときに比べる観点

ツールは、種類ごとの得意なことと、確かめる点で比べます。製品名で決めません。

種類 得意なこと 確認すること
汎用の生成AI 構成と文章の下書き 日本語の精度、入力データの扱い
スライド生成ツール スライドの体裁づくり 費用、日本語の精度
企業データ連携型 社内のデータを使った資料づくり 入力データの扱い、複数人での使いやすさ

最新の機能や料金は変わります。使う前に、各社の公式の案内で確かめてください。

確認すること

  • 日本語の精度は、自社の資料で試して足りるか
  • 入力したデータの扱いは、どう説明されているか
  • 費用は、小さく試せる形か
  • 複数人で使うとき、使いやすいか

決めたことを一枚にして共有する

使ってよい範囲、プロンプトの型、チェックリストを、A4一枚にまとめます。社長と営業1〜2名なら、これで足ります。

費用の面では、導入の高コストが阻害要因として挙がっています。AI導入の阻害要因で「導入にあたっての高コスト」を挙げた中小企業は、46.9%でした。対象はこの設問に答えた1,636社です。だから、まず1本の資料で小さく試して確かめます。 [出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026)]

営業まわりでAIに任せる最初の1業務の選び方は、営業AIは何から?最初の1業務を選ぶ5ステップが参考になります。会議資料の作り方は会議資料の作成時間を減らす。AIに任せる所と確認する所をご覧ください。

よくある質問

Q. 営業資料づくりでAIに任せてよい範囲はどこまで? A. 骨子と文章の下書きまでです。約束ごとと最終承認は人が持ちます。詳しくはAIが得意なこと、人が持つことをご覧ください。

Q. ITが得意でなくても使える? 費用はどのくらい? A. 最初の1本は、会社紹介を1つ試すだけです。費用は製品で変わるので、小さく試して確かめます。考え方は決めたことを一枚にして共有するに書きました。

Q. 顧客名や見積金額を入れてもよい? A. 原則入れません。自社の公開情報だけを入れます。

Q. AIが間違った内容を作ったらどうする? A. 出す前のチェックリストで防ぎます。数字と固有名詞は、元の資料と照らします。

Q. 自社だけで進めるのが不安なときは? A. 伴走支援を頼む方法があります。準備するものは、過去の提案書や会社案内、今の作成時間のメモです。進む順番は、対象の資料を決め、入力ルールを決め、1本試す、の順です。

3分でわかる無料AI診断