データ入力をAIで減らす|任せる所と人が見る所

データ入力のAIで減らせるのは、読み取って入力する作業です。読み間違いは残るので、自信の高さで任せる書類と人が見る書類を分けます。

この記事でわかること

  • 紙・PDF・メールの入力は、AIで「読み取り」までは減らせます。ただし読み間違いはゼロになりません。
  • 「AIに任せる」か「人が見る」かは、書類ごとに、読み取りの自信の高さで分けます。
  • 最初は1種類の書類に絞り、自社の実際の書類で試してから広げます。

データ入力の手作業は、AIでどこまで減らせるのか

ポイント

AIで減らせるのは「読み取って入力する」作業です。確認の作業は残ります。

中小企業では、ITを入れても手作業が多く残っています。AIを使う会社の多くは、時間を減らすことを目的にしています。

手作業が残っている会社は多い

中小企業基盤整備機構の調査を見ます。対象は、ITを導入済みの中小企業922社です。調査期間は2025年11月17日から12月12日です。

業務全体のうち手作業が「80%以上」の会社は20.2%でした。ほとんどの仕事が手作業という会社が、5社に1社ほどあります。

手作業の割合で最も多かったのは「60〜79%」で、31.5%でした。ITを入れても、入力や転記の手作業は残りがちです。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]

AIを導入している会社は、まだ多くありません。同じ調査で、既に導入している中小企業は20.4%でした。回答数は1,647社です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]

AIを使う目的は時間の節減が多い

中小企業白書は、AIを活用した事業者の目的を示しています。元の調査は帝国データバンクが行いました。調査時期は2025年11月から12月です。

AIに「取り組んだ」事業者は1,685社です。この事業者に目的を複数回答で聞いています。

「業務時間の節減」を挙げた事業者は84.5%でした。「人手不足の解消」は40.5%でした。入力のような繰り返しの作業は、時間を減らしたい仕事の代表です。[出典:中小企業庁(2026)]

AIによる入力にはどんな方法があり、何に向くのか

方法は、書類の形で選びます。紙やPDFには読み取りの仕組み、画面操作には自動操作の仕組み、システム同士にはつなぐ仕組みが向きます。

たとえば請求書は紙とPDFで届き、名刺は紙で届きます。注文書はFAXやメールで届きます。届き方によって、向く方法が変わります。

書類の届き方 向く方法 紙・PDF AI-OCR 画面の転記 RPA システム間 API連携 メール・Excel Excelマクロ・生成AI
書類の届き方によって、向く方法が変わります。
方法向く作業人の確認が要る場面
AI-OCR請求書、注文書、名刺など、紙やPDFの文字を読み取って入力する手書きの文字、形が毎回違う書類、かすれたFAX
RPA決まった画面操作の繰り返し。ある画面の値を別の画面へ入れる画面の項目が変わったとき、入力できずに止まったとき
API連携システムとシステムの間で、データを直接受け渡すつないだ後の値が合っているかの確認
Excelマクロ・生成AIExcelの整形や集計、メールの文面から項目を取り出す作業作られたマクロや、取り出された項目の中身

メモ

OCRは、紙の文字を読み取ってデータにする仕組みです。RPAは、人がパソコンで行う操作を、ソフトが代わりに繰り返す仕組みです。

紙・PDFの読み取りはAI-OCR

AI-OCRは、紙やPDFの文字をAIが読み取ってデータにする仕組みです。請求書や注文書の入力に向きます。

ただし、手書きや形が毎回違う書類は苦手になりがちです。そのため、人の確認と組み合わせて使うのが基本です。

AI-OCRの基本は、AI-OCRとは|紙の文字をデータにする「OCR+AI」のことで説明しています。

画面操作やシステム間は別の方法

画面を見ながらの転記には、RPAが向きます。ある画面の数字を、別の画面へ入れる作業などです。

システム同士でデータをやり取りするなら、API連携です。人がデータを動かさずに済みます。

Excelの作業は、マクロや生成AIで手間を減らせます。作られたマクロは、使う前に人が確かめます。

RPAとの違いは、RPAとは?AI-OCRとの違いを1週間で見分ける手順が参考になります。Excelへの転記は、Excel転記をAIに任せる範囲|最初の1つと5ステップもご覧ください。

