経理のAIは何から任せる?小さく始める5ステップ

経理のAIは入力や突き合わせの下ごしらえが得意で、最終承認と税務判断は人が持ちます。任せる範囲の分け方と、一つの作業から始める5ステップを解説します。

この記事でわかること

  1. 経理のAIは、請求書の読み取りや仕訳の提案、入出金の突き合わせなど「下ごしらえ」が得意です。
  2. 最終の承認、税務の判断、例外の取引は人が持ちます。確認の置き場所を先に決めます。
  3. まず今の経理の手間を書き出し、一つの作業から、今ある会計ソフトのAI機能(あれば)や汎用AIで小さく試します。

経理のAIは「下ごしらえ」から任せるのが現実的です

AIを使う中小企業は、まだ多くありません。中小企業でAIを「既に導入している」会社は20.4%です。対象は中小企業1,647社の調査です。つまり、使っていない会社のほうが多い状況です。今から小さく始めても遅くありません。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(2026)]

経理は1人で抱えがちな仕事でもあります。売上高1千万円以下の事業者では、約8割(79.4%)が1人で経理事務を行っています。この数字は小さな事業者の調査です。10〜50名の会社にそのまま当てはまるとは限りません。[出典:日本商工会議所・東京商工会議所(2025)]

結論として、AIには入力や突き合わせの下ごしらえを任せ、最後の確認と判断は人が持つ形が現実的です。入力の手間とミスを減らせる可能性があり、担当者は判断の仕事に時間を回しやすくなります。

AIを活用した中小企業の目的は、「業務時間の節減」が84.5%です。対象はAI活用に取り組んだ事業者1,685社で、複数回答です。経理の手間を減らす考え方と重なります。[出典:中小企業庁(2026)]

経理でAIができる作業

AIが得意なのは、決まった形で繰り返す作業です。経理では次のような作業が当てはまります。

  • 請求書や領収書の文字を読み取る
  • 仕訳(お金の動きを帳簿の項目に分けること)の候補を出す
  • 経費精算の書類に、記入ミスや漏れがないか見る
  • 入金と請求を照らし合わせる(入金消込)
  • 帳票や説明用の資料のたたき台をつくる

メリットは、入力の手間と人のミスを減らせる可能性があることです。確認の作業が速くなることも期待できます。その分、担当者は「これで正しいか」を考える仕事に時間を使えます。

AIの種類は4つに分けて考える

経理向けのAIは、大きく4つに分けると選びやすくなります。

  • 汎用の生成AI(文章を読んで答えや下書きをつくるAI)
  • 普段使う業務ツールに入ったAI
  • 会計ソフトに入ったAI
  • 請求書の読み取りや経費精算に特化したAI

メモ

OCRは、紙の文字を読み取ってデータにする仕組みです。RPAは、決まった手順を自動で繰り返す仕組みです。この2つは、決まったルールの処理を担当します。生成AIは、形のそろわない書類の読み取りや、仕訳の候補出しにも使える場合があります。

AIに任せる所と、人が見る所はどう分けますか?

結論として、AIが下ごしらえをし、合わない分だけ担当者が見て、月末に社長が一覧で確認する形に分けます。大事なのは「誰が・いつ見るか」を先に決めることです。

請求書の受け取り 入出金の確認 経費精算 月末の集計 AIの下ごしらえ文字を読み取る AIの下ごしらえ請求と突き合わせ AIの下ごしらえミスや漏れを指摘 AIの下ごしらえ数字を一覧にする 担当者が見る受け取った日に直す 担当者が見る週の終わりに見る 担当者が見る承認の前に見る 社長が見る月末に一覧で確認 合わない分、指摘された分、 例外だけを担当者が見ます。 赤:AIと社長 灰:担当者 / 大事なのは「誰が・いつ見るか」を先に決めること
AIが下ごしらえをし、担当者が合わない分を見て、社長は月末に一覧を確認します。

