この記事でわかること
- 総務のAI活用は、件数が多く様式が決まった転記・入力の作業から始めるのが取り組みやすい。
- 作業を「AIに任せる/AIが下書きして人が確認する/人が決める」の3つに分けると、任せる範囲が見える。
- 個人情報は入れる前に決め、専用ツールは今ある生成AIで試してから検討する。
総務のAIは、件数が多く様式が決まった転記・入力から試すのが近道です。任せる作業と人が確認する作業の分け方、最初の1作業の選び方、5つの手順を解説します。

この記事でわかること
結論
専任の総務がいない会社は、紙やExcelの書き写しから試すのが近道です。AIは「書き写しの下ごしらえ」に使い、最終の判断は人が持ちます。
総務のAIは書き写しの下ごしらえから試し、最終の判断は人が持ちます。(数字の出典:中小企業基盤整備機構(2026)、中小企業庁(2026))
社長や経理が総務を兼ねる会社では、届出や台帳の書き写しが毎日の時間を取ります。ここをAIに下書きさせると、時間の節約、書き間違いの減少、担当者しか分からない状態の解消につながることがあります。
紙のデータ化の全体像は、AI-OCRとは|紙の文字をデータにする「OCR+AI」のことも参考になります。
ITを導入済みの中小企業で、業務の8割以上が手作業の会社は20.2%です。対象は922社、調査期間は2025年11月17日〜12月12日です。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(令和8年3月)」(2026)]
AIを使う目的で「業務時間の節減」を挙げた事業者は84.5%です。対象はAI活用に取り組んだ1,685事業者の複数回答です。[出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]
一方で、2019年以降の省力化投資のうち、AI活用に取り組んだと答えた事業者は30.3%、約3割です。対象は5,645事業者です。[出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026)]
結論
作業ごとに3つに分けると、AIに渡す範囲が決まります。たとえば備品台帳への入力は、AIが下書きして人が確認する作業です。
転記・入力や文章・問い合わせの作業はAIが下書きして人が確認し、契約書の法的判断や社員の処遇は人が決めます。
AI総合研究所(LinkX Japan)の記事は、総務の業務を「定型」「半定型」「非定型」に分けています。この記事では、それを作業単位に落とし、「AIが下書きして人が確認する」を中心に整理します。[出典:AI総合研究所(LinkX Japan)「総務×AI活用ガイド|業務効率化の具体例と導入手順を解説」(2026)]
| 作業 | AIにやらせること | 人が必ず見ること | 区分 |
|---|---|---|---|
| 届出・申請書の転記 | 紙の内容を様式の項目に書き出す | 原本と項目ごとに照らす | 確認して任せる |
| 備品台帳・契約台帳の入力 | 品名や日付を表の形に書き出す | 原本との照合、期限の日付 | 確認して任せる |
| 社内の問い合わせ対応 | 規程から回答の下書きを作る | 規程と合っているか、例外の扱い | 確認して任せる |
| 社内文書・マニュアルの作成 | 文章の下書きを作る | 内容の正しさ、社内ルールとの整合 | 確認して任せる |
| 社内規程・ナレッジの整理 | 要点の一覧や見出しを作る | 最新の規程か、抜けがないか | 確認して任せる |
| 勤怠・経費・請求書の処理 | 金額や日付の読み取りの下書き | 金額・日付の最終確認(量が多ければ専用ツールも検討) | 確認して任せる |
| 契約書の内容判断 | 条文の要点を整理する | 法的な判断のすべて | 人が決める |
| 社員の処遇に関わる判断 | 判断材料の整理だけ | 決定のすべて | 人が決める |
注意
契約書の法的な判断と、社員の処遇に関わる判断は、必ず人が行います。AIの出力は、判断材料としてだけ使います。
紙を見て表に書き写す作業は、様式が決まっていて、AIが得意な形です。この記事の主題で、手順はステップ1:入れる書類と項目を決めるから説明します。
社内文書や問い合わせへの回答は、AIが下書きし、人が内容を確認します。回答は社内の規程に合わせて、人が最終の文面を決めます。社内向けのFAQ型チャットボットなどの専用ツールは、ここでは製品を挙げません。
契約書の法的判断や社員の処遇は、人が決めます。AIには、迷ったときの判断材料の整理だけを頼みます。
結論
件数・様式・やり直し・個人情報の4つの基準で、最初の1作業を選びます。備品台帳への入力は、4つがそろいやすく、始めやすい作業の一つです。
件数・様式・やり直し・個人情報の4つすべてに当てはまる作業から始め、個人情報が多い作業は慣れたあとに回します。
最初から全部をAIに任せる必要はありません。小さく始めて、うまくいったら広げます。
次のチェックリストで、自社の作業を確かめてください。
4つすべてに当てはまる作業から始めます。個人情報が多い作業は、進め方に慣れたあとに回します。
結論