方法を選ぶときに見る点

方法を選ぶときは、次の点を見ます。

  • 読み取りの精度:自社の書類でどこまで読めるか
  • 既存システムとの連携:今使っている会計ソフトなどにつなげるか
  • 費用:始めるときと、続けるときにかかる費用
  • 機密書類の扱い:取引先の情報や個人情報を、外部のサービスに渡してよいか
  • 実データでの試行:見本ではなく、自社の実際の書類で試せるか

同じ悩みの会社はどう減らしたのか(他社の参考事例)

手書きの注文書の入力を、AI-OCRで減らした会社があります。ただしこれは、サービスを提供する会社が公開した事例です。

注意

この事例は、AI-OCR「SmartRead」を提供するCogent Labs Inc.の事例紹介です。自社のサービスを紹介する内容のため、条件が自社と同じとは限りません。

紹介するのは、株式会社Cotonaの例です。学校販売店から受け取る、手書きの注文書を扱っています。

繁忙期の注文書の集計は、1日12時間かかっていました。ピーク時は、月間約1,500件の注文書を手入力していました。

AI-OCRを入れたあと、集計は約6時間になりました。時間は半分になっています。[出典:Cogent Labs Inc.「DX成功事例:学校販売店の注文書集計時間を50%短縮!地域展開にも期待」(2024)]

この事例には、従業員数の記載がありません。書類の種類や量が違えば、結果も変わります。「御社でも半分になる」とは言えません。

「AIに任せる」「人が見る」の線引きはどう決めるのか

線引きは、AIの読み取りの自信で決めます。自信が高いものは自動で入力し、低いものだけ人が確認します。

完全な自動化は目指しません。AIの誤りは、入力したあとではなく、入力の前の確認で止めるのが基本です。

注意

AIでも人でも、エラーはゼロになりません。

AIの読み間違いについて、AI関連の情報を発信する株式会社WEELの記事は、こう述べています。「AIでデータ入力を自動化しても、エラーがゼロになるわけではありません。」[出典:株式会社WEEL「データ入力はAIにおまかせ!導入するメリットや注意点、活用事例を紹介」(2026)]

ASCII.jpに載ったユーザックシステムの記事は、読み取り精度の低いデータは人による確認を自動化の流れに入れ、振り分けられると説明しています。[出典:ASCII.jp(ユーザックシステムの記事を再編集)(2025)]

書類 AIが読み取る 自信の高さ 高い 低い 自動で入力 人が確認して入力
AIの読み取りの自信が高い書類は自動で入力し、低い書類だけ人が確認します。
項目全件を人が入力AIが読み取り、人が確認
人がやることすべての書類を見て、打ち込む自信の低い書類を見て、直す
ミスに気づく場面入力のあとの見直しや、取引先からの指摘入力の前の確認
担当者の負担書類が増えると、そのまま増える確認する書類に絞られる