一覧にすると、次のようになります。

作業 AIの下ごしらえ 人が見る所(誰が・いつ)
請求書の受け取り 書類の文字を読み取り、項目ごとに整理する 担当者が、読み取りが違う分を受け取った日に直す
入出金の確認 入出金と請求書を突き合わせる 担当者が、合わない分だけを週の終わりに見る
経費精算 記入ミスや漏れを指摘する 担当者が、指摘された分と例外を承認する前に見る
月末の集計 数字を集めて一覧にする 社長が、一覧を月末に確認する

ポイント

AIが間違える前提で、確認の置き場所を先に決めます。

任せやすい作業と人が決める作業

任せやすいのは、毎回同じ形で繰り返す作業です。読み取り、仕訳の候補出し、突き合わせが当てはまります。

人が決めるのは、次の作業です。

  • 新しい取引や例外の取引の扱い
  • 税務の判断
  • 最終の承認
  • 税務調査などへの対応

経理を1人や兼務で回している会社もあるでしょう。1人で回すほど、確認の置き場所を決める意味が大きくなります。

経理の仕事はAIでなくなるか

AIが得意な定型の作業は、AIに任せられる部分が増えていくと考えられます。一方で、取引が妥当かの判断や、税務の最終確認は人の責任として残ります。

人の仕事は、入力から判断と責任の仕事へ移っていくと考えられます。経理が完全にAI任せになる形は、現実的ではありません。

経理のAIを小さく始める5つのステップ

結論として、新しいツールを入れる前に、今の手間を書き出すところから始めます。経理を1人か兼務の社員が回す会社でも、一つの作業から試せます。

準備するもの

  • 直近1か月の請求書、入出金の記録、経費精算の書類
  • 今使っている会計ソフトの名前
  • 社内で決めた、AIに入れてよい情報の範囲

経理の手間を書き出す

請求書の受け取り、入出金の確認、経費精算、月末の集計について、週か月でかかる時間を書きます。数字で見えると、任せる作業を選びやすくなります。

ITを入れていても、手作業は残りがちです。ITを導入済みの中小企業で、業務全体のうち手作業が「80%以上」の会社は20.2%です。対象は導入済みの922社です。最も多かったのは「60〜79%」で31.5%です。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(2026)]

作業名 週か月の回数 1回の時間 困っている点 請求書の受け取り 入出金の確認 経費精算など 空欄に自社の様子を書きます。数字が見えると、任せる作業を選びやすくなります。
作業名、回数、1回の時間、困っている点の4つを、空欄に書き込んでいきます。

任せる作業を一つ選ぶ

最初に決めるのは、「どの業務から・いくらまで・誰が進めるか」の3つです。全部を一度に任せず、一つの作業に絞ります。

生成AIを「積極的に活用する方針」か「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた中小企業は、合わせて58.1%です。対象は管理職以上の162人で、インターネット調査です。領域を限定する考え方は、経理の一部から試す進め方と合っています。[出典:総務省(2026)]

使う道具を選ぶ

まず、今使っている会計ソフトにAIの機能があるかを確かめます。新しく入れる前に、手元の道具で足りるかを見ます。

AI導入の阻害要因で最も高いのは、「導入にあたっての高コスト」の46.9%です。複数回答で、有効回答は1,668です。いきなり大きな投資をしない理由になります。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(2026)]

道具を比べるときは、次の観点で見ます。

比べる観点 確かめること
今の会計ソフトとの連携 データを手で移さずに渡せるか
読み取りの精度と直す手間 間違いを直す作業が増えないか
制度への対応 インボイス制度と電子帳簿保存法に対応しているか
費用 最初の費用と、続ける費用はいくらか