AIは書き出しまで、原本との照らし合わせと登録は人が行います。ここでは備品台帳へ書き写す作業を例に、5つの手順で説明します。
AIが担当するのは表への書き出しだけで、ほかの4つの手順は人が行います。
Excelへの転記を先に試したい場合は、Excel転記をAIに任せる範囲|最初の1つと5ステップもあわせてご覧ください。
最初に、AIに渡す書類を1種類だけ決めます。たとえば備品の納品書です。
台帳に書き写す項目も決めます。品名、購入日、金額、置き場所のように、表の列と同じ並びにします。
書類に社員の氏名や住所、口座番号があれば、黒く塗るか、切り取ってから渡します。伏せる作業は人が行います。
備品の納品書のように個人情報が少ない書類なら、この手間は小さくなります。何を伏せるかは個人情報は入れる前に決めるで決めておきます。
ステップ1で決めた項目を指定して、表の形で書き出すように頼みます。読み取れない文字は、推測せずに「不明」と書かせます。
書き出した表は、そのまま台帳に入れません。次のステップで原本と照らします。
AIが書き出した表を、原本の書類と1行ずつ並べて照らします。照らす所は、金額、日付、品名、数量の4つです。
数字と日付は、間違えると影響が大きい所なので、特にていねいに照らします。合わない所は、原本に合わせて人が直します。
ポイント
AIの出力はそのまま登録せず、原本と照らしてから登録します。
直した表を台帳に登録します。登録した日と担当者の名前も、台帳に書いておきます。
AIの書き出しと原本の写しも、控えとして残します。あとで間違いが見つかったときに、どこで違ったかをたどれます。
結論
個人情報は入れる前に決め、費用はまず今ある生成AIで試します。紙の少ない会社は、専用ツールを急ぎません。
個人情報は何を入れないかと誰が使うかを先に決め、費用はまず今ある生成AIで試してから専用ツールを考えます。
AI導入の阻害要因で最も高かったのは「導入にあたっての高コスト」の46.9%です。対象はこの設問に答えた1,636社の複数回答で、調査期間は2025年11月17日〜12月12日です。費用の不安を持つ会社は少なくありません。[出典:中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(令和8年3月)」(2026)]
総務の書類には、社員の住所、家族、口座などの個人情報が多く入っています。AIに入れる前に「何を入れないか」と「誰が使うか」を決めておきます。
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 住所や口座がそのまま入った書類を渡す | 入れる前に、伏せる項目を決めて人が伏せる |
| 担当者ごとに使い方がばらばらになる | 使う人と使う書類を決めて、社内に知らせる |
| AIの出力をそのまま台帳に登録する | 原本と照らしてから登録する流れにする |
確認すること
まずは今ある生成AIで試し、足りない所が見えてから専用ツールを考えます。比べる観点は、扱う書類の量、読み取りの正確さの確かめ方、費用の3つです。
最初の1業務の選び方を広く知りたい場合は、事務のAI活用は何から?最初の1業務を選ぶ5ステップが参考になります。
汎用の生成AI、問い合わせ用のFAQ型チャットボット、紙の文字を読み取ってデータにする仕組み(AI-OCR)は、得意な作業が違います。作業に合わないものを選ぶと、費用に見合う効果が出にくくなります。
株式会社一創は、記事の中で「月に処理する紙が50枚程度なら、AI-OCRは見送ってください」と述べています。これは同社の見解で、紙が少ない会社は専用ツールを急がない、という考え方の参考になります。[出典:株式会社一創「中小企業のAI-OCR導入判断|大企業との違いと月間枚数で決める始め方」(2026)]
結論
専任の総務がいなくても、1作業から試せます。原本と照らす確認だけは、人が必ず行います。
Q. 総務の専任がいなくても、AIは使えますか?
A. 使えます。社長や経理が兼ねていても、件数が多く様式が決まった作業を1つ選べば始められます。選び方は最初に試す1作業は、4つの基準で選びますで説明しました。
Q. 紙の書類をAIに読ませて、間違いなく写せますか?
A. 間違いが出ることを前提にします。AIの書き出しは、原本と1行ずつ照らして直します。照らす所はステップ4:原本と照らして直すのとおりです。
Q. 社員の個人情報が入った書類を、AIに入れて大丈夫ですか?
A. 入れる前に、氏名・住所・口座番号などを伏せます。何を入れないか、誰が使うかを先に決めておきます。決め方は個人情報は入れる前に決めるで説明しました。
Q. 新しいツールを買わないと始められませんか?
A. 買わなくても始められます。まず今ある生成AIで試します。専用ツールの目安は専用ツールを考える目安にまとめました。
Q. 総務の仕事はAIでなくなりますか?
A. 判断、最終確認、社員への対応は、人に残る仕事です。AIは書き写しや下書きを手伝います。決める仕事に時間を使いやすくなります。
Q. 最初に着手するのはどの作業がよいですか?
A. 件数が多く、様式が決まり、間違えても直せて、個人情報が少ない作業です。たとえば備品台帳への入力です。