任せてよい書類と人が見る書類

任せてよいのは、毎月同じ形で届き、読み取りの自信が高い書類です。人が見るのは、手書きや、形が毎回違う書類、読み取りの自信が低いものです。

読み間違いは、たとえば次のように起きます。「1」と「7」を取り違える。「株式会社」の位置が違う書類で、取引先名がずれる。

読み間違いは、起きる前提で考えます。起きたときに、入力の前の確認で止まる形にしておくと、慌てずに済みます。

確認を減らすときの見る点

最初は、全件を人が確認します。ここから確認を減らすには、AIの読み取りと人の入力を突き合わせます。

進め方は次のとおりです。直近の一定期間、同じ書類をAIと人の両方で処理します。結果を比べて、一致する書類の種類を見つけます。

見る点は3つです。

  • 誰が:入力の中身が分かる担当者が見る
  • 何を:AIと人の結果が食い違った項目を見る
  • どの頻度で:減らしたあとも、定期的に抜き取って確かめる

入力担当が1〜2人の会社は、何から始めればよいのか

入力担当が1〜2人でも、1種類の書類から始められます。順番は、書類を選ぶ、実データで試す、確認方法を決める、です。

今の入力そのものを減らせないかも、先に考えます。入力する項目を減らす。受け取る書類の形をそろえる。こうすれば、AIに任せる量が減ります。

まず1種類の書類に絞る

最初に選ぶのは、毎月決まった形で届く書類です。まず1種類に絞ります。

次のチェックリストで、候補の書類を確かめてください。

  • 書類が毎月、決まった形で届く
  • 入力に毎月どれだけ時間がかかっているか、自社で測れている
  • 間違えたときの影響が小さい
  • 個人情報や取引先の機密を含まない、または外部サービスに渡してよいと決められる
  • 入力項目そのものを減らせないか、検討した
  • 担当者が休んでも、入力が止まらない

準備するもの

  • 試す書類の見本(数枚)
  • 今の入力項目のメモ

実データで試して確認方法を決める

試すときは、見本ではなく、実際に届いた書類を使います。まず数枚で、AIが読み取れるかを見ます。

効果は、試す前と後の入力時間を、自社で測って比べます。時間の測り方は、決めた1種類の書類だけで構いません。

そのあと、確認方法を決めます。確認を減らすときの見る点の進め方で、人が見る書類を絞ります。

自社でやるか支援を頼むか

費用は、AIを導入するときの大きな壁です。AI導入の阻害要因を聞いた調査で、最も高かったのは「導入にあたっての高コスト」の46.9%でした。

調査の条件対象は中小企業で、この設問の回答は1,636社です。複数回答で、調査期間は2025年11月から12月です。[出典:中小企業基盤整備機構(2026)]

自社で進めるか、支援を頼むかは、次のものさしで考えます。

判断のものさし

  • 自社で進める:社内に、試す時間を取れる人がいる。機密書類の扱いを、自社で決められる
  • 支援を頼む:試す時間を取れる人がいない。何から手を付けるか、決められない

どちらでも、最初は1種類の書類で小さく始めます。

よくある質問

手書きの書類もAIで読み取れますか。

読み取れる場合もありますが、人の確認と組み合わせるのが現実的です。ITトレンドの記事も、手書きや形が毎回違う書類は、人による確認を組み合わせる運用が現実的としています。[出典:ITトレンド「AI-OCRで解決できる課題とは?導入前に知っておきたい活用のポイント」(2026)]詳しくは「AIに任せる」「人が見る」の線引きはどう決めるのかで説明しました。

AIが読み間違えたら、誰が気づきますか。

読み間違いが起きる前提で、確認の仕組みを入れておきます。自信の低い書類を、入力の前に人が見る形にすれば、入力担当が気づけます。任せてよい書類と人が見る書類を参考にしてください。

最初は何から試せばよいですか。

毎月決まった形で届く書類を1種類選びます。実際の書類で、数枚から試します。まず1種類の書類に絞るに、選び方のチェックリストがあります。

自社だけで進められますか。支援を頼むべきですか。

社内に試す時間を取れる人がいて、機密書類の扱いを決められるなら、自社で進められます。難しいときは、支援を頼む選択もあります。自社でやるか支援を頼むかで、判断のものさしを示しました。

費用はどのくらいかかりますか。

金額は、製品や書類の量で変わります。実際の書類で試したうえで、見積もりを取って確かめてください。公的な調査でも、AI導入の阻害要因の最大は「高コスト」でした。

3分でわかる無料AI診断