補助金などの制度は、要件を満たせば使える可能性があるものもあります。公式の案内で確認してください。

AIに下ごしらえをさせる

生成AIには、勘定科目(お金の使い道の分類)の候補と、その理由を出させます。チェックリストや説明文のたたき台もつくらせられます。

コツは2つです。最初に「あなたは経理の補助者です」と役割を伝えます。答えが違えば、対話で直します。

プロンプト(AIへの指示文)の例です。取引先や金額は架空のダミーです。

あなたは経理の補助者です。次の支出に合う勘定科目の候補を2つ、理由つきで教えてください。
支出:文房具店で事務用のペンとノートを購入(金額:1,000円)

実際の取引先名、金額、口座は、入れてはいけません。

確認して、効果を見て広げる

確認の置き場所を決めて、1か月試します。置き場所は、前の章の表を使います。

1か月後、ステップ1の書き出しと見比べます。手間が減っていれば、次の作業へ広げます。詳しい線引きは任せやすい作業と人が決める作業をご覧ください。

手間の書き出しや任せる範囲の整理を、一緒に進める選択肢もあります。ツールを入れる方法と並べて、自社に合う進め方を選べます。

経理にAIを使うとき、つまずきやすい点は何ですか?

結論として、つまずきやすいのは3点です。入れてはいけない情報を入れること、AIの誤りを通すこと、読み取り後のデータ保存を忘れることです。

失敗 起きること 対策
入れてはいけない情報を入れる 取引先や口座の情報が外に出る 入力禁止の基準と利用ルールを先に決める
AIの誤りをそのまま通す 間違った仕訳や金額が残る 最終承認と税務の判断は人が行う
読み取り後のデータ保存を忘れる 保存のルールに合わなくなる 国税庁の案内で保存の要件を確かめる

情報漏えいを防ぐには、入れてはいけない情報を入れないことが大切です。入れてはいけない情報は、取引先名、口座、個人情報などです。社内で一覧にして共有します。

費用も壁になりやすい点です。AI導入の阻害要因では「導入にあたっての高コスト」が46.9%で最も高い結果です。複数回答で、有効回答は1,668です。無理のない範囲で小さく始めます。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(2026)]

注意

国税庁の案内では、PDFなどで受け取った請求書は、紙に印刷してもデータ自体の保存が必要です。AIで読み取ったからといって、元のデータの保存が不要になるわけではありません。要件や猶予措置の詳細は、国税庁の案内で確認してください。[出典:国税庁「【国税庁の取組紹介】電子帳簿保存」]

よくある質問

経理のうち、AIに任せられるのはどこですか?

読み取り、仕訳の候補出し、入出金の突き合わせなど、決まった形で繰り返す作業です。新しい取引、税務の判断、最終承認は人が持ちます。線引きは任せやすい作業と人が決める作業で説明しています。

新しいツールにお金をかけないと始められませんか?

一つの作業なら、今ある会計ソフトのAI機能や汎用AIで試せる場合があります。AI導入の阻害要因は、高コストが46.9%で最も高いです。複数回答で、有効回答は1,668です。大きな投資の前に、小さく試すのが安全です。[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(2026)]

取引先や金額のデータをAIに入れて大丈夫ですか?

入力してよい情報と、いけない情報の基準を先に決めてください。会社の規定と、使うAIサービスの設定は、各社で確認が必要です。

AIが間違えたとき、責任はどうなりますか?

最終承認は人が行います。確認の置き場所を決めておけば、間違いに早く気づけます。法的な責任の判断は、税理士などの専門家に確認してください。

経理の担当が1人でも始められますか?

始められます。経理を1人や兼務で回している会社もあるでしょう。一つの作業から始めれば、負担は小さく済みます。一緒に進めてくれる外部の支援(伴走支援)を使う選択肢もあります。

まとめ

  • 下ごしらえはAI、確認と判断は人が持つ
  • まず今の経理の手間を書き出す
  • 一つの作業から小さく始める
  • AIで読み取っても、データの保存は別に必要

経理のどこから始めるか決まっていなくても大丈夫です。まずは無料でご相談ください。

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